第13話  2次試験

 朝食はサラダにゆで卵、パンが用意されており、一般的な太閣の女子には少し多目だが、男子には物足りない感じだった。カーラとシーラがパンを半分位しか食べられないと言うので、べソンとフォルクスの胃袋に収まって丁度良い感じになった。


 時間に少し余裕を持って出発するが、女性陣と男性陣は念の為別々に行動をする事にした。


 宮廷魔術師の邪魔が懸念され、明日権利を買い取るまでは悟られないようにしたいからだ。その為、5分程間隔を置く事にし、男性陣が先に出発した。


 試験会場はやはり学校で行われるが、既に受付に受験者が並んでおり、大抵は身なりの良い坊っちゃん、嬢ちゃんばかりで、やはりべソンとフォルクスは背が高い事もあり周りから浮いていた。


 それはともかく、2人は受験票を提出し、2次試験の説明があると説明され、指示された場所に向う。矢印で分かり易く書いてあり、会場に入った。


 学校全体の講義を行うような広い会場で、詰めれば400人位が入れそうな感じだ。


 席に座り待つ事30分。開始時間には少し早かったが、受験者が全員揃ったとの事で係員が来て案内文に有った内容を説明していった。説明が終わると外にある魔法の練習場にて魔法検定を行うので向かうように促された。


 今の所、何もトラブルが無く、皆係員の指示に黙って従っていた。


 説明時に言われたのは、今回の試験の合格者になる定員80名に対して150名が試験に挑むとの事だった。


 練習場は屋外に有り、直径100m位の円形の場所だった。中心部にターゲットが置かれており、そのターゲットを攻撃し、破壊するという内容だった。


 在校生は見学希望者は見学しても良いという事で、20名位が見に来ていた。学校自体は当然ながら今日は休みである。中心部に置かれたターゲットを破壊するような内容になり、2分以内に破壊しなければならない。現在魔力は持っているが魔法を使えない者の為に魔力弾を放つ事の出来る杖が貸し出された。


 魔法を使える者は得意魔法で攻撃する、そういう形になるのだ。念の為半円形に囲み、後ろに魔法が抜けてしまった場合に被害が出ないようにもしてあるし、何よりも結界が張られているので外に魔法が飛び出す事はないという事であった。


 受付時に貰った受験票番号が検定で呼ばれる順番だと言われており、受験票の番号順に席に座る事になる。椅子の後ろに受験番号が書いてあり、1番目が宮廷魔術師の息子で、フォルクスは150番、シーラが149番であった。


 また、カーラは5番目である。受験番号順からするとカーラは絶望的なのだ。べソンが127番、リズが126番だった。


 この順番は殆どの者からすると予測通りで、やはり魔力の順番だろうと判断していた。その為フォルクスは注目されていた。例年一番魔力の強いトップ候補が一番目か一番最後になるからである。その為この宮廷魔術師の息子とフォルクスが一番と二番だというのが必然的に分かるのである。どう見ても脳筋系の者なのに何故か魔法が強いというような普通なら有り得ない事なので驚かざるを得ないのだ。その為ざわめきが起こっていたりする。


 基本的に今日はシーラとフォルクスは他人行儀とし、他人として面識が殆ど無いかのようにする事になっており、シーラとの会話も当たり障りのないものしかしない。


 幸い宮廷魔術師の息子とは席が離れているのと、講師陣が見ている為ちょっかいをかけてくる者もいない。途中で休憩時間を入れてくれるが、最後まで全員が試験を見る事になる。今からの検定のみでは合否を判定しないし、ターゲットを破壊出来なくても合格になる場合があると。そこで誰がどれ位強いのかという格付けをしっかり頭の中に叩き込む必要があると説明されていた。なので真剣に見るようにと。


 またトイレは自由に行って良いという事になっているので、自分の順番になる時でなければ自由だと言われている。試験を行っている次の者が後ろで待機する、そういう形になり係員が初め!と言われたらターゲットを破壊すべく魔法を繰り出すような形になる。


