愛人と老婆

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。今回は愛人について話しますぞ。筆者は以前、北京に留学したことがあるのですが、授業中に先生(男性)がいきなり愛人の話を始めましてな」

「えっ、やだ、アダルト……」

「はい、筆者もたいそう困惑しました。ですがまあ、国が違えば文化も違いましょうから、ここではそういう話をオープンにするのが普通なのかな? と思って聞いておりました」

「ああ」

「ところが、その先生があまりに堂々とした態度で、僕は愛人が大好きなんだと熱弁するものですから、途中でこれはおかしいと気付きました。で、こっそり辞書を引いて納得しました。中国語の愛人という単語は、いわゆる不倫相手を意味するのではなく、ただ単純に配偶者という意味だったのです」

「つまりその先生は、奥さんが大好きで自慢してたわけか」

「はい、一気に好感度アップですな。そもそも愛人は、愛する人という意味なのですから、配偶者を指す方が自然だという見方もできましょう。妻よりも不倫相手の方が愛しいとしたら、それは問題でございますよ」

「まあ確かに」

「もう1つ経験談がございます。これも留学中の出来事ですが、中古の携帯電話を購入しましたところ、前の持ち主が電話帳を消さないまま売ったらしく、アドレス帳に『老婆』という登録がありましてな」

「ろ、老婆?」

「誰やねん、と思いますよなぁ。ですが、これも辞書を引いて納得しました。老婆とは、妻や女房を意味する一般的な単語でした。蔑称ではございません。というわけで、愛人や老婆の話が出てきた時は、焦らず騒がず落ち着いて相手の話を聞きましょうな。ちなみに浦島殿は、愛人は欲しいですか?」

「欲しい!」

「どちらの意味の愛人か気になるところですな。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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