第5話 野営地と初夜権
次の話は、学園に入るまでの生活費の全てを出すから一緒にいて貰いたいのと、その間に可能な限り常識や文字を教えて欲しいとお願いした。
また、収納スキル持ちだと話すとあり得ない位に驚かれ、逆に絶対に周りに知られては駄目だと、私達以外には秘密にするようにと念を押された。
ふと見るとリズはべソンにべったりになっており、べソンも満更じゃないようで珍しくにこやかにしていた。そしてシーラがお願いをしてきた
「その、お願いがあるの。一度野営地に行ってテントや荷物を回収したいの」
「分かった。時間は有るし今から行こうか?馬は有るのか?」
「もう売っちゃったわ」
「それなら俺達の馬車で行こうか」
馬房で馬を引き取り、誰もいない所で馬車を出し、馬を繋げていた。御者はべソンとリズがすると言い、商人の主用の乗用馬車で進む。
フォルクスはお金の事は気にするなと、代わりに色々教えて欲しいから、その対価としてだからとプライドを傷付けない配慮をしていた。実際問題彼女達はまだ幼いが、信頼できそうな綺麗な心をしていると感じていた。シーラはツンデレキャラで少し突っかかって来るし、リズはあっけらかんでカーラは神秘的な不思議ちゃんだ。
べソンとリズの御者で野営地に向かったが、町から大して離れてはおらず
15分位で野営地に着いた。4人用のテントが有り、外には鍋等の調理道具が有った。
テントの外でフォルクスは荷物を収納に入れていったが、3人はテントの中の荷物をまとめていた。フォルクスはズタ袋を渡し、服や下着を入れておくように指示をした。クリーンを掛けて収納に入れるからと、畳んで袋に入れさせた。これから洗濯に行くつもりだった為、洗う前の汚れた下着等があると言っていたから配慮したのだ。
中の整理が終わると、テントの中に全員が入り、宿では出来なかった話をする。
まず、学校についてで、チームは4から6人まで。リーダーを決める事に成ったが、自然と皆の視線はフォルクスに集り、シーラを副リーダーにした。また、6人目の人選は基本的にシーラに委ねた。
入学から一週間でチーム登録をするが、普通はもしあぶれていた者がいれば、その者達でチームを組む。もしも組めなかったら退学と厳しい。実力が有っても一匹狼で性格に難があれば弾き出されるのだ。
そして本題に入る
「なあ、さっきは悪かった。頭が真っ白に成ったんだ。初夜権って何だ?俺の思い違いじゃなければ、処女の女性をその意志に反し第三者が抱き、その女性は権利を所有する者に処女を奪われる事になる。そうなんだろう?」
シーラが頷いていたが、その目には涙が浮かんでいた。
「そんな制度があるのか。許せない。事情や背景を教えてくれ」
3人は村から売られたのだと。ある意味奴隷になっていると言い、首にある首輪状の紋様を指し示した。
但し、これのお陰で権利を有する者以外が男性器を女性器に挿れ処女を奪おうとすると、男性器が千切れるので処女性は保たれるそうだ。
初夜権はお金に変えられ、権力者が買う。権力者が初めての女性を辱め、陵辱する為の権利だという。昔は処女の女性と性交をすると呪われるから、聖職者が15歳になった女性と性行し、呪いを解く制度だった。次第に権力者がやりたがり、教会で清めの儀式をし、教会の代理人の権利を買って権力者が初夜権を行使していった。いつの間にか制度はなくなったが、その名残りからお金で権利が売買されている。彼女達は自らの意志に反し生贄とされた。村が大不作になった影響から食料難になり、見目麗しかった3人の初夜権が売られ、兵士に囲まれて逆らえなかった。
また、買い戻しが出来る。あと2日以内ならば、自らが定価で回戻せる、まだ奴隷商に権利が預けられていて、第三者に売られる前だ。当人達への救済措置らしい。
冒険者をして何とかお金を稼ごうとしたが、高過ぎて無理な為に諦めていたと。
彼女達の初夜権がもう時期売られると知った宮廷魔術師が条件を付けてきた。3人いるので、チームとして1位に成り続ければ初夜権の行使を3年待ち、定価での買い戻しに応じる。3年有れば十分可能なのだ。但し、最終的に一位が取れなかったら、純潔を散らされるという。