 一部の在校生がアルバイトだろうか、ターゲットを入れ替え設置する者が待機していた。入れ替え用のターゲットが置かれている場所から待機場所に持って来て、また保管場所に行くのを何組かでぐるぐる回す感じだ。


 そして最初の受験者が貸与品の魔法の補助具を受け取り、待機位置に行く。そして最初の者が準備完了になり、


「それでは受験番号1番始め!」


 掛け声と共にかなりの魔力を込めたファイヤーボールが、大体直径50cm位の玉がターゲットに向かい、当たると一気に燃やし尽くした。


 ガッツポーズで自分の席に戻るが、やはり凄いとか、彼で決まりだなとかざわめきが有った。熱がフォルクスにも届いていた。


 しかし、フォルクスには大した事が無いなとしか思えず、ついシーラにぼやいた。


「なんであんな程度で騒ぐんだ?火属性だけど、俺ならあの倍はでかいのが行けるぞ。あっ!なんかファイヤーボールが使えるようになったぞ!」


 と呟いていたがシーラが


「そりゃ、アンタは規格外だからそうでしょうけど、間違いなく私のより大きいのよ」


 フォルクスはふーんとなった。


 ターゲットを入れ替え次の者が挑むが、一次試験の倍の距離だ。カーラの前後の者の時に魔力弾が届かない者が続いた。カーラは何とかアイスボールが届いたが、コーンと軽い音がするに終わり、傷は付けれず、暫くターゲットの入れ替えはなかっが、30人位続いた。


 カーラはまあ想定内だった。大抵の者はもう駄目だと項垂れながら席に戻る。


 途中で一人シーラ達と同じ首輪をした男装の麗人といった感じの女性が気になった。青い髪の15歳前後の真面目そうな娘が結界師だという。ターゲットの破壊ではなく結界を見て欲しいとなった。講師が魔力弾を何発か撃ち込み、防ぐ事で結界の評価をする事で試験と認める事になったがフォルクスは反応していた


「シーラ」


「分かっているわ。彼女も私達と同じね」


「ああ、そっちの方もだけど、あの能力は凄いな。できれば仲間に欲しいな。あの結界だけどさ、魔力を使うがスキルだぞ。首輪の方はもう一人位なら何とかなるぞ。まあ、学校用のお金を除き、有り金の大半を出さなきゃだがな」


「確かにあの結界は簡単には破れないわね。分かったわ。何とか仲間に引き入れてみるわ。権利はアンタが私達と同じ条件で預かるって事で話すけど良いのね?」


「うん。頼むよ」


 その後の魔法展示ではその青髪の結界師一人が気になる以外は特に気になる者やトラブルも無く、べソンやリズは魔力弾でターゲットを破壊していた。


 シーラは隣に座っていてなんとなく受付のお姉さんに雰囲気の似たエルフの女性とにこやかに話をしていた。


 因みにシーラが使ったのはファイヤーストームだ。


「我が望む。我が敵を葬る力を。魔が前に現れよファイヤーストーム」


 すると炎の渦がターゲットを襲い、あっという間に燃やし尽くした。周りから拍手が湧き上がる。


 そしてフォルクスは風魔法に火魔法と土魔法を組み合わせて魔力をつぎ込んだ。土魔法で生成された石を火魔法で溶かし、風魔法で作った竜巻の中に入っていく。竜巻の中は溶けた石が飛び交い、周りが騒然となる。風魔法で周りに飛ばないようにガードをし、ターゲットを一瞬で破壊して周りを黙らせた。一番驚かせたのは、詠唱もせずただ手をターゲットにかざしただけだったからであり、シーラも驚いていた。


 また、フォルクスは初級の魔法がかなり使えるようになった。フォルクスは自分の能力の1つに一度見た魔法を取得出来る魔法コピーが有るのだと認識し、やっぱり自分はチートだったんだなとニコニコしていた。魔力の多いのは別の話としていた。 


 次に講師が言った内容にフォルクスを含め皆一様に驚き、そして慌てる事になった。


「これにて個人ランクの為の魔法検定及び、魔法展示を終了し、2次試験の説明に入る」

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