第8話 バリバリ伝説ファンのN
1985/4/x
それからというもの、怖くなってCBX750Fで峠に行く気にはならなかった。
RZVも、限定、という噂はどこへやら、市場ではだぶついている、という
話だった。
俺は、この頃スーパーのレジ係りを辞め、タクシーの運転手を始めた。
金貯めて、いつかはRZVを手に入れてやろう。
そういう思いからの行動だった。
Nが事故った、と聞いたのは、そんな春の日のこと。
夜勤明け、泥のように眠っていた午後、郵便屋の郵政カブの音で
目覚めてしまった。
ポストの中には、茶色く変色した年賀はがきの出し損じ。
裏返すと、きったねぇ文字で書きなぐった俺の住所。
Nの筆跡。
ひらり、とはがきをターンさせ、内容をみた。
「わはは~、ジコってしまった。
ひまだよあー。あそびに着てクレイ(原文ママ)」
(笑)
こいつう。(^^)。
早速、乗務のついでに街中にある外科病院に。
二階の日当たりのよい角部屋に、Nはにこにこして肩から包帯を巻いて
横になっていた....。
安心。
「おお、なんだよぉ、元気そうじゃんか。」と俺。
少年マガジンと、ライダースクラブを数冊投げてやった。
腹に命中し、Nは痛そうに、それでも笑顔で。
「いてぇなー、もぉ。鎖骨折って鉄板はいってんだゼ。」
「わはは、わりぃわりぃ(^^)。これで、憧れのバリーと一緒じゃんか?。」
「なーにいってんだよ!」
といいながら、Nは笑ってる。
「安心したぜ。んでもさ、なんでジコッたんだ?へたくそ。」
「へへん、ドリフト失敗。」
....ドリフト?
「....おい、おまえさ...。」
このNは、頭わりぃ。(爆)
「タンクに乗っかってさ、1速で思いっきり吹かすと、ドリフトすんだ。
んで、ちょっと、やりすぎちゃって(^^;。」
.....おい....。
..少年マガジンの読みすぎじゃねぇのか?
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注:このころ「バリバリ伝説」というローリング漫画が流行ってた。
主人公はCB750FBで公道をドリフトコーナーリングする、という
荒唐無稽な設定だった。(今でいや、頭文字Dみたいなもの)
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「ばっかじゃねぇのか、N。そんなことできるわけねぇだろ!」(^^)
「やったんだよぉ!ほんとに。」(^^)。
...そりゃあ、転ぶ寸前には後輪だって滑るだろうけどさ.....
このNは、未だにバカである。(笑)
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