【KACPRO2021】参戦日誌

第1話 2021年3月6日(土)「これは、厳しいぞ」

　3月の月間予定表がおかしなことになった。

　月曜日、水曜日、金曜日にお題発表。

　月曜日、水曜日、金曜日に締め切り。

　それが10回分、2021年3月8日から31日までびっしり。

　平日昼間はしがないSESエンジニア。

　しかしそれは仮の姿であり、実は某amazonとか図書館で著書が検索できる物書き、なみかわ みさき(45)は、3色ペンの芯をぱちんと戻した。

「これは、厳しいぞ……」

　まさか電車の乗客は、スケジュール帳を見ながら悩む人が、「KAC2021 ～カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2021～」の投稿予定について考えているなどと思うことはないだろう。めいめいに新聞を開き、スマートフォンに指を滑らせ、ワイヤレス・イヤホンの音量をいじっている。

　＊＊＊

　本作では2021年3月8日から31日ころのKAC2021について、作者の裏話を中心に語る予定である。冒頭こんな文章になったけど、途中でただのポエムとか自分語りになる可能性が高い。

（ていうか、平日昼間の仕事は大丈夫なんすか？）

　脳内に住んでいるマスコットキャラクターの「けいは」が案の定ツッコミをいれてくれる。

「いやもちろんSES先にも会社にも私物PCは持ち込み禁止やし、実際書けるのは、朝・夜の通勤時間の電車、あと昼休み……は新聞の将棋の問題解いてるから、やっぱ朝晩かね？」

（みさき姉（し）、ひとつ言っていいですかね？　それは「ムリゲー」っていうんですよ？　高々片道1時間弱、スマホで書くんすか？　老眼なのにうぼぁ）

「貴様にはこのジェフからの贈り物が見えぬのか、けいはよ……」

　僕はFireをふりかざし、高貴そうにつぶやいた。そう、僕にはただひとつ、何年か前にうっかりプライムデーでポチった、Kindle Fire 10があった。おそらくカクヨムやはてなブログ、果ては某MediaWikiですら、これでいじる人なんて、ほとんどいないのではないだろうか。

（だからそれが「ムリゲー」だと……）

　ちなみにKindleFireだと、つまりSilkブラウザでアクセスすることになる。あと、ジェフからのって書いてるけど、ほんとうにジェフ＝ベゾスからいただいたのではなく、もちろん自分で購入したものである。

　＊＊＊

　しかしけいはのいう通り、執筆にかけられる時間は限られているため、できることは前倒しでやっておく必要がある。

　何ができるか考えた結果、10回分の小説の枠は先に作っておくことにした。何を書くかはお題が出てその後、MW（ミサキワールド）の引き出しから出すか、近況雑感からいくかになるので、本文を書くことに集中する。下書きはスクラップボックスかカクヨムに直接でいけると思うけど、モバイルルーターが死んだら手書きしてパソコンで打つしかないだろうか。

　冒頭のスケジュール帳も、その事前作戦のひとつだ。いつお題がでていつまで書けるのか、俯瞰（ふかん）できるようになった。そしてそれは、「厳しい」23日間になることも理解できた。

「これは、厳しいぞ……」

　最近観たドキュメンタリーの登場人物がつぶやいていた「けしからん」のような感じでつぶやいたが、やはり向こう側にいる乗客は、スマートフォンのゲームに夢中で、こちらに気づくことはなかった。

（みさき姉、ここで1300文字くらいとかカウントしてる……恐ろしいこ！）