第27話 すべての人の心に花を-27

「あの子、わがままだから、結構手が掛かるでしょ。あたしも、昼の仕事ならもう少しかまけて上げられるんだけど、どうしても、夜の仕事だから、相手しきれなくてね、それで、飛び出して行って、どうしたんだろうなんて、心配してたのよ。本当に良かったわ、いい人に拾ってもらって」

「しのぶさんは、犬や猫じゃありませんよ」

「はい…?」

「拾ったわけじゃありません」

「あ、…あぁ、そうね」

「それで、警察には届けてあるんですか?」

「何を?」

「家出人捜索願いを」

「いゃぁ、…あたしも、仕事が夜だしね、つい億劫で。それに、ちょっと昔、色々あってね、警察って信用ならないもんだから。あ、それに、ウチの人がやめとけって」

「どうして?」

「どうして、って言われても、ねぇ…」

「ご自分のお子さんが、家出したんですよ。心配じゃないんですか?」

「心配だけど、もう、子供じゃないしね…。ウチの人も大丈夫だ、なんて言うもんだから」

「失礼ですけど、ウチの人というのは?」

「あぁ、まぁ、内縁の亭主みたいなもんでね、まぁ…籍入れようかなんて言ってるんですけどね。でも、しのぶのこと考えると、ちょっと、そうもいかないかななんて思って。なんせ、難しい年頃ですから」

「その方は、しのぶさんのことを心配じゃないんですか?」

「いえ、心配してますよ。毎日。でも、本人が帰って来ないんなら、連れ戻しても、また出て行っちまうから、って。それも一理あるなって思って、それで警察には連絡しなかったんですよ」

「それが、親心なんですか?」

「え?」

「親御さんとして、それが、子供を思いやる気持ちなんですか?」

「な、何よ、あんた」

「女の子なんですよ。その子が心配じゃないんですか?」

「何よ、あたしに、説教する気。まだ、ガキのくせに」

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