第43話  追加試験

 次に並んでいたのが宮廷魔導師の息子だったが、既に魔石を売る事が可能な相手が最早フォルクスだけしか残っていない事が誰が見ても明らかになっていた。その為選択肢がなく、仕方がなく初夜権を手放す事になったのだが、問題が発生した。


 同じパーティーの女性2人のうち1人はこの男が権利を有しているが、もう1人の分は父親が有しているのだという。


「今すぐ父親も連れて来い。そして父親の分の権利も寄越せ。さもなくば不合格だぞ。父親を連れて来るのに一度自宅に行くのであれば、予約という事で引換証の1つを売らずに置いておいてやる。そうだな。期限は今から1時間半だ。行って帰ってくるだけであれば2往復ぐらいできるだろう?時間がないぞそら急げ!」


 フォルクスに汚い罵声を浴びせたいのを我慢し、ちっと舌打ちしつつ、渋い顔をしながら急ぎ走り去って行った。


 そうして色々な者達から権利書を売ってくれと頼まれ、条件提示の良かった者というよりも、魔石の購入金額の高い者、初夜権を持っている者から順番に売ってやる事になった。フォルクスは一部の者を完全に敵に回す事になった。


 宮廷魔導師の息子はしっかり1時間半後に顔を真っ赤にした父親を連れて来た。そしてシーラ達がフォルクスの元にいるのを見て愕然としていたが、息子の合格の為に泣く泣く権利を手放していた。息子が引換券を手に取った後、フォルクスにありったけの罵詈雑言を叫んでいたが、奴隷商から慰められ、外に連れ出されていた。意外と役に立つ男であった。顔見知りのようで次の入荷はいつ等と聞こえてきた。


 そうやってフォルクスが8名の女性を救って、女性の味方と一部の男の敵を作った以外は無事に試験が終わった。


 結局5組に権利書を渡していた。フォルクス自身が提出した魔石が1200万、そして巻き上げた、もとい提供させた魔石の総計が5100万、つまり金貨6300枚になった。

 一財産である。人一人の生涯収入を超えていた。


 当たり前だがフォルクス達が一番の成績を収めている。


 ただ、魔石の換金が出来たのは12チームのみだった。つまり3チーム分少ないのだが、フォルクスは一体どうするのか?と首を傾げていた。


 そうしていると、試験官が話しを始めた。


「2次試験にて合格したのは12チームです。まずは合格おめでとう。但し、15チーム中12チームが合格したに過ぎません。つまり3チーム分18名の合格者が足りません。よって追加試験を行う事とします。今日は予め一次試験を突破した者について、手伝いや何かしらの理由にて全員集まって貰っています。明日の朝また全員が集まるように。2次試験の合格者も集まるのですよ。残りの者の分の追加試験を明日行います。追加試験の内容は明日ここで発表します。今日はもう遅いので皆さん解散して明日に備えて下さい」



 そう言われ解散となった。試験についての詳しい内容が分からないが、ソニアはパッと明るくなった。自力で合格できる道がまだあるのだ。確かにフォルクスの従者として拾って貰えればそれに越した事はないが、できる限り自力で合格したかったのだ。フォルクスに拾われれば、対等な者としていられる立場にはどうあがいても絶望的となるから、自力合格の可能性が有るのが有り難かった。


 ソニアは自分の実力を知らなかった。力不足だと思い込んでいたのだ。


 そしてフォルクス達はクタクタな状態で宿に戻り、フォルクスが皆にクリーンを掛け、着替えた後全員早々に寝ていった。


 そして翌日にまた魔法学校に全員が集まっていた。追加試験の会場はこちらですの案内看板が示していたのは魔法の練習場であった。


 そこで追加試験の受講者は一箇所に集められており、講師が説明を始めた。



「これより追加試験の内容を発表する。まず2次試験の合格者の各チームの代表1人のみが今すぐこちらに来るように」


 当然ながらフォルクスの所はフォルクスが向かう。

 そしてフォルクスは番号札を渡され、順次他のチームの代表者に渡していた。フォルクスは1番を渡され、2番、3番と魔石の購入額の多かった順に渡されていた。そしてフォルクスが渡した低い金額の者達は提出順になった。何の為の番号だろうと不思議に思っていたが、それも踏まえてこれから説明があるのだろうと感じていた。


「良いですか?よく聞くように。これより追加試験の内容について発表を行います。合格者に対して学園からチーム分けについての変更をお知らせします。6人のチームでずっと過ごすと説明していましたが、これを7名に変更いたします」


 ざわめきが起こる。講師が手を挙げて皆を黙らせ、先を続けた。


「ただいまより追加試験の受講者による魔法等の展示を行って貰う。その上で番号1番のチームから順番に、自分のチーム員にしたい者の名前を呼び選ぶように。呼ばれた者はその時点で合格となります。それによりまず12名の合格者を決めていきます。そして本来の定員より1名プラスになりますが、学校側で7名の合格者を選び、その合格者達が一つのチームとなります。ですのでよく考えて行動するように。また選ぶ事ができるのは今ここに集まって貰ったチームの代表者のみです。誰をチーム員に引き入れるかを仲間と相談する事はできません。質問は一切受け付けません。それでは最初の者から魔法展示を始めていくように」


 フォルクスは驚いていた。どういう訳か分からないが、7名のチームになると言う。そしてフォルクスだけ講師に話し掛けられた。


「毎年の事でしたが、魔法1位の者に従者を一人付けるというのは今回はありません。毎年1位の者のチームだけ1人多い事に対する不満があったのです。また悪しき習慣にしかなりませんので今回から廃止とし、不公平にならないように7名とする事が先程決定されました」


「あーなる程。とは言ってももう誰を選ぶか決まっているんですけどもね」


「分っております。貴方が誰を選ぶのかも。貴方の行動を見ていれば分かります。というよりも皆さんが狙っているのがあのソニア嬢ですよ。不幸にしてあの弁当を食べ切れずに2次試験に進めなかった彼女達を不憫と思う者は多いのです。また個人の魔力ランキングでは4位の彼女が合格していない事に疑問の声も大きかったのです」


「なる程分りました。僕は問題ありませんが、どうしてそんな事をわざわざ説明してくれるのですか?」


「念の為にです。従者を配置できる方が配置できなくなりますから。ただ特典としての特別部屋を宛てがうというのだけは残しておきます」


「それで問題ないですよ」


 また試験官からの説明の中では、指名された者はそのチームに入る事を拒否できない。拒否する=不合格となると言われたのだ。それでも試験を受ける者のみ展示を始めるようにとだった。


 有力者で合格しなかったのは実はソニアだけであった。後の者に対しては若干不合格者と合格者のランクの入れ違いはあるが、多少の違いだけであった。80から100位当たりがそのラインだ。


 そして魔法展示が終わり、そのまま代表者によるチームメイト選びが始まった。当然一番最初に呼ばれたのはフォルクスであるが、当然ながらソニアを指定した。その途端大きなどよめきと言うか、悲鳴に近い声が聞こえた。やはりそう来たかと。

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