また、性奴隷として半年を過ごす事になり、自らの可能性に賭け、明日契約する事を決意していたのだ。
カーラの相手は領主の息子、シーラは今回入学する宮廷魔術師の息子、リズはその父親だ。
現実問題として権利は一人当たり金貨1000枚、学園の費用の金貨600枚はそこから払われているので、村には金貨400枚が入っている。せめてもの情けらしい。また、もしもカーラが学園に入れなかったら600枚は村に行くのだそうだ。
一般市民の年収は精々金貨100から120枚と言う。売られて一ヶ月が買い戻しをする期限だった。初夜権はその女性が15歳に成れば行使が出来る。最大の執行猶予は18歳になるまでだ。購入者との同意が必要。約束を破れば首輪が締まり、最終的に死に至る。今回は執行猶予の間にお金を貯め、買い戻すが、普通は定価の3倍になってしまう。
一通り説明を受けたが、べソンは当たり前の話として知っていた。
話を聞いてフォルクスは対処について考える為に質問をした
「じゃあ、俺とべソンが君達にお金をあげて権利を買戻せば良いのではないのか?学校を出てから一年位冒険者として仲間として過ごせば俺はそれで良いぞ」
「それでは駄目なの。貴方達が買った事になるの。首輪の所為で本当に自力で確保したお金だと認識してないと首輪が外れず、フォルクスが私のお金を出してくれても初夜権がフォルクスが買った事になるの」
「じゃあ、俺が買って、権利を使わなかったら良いだけなんじゃないのか?俺はシーラを初夜権では抱きたくないぞ。恋人としてなら抱きたいが、そんな女性の尊厳を踏みにじるのはごめんこうむりたい」
更に首を降る。
「気持ちは有り難いし、嬉しいけど駄目なの。買い戻せなくて期限が来れば貴方は私の処女を奪わなければならないの。そうしないと私が死んじゃうの。それに、奴隷商の立ち会いの元性行為をしなければならないから、嘘も付けないの。それとね、初夜権を買った者は衆人観衆の元でその女性を抱かなければならないし、意図しない病気や怪我で権利を行使できない場合は回復するまで延期はされるけど、行使をしないと権利を買った者も死んでしまうの。そんな理不尽な制度で、今の私達にはどうにもならないの。せめて初夜権で初めてを喪うなら、貴方のように女性を大事にしてくれて、優しくしてくれる人だとまだ良いの。私とカーラがフォルクスで、リズがべソン。もう決めたの。せめてもの救いは明後日一般に売り出される時に、買い付ける者と当人が出向けば、当人が希望する人に売って貰える事かな」
「分かった。俺の認識を確認させてくれ。権利を買ったら行使する義務があるし、行使しなければ女性も男性も死んでしまう。権利の買い戻しは、自らの正当なお金と認識しなければ買い戻せない。貰ったお金だと、お金を渡した者が買った扱いになる。俺とべソンが権利を買い、君達が18歳になるまで権利の行使を延期し、その間にお金を貯めて俺達から買い戻す事が出来る。また、権利を行使する時は奴隷商の立ち会いの元で性行為をする。これで有っているか?」
「ええ、その通りよ。ううう」
「分かった。俺達がその条件で買おう。辛かったな。流石に大丈夫だとは思うが、ただな、万が一18歳に成った時にお金が無かった場合、俺も死にたく無いから流石に抱かざるを得ないよ」
「うん。分かってる。変な奴かと思っていたけど、優しい人で良かった。言っとくけど、ルールを破り私を犯そうとしたら貴方の大事な所が吹き飛ぶんだから。そうなったらね、私達一生生娘のまま過ごし、子をなせないからね」
「じゃあ、買い戻し前等の権利の行使前に死んだらどうなる?」
「女性が死んだらお金がパーになるだけで、男性が死んだら女性は一生生娘のまま過ごす事になるから、死なれると困るからね」
フォルクスは初夜権の詳細を聞かされたのであった。
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