第41話 2次試験
フォルクスはべソンとリズに肩を貸して貰いながら、なんとか馬車に乗り込んでおり、降りる時も同様だった。
2次試験の会場は、学校の建物の中にあるホールの一角だった。
魔法の練習場とは別に舞踏会が開催できるようなホールがあり、そこにテーブルが持ち込まれ、魔石の買取の為のギルドの臨時受付カウンターが出来上がっていた。また、不正を監視する為の監視員である職員や学校関係者、手伝いの人等、多くの人が集まっている感じであった。
また受験者達の席も設けられており、札が立てて有った。各グループ毎に座るようになっていて、テーブルとテーブルの間はそれなりに離れている。フォルクスは早々に椅子に座り、開始時間まで休み、少しでも体力の回復を図る事にした。
暫くすると開始時間になったようで、講師の1人が2次試験の課題である魔石買取のルールについての説明を始めた。
魔石の買取をギルドにして貰った後の証書を他のチーム間で売買するのは自由。但し売買の時には、証書に誰が誰に対して売ったかという文言をギルド側で書き加えて貰わなければならない。また譲渡された証書を第三者に売る場合、最初の持ち主の許可が必要である。これは強引に奪われたりするのを防ぐ目的が有り、その証書はあくまでも最初の所有者から売られた物を第三者に対し正当に売られた事を証明する為である。どこからともなくチッという舌打ちが聞こえて来た。
また、それは転売を認めるか否かの権利は最初の所有者が持っている事を意味する。
最初の持ち主のAがBに売ったとする。BがCに売る場合はAの許可がいる。Aの許可がないままCが自分の物だと主張してもBの物として扱われると言う。これは権利の買取等は慎重に行う為だ。
合格するかしないのかは別として、最終的に提出された権利書の金額で順位を付ける。
最低でも一つの証書を売らなければならない。自分のチームが元々持っている引換証を提出しなければならない決まりはない。証書の額面の合計金額がチームの成績に成る。1枚でも6枚でも変わらない。
魔石の買い取りはギルドのルールに則って行われるものとする。それは以前説明した通りであると話をしていた。
また、今は丁度18時になった所で、魔石の買取査定は23時の時点で並んでいる者が最終。それ以降は受け付けない。
皆狼狽えていた。何故そんな時間までやるのかと。全チームが提出完了し終わるか、23時に並んでいる者が査定を終わり、24時までに提出する。それまでは全員退出してはならない。
また各グループに一人試験監が付いており、不正をしていないかどうかの確認をすると言う。
魔石の売買も自由だという。但し試験官に売買の記録をつけて貰う。そうして各グループは用意されたテーブルにて、本日持ってきた魔石を並べておき、試験官が魔石の数などを記録して行った。この時の魔石が最終的に残っていたら失格だという。
全てのグループの魔石のチェックが終わった事の確認が取れると
「それでは只今より2次試験本試験の開始となります。各グループはギルドの引換証を少なくとも1つはグループの成績分として提出して下さい。1つも提出できなかったグループは本試験不合格となります。またギルド職員への暴行や暴言も2度目は即時失格となります。それではスタート」
まずはカーラにオーク10匹分の魔石を交換させに並ばせた。他のグループもさあどうしよう?と魔石の分配で揉めているグループもあったりする。だが基本的に各自が持ってきた物を各自で引き換え、換金すれば良いだろうというような話にまとまりつつ有ったようだ。カーラが引き換え済み証書を持って帰ってきた時に誰かが叫び始めた。そう一番最初に並んだグループからだ
「何でだよ!何で買い取ってくれないんだよ」
「ですから決まりで、ギルドが魔石を買い取るのは冒険者からのみとなります。また、魔石を売れる方は証書を持っている当人のみと聞いております。確かに貴方の名前と引換証書の名前は一致しますが、冒険者登録がされている事の確認が出来なければ買取はできません」
「じゃあどうしろって言うんだよ?」
