エラーから始まる幼女使い〜訳有って異世界転生し魔法学校に入ります！〜僕を幼女使いと呼ばないで！

第50話 転居

　奴隷商というかハイランド商会にて手続きや支払いが終わった後、皆で屋敷に来ていた。部屋割りをしたり、必要と思われる物を見繕ったりする為だ。30分程ざっくりとだけ確認し、屋敷を早々に引き上げた。フォルクス達がこれからこの屋敷で生活するのに不足している物を買い揃える為、買い物に出掛けていた。

　ジェスロに屋敷の留守番をお願いし、今日はこの屋敷に皆が住む為の準備をする事にした。夕方になり買い物が一段落し、一旦屋敷に戻り荷物を収納から取り出していった。

　その後ユリアを迎えにギルドに行く事になった。ユリアをギルドでピックアップし、そのまま宿に向かった。そして宿の主人に事情を説明した。部屋をキープしていた分のお金はそのままでいいからと宿を引き払う話をした。荷物を全て回収し、部屋にクリーンを掛けてから食事にもどった。部屋は引き払ったが、時折食事をしに来るからというような話をしていた。

　そして事情を知らないユリアに屋敷の話をしなければならないのだが、皆がソワソワしており、ユリアは違和感を感じていた。

「ねえフォル君、何か私に話があるのよね？さっきから皆の様子がおかしいわよ」

「うん。その家を買ったんだ」

「へー！フォル君家を買ったの。凄いじゃないの！ねえ、どんな家なの？」

　家を買ったと言われ、ユリアはうっとりとしていた。

「その、迷惑じゃなかったらユリアさんも一緒に住まない？部屋は十分有るんだ」

「いいの？勿論フォル君が迷惑でないのなら一緒の部屋で寝泊まりしてもいいのかな。フォル君は意外と積極的なのね。でもまだ一線を超えては駄目よ」

「うーん違うよ。ちゃんと一人に付き一部屋有るから」

「フォル君、一体どんな家を買ったの？」

「どんなですかね。まぁ見てのお楽しみですよ」

　どんな屋敷を買ったのかを言わず、回答を濁したのだが、ユリアは一般人が住むような家を買ったと思っていた。当たり前の話である。精々ちょっとリッチな人が背伸びをして買った位の家をイメージしていたのだ。

　確かにフォルクスが持っている筈のお金からすると、そこそこの家が買える筈なのだ。ユリアはフォルクスはきっと驚かせてくれるんだろうなと楽しみにしていた。

　現在のユリアはというと、宿の部屋に転がり込んではいるが、一応ギルドの職員用の独身者用の部屋に住んでいる。

　にこやかに微笑んでいるユリアを皆がちらちらと見ている。理由は簡単である。屋敷を見てユリアが驚く様が目に浮からだ。ユリアの驚き様を皆が楽しみにしているのだ。

　シーラ達から見てもユリアは美しい。そんな綺麗な顔が、驚きから口をポカーンと開けているのを見てみたいと思うのは無理もない。

　ユリアは最悪着の身着のままでも大丈夫なのだが、一応寝巻きは用意してある。最悪の場合、フォルクスがクリーンを掛ければ今日着ている服もきれいな服になり明日も着ていけるのだ。但し、おしゃれの面では前日と同じ服なので年頃の女性にとっては悩みどころである。

　そして宿を出て皆で屋敷に向かって歩いて行くのだが、先にフォルクスの屋敷に入るのではなく、べソンの購入した館を見る。

「フォル君がこの館を買ったのね。凄い！凄いよ！へー立派なお屋敷を買ったのね！ここがそうなのね！素敵！」

　ユリアが興奮し、フォルクスの腕に抱きついていた。フォルクスは胸の感触にドキドキしていた。

「いや違うんだ。ここはべソンが買ったんだ」

「えっ？」とユリアが驚いている。

「こっちだよ」

　一言いいユリアの手を引きながら大きな屋敷の敷地に入っていった。ユリアがどこに行くのだろうかと不思議そうに見ていた。そしてポンと手を叩き、離れの方を指差した。

「この家を買ったのね。なるほどなるほど」

　そう言うや否やフォルクスが一言言う

「それは使用人用の離れだよ」

　フォルクスが屋敷の方に向かって行くがユリアの表情が段々と強張って行く。

　そしてプルプルと震えているユリアをよそに玄関のドアが開いた。そこには一人の執事服を着た老紳士が出てきた。いつのまに用意したのか、元々使用人室にでも有ったのかまでは分からないが、鎧ではなく執事服を着ているのにはフォルクスも少し驚いていた。

　腰に短剣は下げてはいるが、フォルクスがドアを開ける前にジェスロがドアを開けたのだが、お帰りなさいませご主人様とは言わず

「お帰りなさいませ幼女使い様」

　そうジェスロが言ったのでフォルクスは抗議しかけたが、それより先にユリアが声を震わせていた

「フォ、フォ、フォル君、こ、これは一体どういう事？それに幼女使いって何なの？」

「うんこのお屋敷を買ったんだ」

「えっ？何を言ってるの？意味が分からないわ？いくらフォル君でも、それだけのお金はないでしょう？」

「うん。このお屋敷は曰く付き物件で、金貨3000枚だったんだ」

　ユリアが震えていたが、ジェスロがとどめを刺した

「依代様。無事で何よりです。養女を鬼畜のごとく使役するフォルクス様が貴女の魂の伴侶たる幼女使い様で御座います。やはり始まりの場所に皆が集まったのですな」

　ユリアがその場で卒倒してしまった。考えが追いつかずに泡を吹いて卒倒し、倒れていった。

　幸い、地面に頭を打ち付ける直前に何とかフォルクスがキャッチした。そのままお姫様抱っこでユリア用に宛がう部屋に連れて行き、布団に寝かせてあげた。シーラ達は予測の上の事態に驚きつつ、ユリアを羨ましがっていたのであった。