第36話  試験前日

「あんた達一体何をやってるのよ?」


 プルプル震えているシーラにユリアが説明をした


「あのねシーラちゃん。フォル君って冒険者の掟を知らないのだけれども、どうい事なのかしら?今それを身を持って教えているところなのよ」


「えっ?それってどういう事なの?」


「ちょっと待って、まさかシーラちゃんも知らないの?あのね冒険者たる者、同じテント等で男女混合で着替え位するじゃないの。その度にいちいち男性が女性の下着姿を見て今のフォル君のように反応していたらだめなの」


 ユリアはフォルクスが股間を押さえているその股間を指差していた。



「着替えをしている女性の姿を見ても冒険者として活動している時はね、誰かが着替えているな、ふーんそれが何?位にしか思えないようになるしかないの。流石に下着まで外すと反応しちゃうだろうけれども、下着姿を見て反応するようじゃ一流の冒険者にはなれないのよ。あなたたちのみのパーティーだけならい良いけれども、他のパーティーと組んだりした時に他のパーティーの女性の着替えを見て反応していたら喧嘩になるわよ」


「確かにそうね。私達も恥ずかしいから背中を向けていたわね。確かにあんたは私達の着替えを見て慌てて背中を向けていたわよね。ねそれってやっぱり私達に反応していたの?」


「うん、ごめん。君達の着替えを見るとやっぱり男として反応しちゃうんだ。だから背中を向けていたんだけれどさ、ユリアさんの話だと冒険者としている時に着替えている女性の下着姿を見ても何とも思わないようにならなきゃダメだって事じゃないか。まずはユリアさんとソニアさんが僕の前で着替えるから慣れなさいという話になったんだ」


「そ、そう。だったらいいんだけど。そっか。私の小さな胸でもちゃんと女として見てくれていたのね。全くもう、まぎわらしいわね。じゃあ、いつまでもセクシーな決めポーズで下着姿を披露していないで、さっさと着替えなさいよ。着替えたらとっとと食堂に行くわよ。みんなお腹をすかして待ってるんだから」


 そうやって食堂に向かっていった。フォルクスは歩きずらそうだったが。


 そして食堂に皆が座ると、ユリアとソニアがお詫びをしだした


「昨晩はごめんなさい。醜態を晒しました。その、皆さんの温かい心遣いに感謝してます。これからも仲間としてよろしくお願いします」


 カーラが優しく声を掛ける。


「うん、いいのよ。私達も似たような事があったから。フォルクスさんに救って頂くまではみんな不安定だったの。だから貴女達の気持ちはよく分かるんですよ」


「うん。ありがとう!良かった。嬉しかった。救われたのよ」


 そうしてリズ、シーラ、ラティスも問題ない、大丈夫だと2人を励ましていた。その後は黙々と食事をし、ユリアの出勤時間に合わせてギルドに向かう。そう依頼達成の手続きをしていないからだ。


 ユリアがその事に気が付いた。


「そういえば依頼達成の手続きが途中で終わってしまっているわね」


 サイクロプスの件は貢献度は付かないが、お金だけはちゃんと貰えるし、プラスして提出したオークの討伐証明分は、オークの随時的な駆除依頼というのがあり、その分の達成報酬にできると言っていた。報酬の額は大した事はない。それよりもギルドに対する貢献度がカウントアップされ、冒険者ランクが上がる可能性が高くなる事の方が大事な事であった。また、今日か明日にお金を取りに行くから後回しで良いと伝え、ギルドを引き上げた。


 ギルドでの用事も終わり、この後の事をフォルクスは考えていた。明日の2次試験の課題提出に備えて本来であれば休む所ではあるが、フォルクス達はこの町をあまりにも知らなさ過ぎた。特にフォルクスとべソンは町に着いた翌日には試験と町の中を見る余裕は無かった。


 ソニアもそうだ。町に着いてから直ぐに試験だったらしい。急に試験を受けろと言われ、里から送り出されたのだと。


 その為に今日と明日の試験までの間、町のあちこちを見て回り、どんな町なのかを把握する日に充てる事にしようと決めた。


 そうしてギルドを出た後にフォルクスがその旨を話すと、


「じゃあ、そういう事で!夕飯の時間には多分宿に戻るから」


 等と言ってべソンとリズは早々に消えてしまった。あっと言う間の事で、声を掛ける間もなく消え失せたのだ。


 シーラ等はクスクス笑っていたのだが、笑えないのはフォルクスだけだった。まったくもうあいつらときたら!そんな感じであった。


 3人は違った。

「チュパチュパね」「チュパチュパするのですね」「ちゅぱちゅぱしに行ったのだな」


「なんだよチュパチュバって?」


「フォルクス殿もしたいのだな。分かった。じゃあ人目につかない所で一肌脱ごう。誰のから吸いたいのだ?」


「吸うって何の話だ?」

 ラティスが胸を指差していたので、べソン達が何をするのかが分かった。


「そうか。はあ。今は良いよってそこ脱がない!」


 ラティスがコートを脱ぎ、ビキニアーマーを披露しようとしていたが、必死に止めていた。フォルクスはため息をついていた。


「ギルドの前でぶーたれていてもしゃーないな。そうだな、俺達5人で町を見て回るか。なあ、君達は僕より先にこの町に来ていたよね?少しは地理が分かっているのかな?そうそうラティス、言っとくが真面目に回るんだぞ」


 ラティスが手を上げ


「私だと主要な所はある程度分かりるぞ!ただ、美味しいお店等はシーラの方が詳しいのじゃないか?」


 まずはラティスに主要な場所を案内して貰った。劇場、行政府、歓楽街、騎士の詰め所を回り、武器、防具、道具、冒険者向けの服、おしゃれな服、日用品、これらを売っていそうな店を手分けして探してみて、行きつけの店を確保する感じになった。


 後でべソンとリズにはお仕置きが待っているが、取り敢えずこれから色々な買い物をするのに困らないようにした。


 また、夕方になってからソニアのパーティー登録をしていなかった事にラティスが気が付き、慌ててユリアの所へ行った。ソニアの冒険者ランクはラティスと同じだった。ユリアはまだオークの随時依頼の手続きをしていなかったので、これ幸いにとソニアとついでにユリアもパーティーに入れた。

 そして規定によりユリア、ソニア、ラティスがランクEに上げて貰った。


 お金は15万Gとごく普通だったので、フォルクスの計らいでパーティーに1万G、残りは女性陣に各2万を渡した。ユリアは遠慮したが、一応冒険者として外に出る事もあるから、冒険者用の服を買う為の必要経費として無理やり渡していた。


 そうやって手続きが終わったが、ギルドの業務終了時間間際に来ていたのと、ユリアの本日最後の仕事だった為、ユリアの着替えるのを待ってから一緒に宿へ向かうのであった。


 その日はまだ不安定な状態のソニアとユリアがフォルクスの添い寝で寝る事になった以外は、特に何も無く一日が終わるのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る