「同じグループの方にて誰か一人でも冒険者がいればそれで問題ないのではないでしょうか?詳しくは試験官の方にお尋ねください」
「なんだよ!ちくしょう!」
そうやって意気揚々と来ていた者が自分達のテーブルに戻り、所謂阿鼻叫喚状態になっていた。
「まじかよ誰もいねえのかよ?」
というようなグループもいれば
「一人いたよ!ラッキー!」
そんな声も有ったりする。冒険者がチームの中に2人いる所もいたが、殆どのチームには冒険者が1人もいなかった。
フォルクスは自分以外の残り4名に適当な額の魔石を渡し、引換証に変えてきて貰っていた。そう、ここからが勝負の始まりである。というか、巻き上げる為の攻撃ターンの始まりである。
フォルクスは早々に皆の魔石を交換し、交換済みの証書に変えていたのは、他のチームから魔石を代わりに変換してくれと言われるのを防ぐ為だった。
「その証書を売ってくれ」
冒険者が一人しかいないグループに頼み込む者もいたが、
「無理だよ。俺達の所も冒険者登録をしているのは一人しかいないんだ。他を当たってくれ」
「使えねえ奴め!」
というような会話があったり、
「どうするんだよ?」
「どうすれば良いのよ?」
叫ぶ者もいたりする。
中には冒険者が2人いる所へ早々に目を付けていて、交渉している所もあった。
しかし冒険者の数が圧倒的に少なかった。フォルクスは驚いた。あまりにも少ないからだ。またよく見ると上等な服を着ている者達が多い。
フォルクスがシーラに質問した
「なあシーラ、金持ちが多いのか?」
「あんた何言ってるのよ!当たり前でしょ。殆どが貴族とか商人等のお金を持っている者達位しか来ないのよ。私達みたいに村から半ば強制的に送り出された者というのは例外的よ」
「そうか」
ふとフォルクスがまだ頭の回転が鈍っているなあと思いつつ、その意味を理解するのに暫く時間が掛かった。そして計画を発動した。
フォルクスは敢えて目立つようにした。
「おい!注目。俺達のチームの全員が冒険者登録をしている。実際に活動もしている。言わんとする意味が分かるよな?」
そうするとフォルクス達のチームの所に我先にと色々な者が集まり始めた。
そして当たり前の如く喧嘩が始まる。俺達の方が先だよ!何言ってんのあたい達の方が先よ!私達のが先だよ!等と順番を巡って争いが始まっていた。
「おい、お前達が持っている証書を俺達が買ってやる。お前達が引き換えた安い魔石分の証書を俺達が買ってやるからありがたく思え。どうせ大した金額じゃないんだろう?金貨100枚出してやるからその証書をよこせ」
フォルクスは溜息をついた。
「馬鹿か?お前大丈夫か?何言ってんだ?そんなに安い訳ないだろう!」
そいつはフォルクスより頭一つ分低い。対峙して感じたのは、成程、シーラよりは魔力が低いがそれなりに高く、威勢がいいだけの事はあるなと。ふと見るとおどおどして中々フォルクス達の所に来れない者達がいた。ラティスは気付いたが、その者達の中に首輪を着けている者がいた。フォルクスはハットなり首輪を着けている者達がいるチームに行く。首輪を嵌められた女性は驚いていた。フォルクスが目の前に来たからだ。
フォルクスはその女性に質問する
「君は初夜権をどうやら売られたようだが、ひょっとしてこの中に権利を握っている者がいるのか?」
そう言うとフォルクスはその女の子が指を指す方を見て怒りを覚えた。いかにも金持ちのボンボン風の奴らだ。そいつらを見たフォルクスは怒りを覚え、声を出した
「初夜権をを買われている奴はいるか?いたら教えてくれ。助けてやる」
そう言うと驚いた事に8人も出てきたのだ。その者達全員分の権利を持っている者が、既にフォルクスの所に権利を買い求めに集ってきた奴らだと分かった。
フォルクスはそいつらを呼びつけた。
「おいお前達、合格したいか?」
「証書を売ってくれるのか?ありがてぇな。ぐへへ」
下卑た笑いを発している者がいるのは男4人のチームだったが、可哀想な事にそこの女子は2人共首輪をしているのであった。
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