第18話  登録

 早速ギルドに行き、受付に向かったのだが、お馴染みのエルフの女性の所に並んた。ついつい彼女の方に足が向く。幸い混雑前の為一人待っつのみだった。


「あら、また貴方が来たのね。ひょっとしてお姉さんの事が好きになっちゃって、告白する為に会いに来たのかしら?うふふ。冗談だから、そんな怖い目で見ないの。ってフォルクスさん?また綺麗な子が増えているのはどういう事かしら?ふふふ、君は見掛けによらず中々やるわね。それで今日はどうしたのかしら?お姉さんに会いたくて来た訳じゃなさそうね?」


「うん。おねえさんに好きだって告白に来ました!」


受付のお姉さんは唖然とし、口をポカーンと開き真っ赤になっていた。


「冗談、冗談ですよ。彼女、そう、ラティスの冒険者登録をお願いしたいんです。それと彼女を俺達のパーティーに加えたいので手続きをお願いします」


「うふふ驚いちゃった。本当に迫られちゃったらフォル君は年下だけど、お姉さん本気で考えちゃうかな。うふふ。君はからかい甲斐が有るわね。シーラちゃんがヤキモチを焼いているからこの辺にしておこうかしら。そうねえ、ラティスさんをパーティーに加えるのは良いのだけれども、そこの大男君はランクBで、フォル君はCよね。新たに登録する子がいるとなると、ランクDまでの依頼しか受けられなくなるけれども良いのかしら?」


「大丈夫です。それを分かったうえでパーティーに入れたいんです。魔石自体の買い取りはランクは関係ないから大丈夫です。それと今年の魔法学校の試験内容を知っていますか?知っていれば話が早いのですが、なるべく魔石を稼ぎたいので、強い魔物が出る場所を知りたいんです。5日後に戻らなきゃならないので、その範囲で行って帰って来れる所の中で、一番ランクの高い魔物が出る所を教えて欲しいんです。べソンはランクB、俺はCだけど、おそらくもっと上の実力があ筈です。俺には攻撃魔法があるから、魔法を含めた場合はべソンより強いんです。但し、剣のみだと話にならないですけどね。もし、魔力が切れてしまったらべソン頼みかな」


「そうねえ、依頼扱いにはならないのだけれども、強い魔物の討伐依頼とかは有るわ。これなんかどうかしら?」


 出してきたのはサイクロプス、一つ目の巨人の討伐依頼だった。Aランクの魔物で、2日程行った所にある山間にある村の周辺にて、サイクロプスらしき魔物の目撃例があり、家畜や畑が荒らされて困っているそうだ。依頼扱いではないが、その魔物を討伐するのは自由だという。


「でもね、正直Aランクの魔物に B ランク以下のパーティーが挑むのはかなり無謀な事なのよ?」


「分かりました。それで良いです。場所等の詳細だけを教えてくれれば、勝手に行きますから」


「うん分かったわ。でもね、お姉さんと約束してくれるかな?お姉さんの所にまた戻ってくると。約束してくれるなら教えてあげるわ」


「分かりました。お姉さんとデートする為にも必ず帰って来ると約束します。じゃなくて、誰一人欠ける事なく必ず帰ってきます。そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですって。町に戻ってきたら真っ先にお姉さんの所に顔を出しますから!」


「素直でよろしい!お姉さんと約束したんだから絶対にデートする為に戻って来るのよ。じゃなくて、ちゃんと全員を五体満足で連れ帰るのよ!いいわね?」


「はい、お姉さん!」


「宜しい!約束だからね。よしよし」


 いつのまにかフォルクスの頭を撫でていたから隣のカウンターの受付嬢がぎょっとした目で見ていた。


「な、なんかこの子ね、私の弟になんとなく似ているのよね。ふふふふふふ」


 そんな感じで言い訳をしていた。そう、フォルクスは完全に弟扱いであった。妹はいるが弟はいないのだが、ついシーラの反応が面白いからいじっていたのだ。


 また手続の書類を書いている間、少し時間があったので、フォルクスは受付嬢に講師が言っていた内容を話していた。すると不合格者が大量に発生する筈だと言われた。


「調べなさいって言っていたのでしょ?つまりね、ギルドが魔石を買い取るには条件があるのだという事を調べなきゃいけないのよ。本来であればね、最終日の夕方までにギルドで冒険者登録を少なくともチームの誰かがしていないと駄目なのよ。基本的に前日までにギルドに登録しに来ないと駄目ね。チーム内に一人でも冒険者が居なければそのチームから魔石をギルドは買い取れないの。ギルドが魔石を買い取るのは例外なく冒険者登録をしている人からだけなの。それと、集合時間はギルドの窓口が終わった後だから、査定が始まった後はもう翌朝まで新たに冒険者登録は出来ないの。フォル君は気が付いているようね」


 そんな話をしてくれたが、その間にラティスが冒険者登録の申し込用紙に必要事項を記載し終わり、やがて問題なくパーティー登録も終わったのであった。


 本当はギルドで新規に冒険者に成った者向けの講習を受けるのが望ましいと言われたが、時間的に厳しいからという事で講習を見送らざるを得なくなった。ただ、ランクC以上がいるパーティーに登録をする新規の冒険者は講習が免除されるが、それ以外は講習を受けないと新規に冒険者になれないと言う。講習は丸一日掛かるとの事だ。


 ギルドを引き上げた後は、とりあえず3手に分かれる事にした。リズとシーラがささっとラティスの胸やお尻を触り、採寸をしていく。足の大きさを測ったりしてふむふむと言いながらリズとシーラがラティスの服を買いに行く事になった。


 そしてべソンは彼女の為の武器を買いに行く。しょぼい短剣しか持っていなかったのだ。これはパーティーとして必要な物になり、フ有無を言わせずフォルクスがお金を出す。そしてラティス、フォルクス、カーラはラティスのテントを撤収しに行く事にした。シーラ達がテントを張っていた近くでテントを張っていた事が分かった。


 周辺にはポツポツとテントが張られており、お金が無く宿に泊まれないような貧乏な冒険者や、資金に乏しい商隊、宿が埋まっていて止む無く野営をする者が野営地として選ぶ所だった。今はどこの宿も満室で、部屋が取れなかった者が多かったので、いつもより野営をしている者が多かったのだ。


 ラティスのテント自体は新しく綺麗な2人用だったのだが、やはり荷物の関係から服がもう一着しかなくテントの中で干されていた。


 下着が有るからと慌ててラティスが中に入り、渡した袋に入れていた。

 気にしていたのでクリーン魔法を掛けてあげた。


 袋の中のに入れた生乾き湿の服が乾いており、更に染み等も無くなっていて驚いていた。


 フォルクスが生活魔法を使えるのを伝え忘れていたからだ。道具等をまとめて収納に入れていっていたが違和感が有った。荷物が新しいのだ。中古を集めたのではなく、新品で買い揃えたとしか思えなかったのだ。


 お金がない村で新品を買い与えるなどあり得ないのだが、フォルクスはやはり本当は飢饉で資金不足には陥ったのではなく、そう思い込まされていたのだろうと感じだ。


 ただ、誰が何の為にそれを行ったのかは分からない。唯一言えるのは、彼女達には何かしらの役割がある。才能を見出したか、密かに与えた者の仕業だろうかと。


 フォルクスは小説とかでは神様や女神達がやっていたりするよな?と思っていたが、少なくともフォルクスにはそれらが接触してきた記憶がない。やはり喪くしている記憶にその鍵があるのだろうか?そうやって思案にふけっていたが、ラティスから準備が出来と言われ現実に引き戻されたのであった。

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