第五酒 『荷札酒』第二章+お酒レビュー

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「明治26年創業の加茂錦酒造は、創業以来変化してきている日本人の生活スタイルに向き合ってきたんだ。和食はどんどん減っていき、ビールやワイン、ウイスキーが台頭してきた今日の食卓で日本酒のおいしさを再確認できると若い人にも人気の酒造さんなんだよ」


 店長の蘊蓄をカウンター越しに聞いているおおかみさまはふむふむと興味深げに相槌を打っている。紫は日本酒セラーから取り出してきた『荷札酒』を丁寧にカウンターに置いた。


「『荷札酒』はその加茂錦酒造さんのお酒の中でも面白いお酒なんだよ。今までにない次世代の日本酒で、若い造り手さんが限られたタンクで造ってるから人気でね。色々種類も豊富で飲み比べするお客さんもいるんだよ」


「それは興味深いのう。紫よ、これがその『荷札酒』とやらか?」


 おおかみさまが見つめた瓶には、実際のお札のようなラベルがついていてデザインも楽しめるようになっている。紫が出してきた種類には白い三日月が描かれていた。


 「そうですよ。ちょうど入荷したばかりでピッタリの物がありました」


「――『月白』だね。空ちゃんの髪色と同じ綺麗な名前の荷札酒だよ」


 紫は御山で視た朧月夜に照らされる狼の姿を思い出す。月の光を吸い込んで白く輝いていた毛並みは正に『月白』だった。


「荷札酒か、よいセンスしてるね」


「髪色と同じお酒を選んでくれるの、なんかロマンティックだわー」


 常連さんが囃し立ててくるので照れくさかったが、視界に入ったおおかみさまの横顔には喜びが溢れていた。


 心が温かくなっていくのを感じる。なぜこの神様が喜ぶ姿を視ると私も幸せな気分になるのだろう。どこか懐かしささえ覚えるのは何故なんだろう。


「――紫、感謝するぞ。では我々の新しい縁を祝して……乾杯じゃ!」


「「乾杯~!」」


 おおかみさまの音頭で店内が歓楽の色で包まれる。性別も年齢も種族さえ異なる人々と神様が和気藹々とお酒を呑み交していた。


「――んん、美味じゃ!口に含むと米の甘味と旨味が沸き立つ。じゃが、喉に進むにつれて酸味を感じつつもするりと通り抜ける。旨味を余韻では綺麗に締めておるのう……」


『月白』を飲んだおおかみさまはご満悦のようだ。常連さん達に奢ってもらったお刺身の盛り合わせと焼き鳥を交互につまみながら、日本酒をちょいちょいと飲んでいる。


 おおかみさまのたべっぷりを眺めている常連さんもニコニコしていたので、紫も安心して仕事に戻るのであった。



 ~~~~~~~~~~お酒レビュー~~~~~~~~~~




 最近、我が家で密かなブームを巻き起こしている加茂錦酒造さんの荷札酒でした!


 まずラベルが眼を惹きますよね。日本酒初心者の私でも直ぐに荷札酒だなとどや顔で言えます。


 見た目も目新しいですが、なんと中身も新しいタイプの日本酒なんです。甘さと旨さが引き立つそんな素敵な日本酒ですので、皆さんも見つけたらどや顔で買って下さいね……笑





 紫「――ああ、こんなに奢ってもらったんですか!?すいません、すいません!」






 ブランド    荷札酒『月白』


 会社      加茂錦酒造さん


 原料米 山田錦


 精米歩合   40%


 タンクNo.    183


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