第2話  ツンデレちゃんの仲間

 係員が良いのか?とフォルクスに聞いて来た。


「合否の決定は先着順ではないのでしょ?それならば彼女の方を先にして下さい。僕達は時間には余裕が有りますから譲りますよ」


 べソンがそんな馬鹿なといった表情をし、フォルクスに抗議しようとしたが、フォルクスはべソンが喋ろうとするのを制し、耳元に小声で伝えた。


「先にやって貰えば試験内容が分かるし、俺としては願ったり叶ったりだ。美少女魔法使いのお手並み拝見と行こうぜ」


「まあいい。好みなのか?」


「うん。今流行のツンデレキャラってやつじゃないか!今はまだ中学生だけど、後数年したら間違いなく俺のドストライクになる美女になるとみた」


 べソンはジト目でフォルクスを見て、溜息をついていた。そして中学生って何だ?と疑問に思うも聞かなかった。また何故か周りは小学生の年齢にしか見ていないが、フォルクスは実年齢が何となく分かっていた。13歳だった。


 彼女に続いてフォルクスとべソンも試験会場に案内されたが、少し待つように言われた。周りを見ると丁度授業が始まるような時間、つまり普通の者の活動時間に入ったようで、次から次へと受験申込み者が来ていた。


 ある程度の人数が集まってから数人で一緒に試験をするといわれた。そして7人集まった段階で試験をすると説明され、待っている間に魔法の補助具である杖を渡された。そうして並んだ順番で試験を行う事になったのであった



杖に魔力を込め、魔力弾を放ちなさい、放てと念じれば飛び出すからその時に的の中心をイメージするようにと説明を受る。


 最初はツンデレキャラの彼女で、模範で講師が放つ必要があるか?と聞かれ、不要と言い、他の者はよく見ておくように言われた。バレーボール位の大きさの魔力弾が放たれ、的に当たると的が弾けた。その魔法の強さから周りからどよめきが起こり、凄いといった感じの反応があった。的は簡単には破壊できないからだ。


 続いてべソンだった。べソンはテニスボール大位の魔力弾を放ち、難なく的に当たり終わった。可もなく不可もなくといった感じだ。


 そしてフォルクスである。魔力弾を放出しようとした瞬間、試験管に肩を掴まれ止められた


「もう少し小さいのにしなさい。そうねぇ、最初の女の子と同じ位の強さに抑えて欲しいわね。さもないと壁が壊れてしまいますから。それにしても君は凄い魔力を持っているのね。君なら出来るわよね?」


 そんなふうに言われてしまった。ツンデレちゃんは自分を比較対象とされた為かきょとんとしていた。フォルクスはとりあえず分かりましたと返事をしていた。


 彼女が大体どれ位の魔力を込めていたのかが何となく分かっていたので、フォルクスは彼女のより少し多い魔力程度にして発射した。魔力量に比例して魔力弾の大きさが変わるが、概ね一回り大きいといった感じだった。的が爆裂し、更に大きなどよめきが起こった。


 その後の者に関してはべソンと同じか少し小さい大きさの魔力弾を放っていたが、最後の一人はゴルフボール大のだったが、的に当たる前に消えていった。


「一次試験はこれで終わります。的に当たった者は一次試験合格になります。明日の2次試験に来るように。朝一番で試験開始ですから、遅れないように来なさい」


 受付にて2次試験の案内文をわたされ、魔法学校を後にした。2人はこの後特に予定も無い為、街でも見物するかとなったのだが、学校を後にした途端に先程絡んできた彼女が追ってきた。


「ちょっとあんた達待ちなさいよ」


 声を掛けられた2人が面倒臭そうに振り向くと、ずんずんずんずんとフォルクスの方に近付いて来て、体が当たりそうな所で止まった。背伸びをし、フォルクスに顔を突き出した。頭一つ分背が違うので、見上げる形になる。フォルクスの好みの顔の為、顔には出なかったが、ドキリとした。数センチ前に顔を下げると唇が触れるような至近距離だ。


「ちょっとあんた一体何者なのよ?これから少し私に付き合いなさいよ」


 フォルクスが嫌そうな顔をすると


「ちょっと何よ。折角あんた達のような唐変木を美少女の私が誘っているんだから付き合いなさいよ。それとも何?あんた達は急ぎの用事でもあるの?」


「そういう訳じゃないけどさ」


「そう。なら良いわね。ちょっと早いけどお昼にするわよ」


 フォルクスの手首を掴み、彼女は強引にズンズンと歩き出す。べソンは仕方がないなあというような素振りを見せ、後ろをついて行くのであった。



 暫く進むと、宿屋街に近い所にある飲食店が多く立ち並ぶエリアの一角に来ていた。彼女は迷う事なく少し小洒落たお店に入って行く。


 そのまま強引にテーブルに引っ張って行き、予約席にも関わらず当たり前のように2人の対面側の席に座ると、ガバッとメニューを開け、フォルクス達に突き出した


「その、これは?」


「見て分からないの?メニューよ。何か頼みなさいよ」


 そう言ってくるのでフォルクスもべソンも困っていた。フォルクスは辛うじて文字は読めるが、この文字は英語で言う所の筆記体に相当する書体で書かれていた。その為殆ど読めなかった。べソンに限って言えば文字が全く読めない。


 中々頼もうとしないので彼女は痺れを切らし


「ちょっと何よ。さっきあんたをひっぱたいちゃったから、そ、そのお詫びに奢ってあげるんだから何か頼みなさいよ」


 フォルクスが正直に言う


「そうか。気持ちは有り難いけど、実は俺達このメニューが読めないんだ」


 えっと驚いていたが服を整え落ち着きを取り戻してから


「じゃあ私が適当に頼むけど、あんた達何か苦手なのとかあるの?」


「いや特にないな」


 べソンもないと言う。彼女はベルを鳴らし店員を呼び、飲み物と何かの料理を注文していた。注文が終わったのでフォルクスが話を切り出した


「そういえば自己紹介がまだだったね。君やあんたじゃなんだしね。俺はフォルクス。彼はべソンだ。えっと君の名前は教えて貰えるのかな?」


「私はシーラ・イストーンよ」


 フォルクスが首を傾けていたのではっとなりマイ・シェリーのタイトルが思い浮かんだ。


「イストーン家のシーラよシーラと呼んでも良いわよ」


「分かったよシーラ。俺の事もフォルクスで、彼もべソンで良いよ」


「分かったわ。それともう少ししたら私の友達が来るから、食べるのはそれまで待って」


 2人は頷く。


「それよりもフォルクス、あんた一体何者なのよ?あの試験官はあんたが魔力弾を放つのを一度止めたでしょ?一体どういう事なの?」


「あーあれか。魔力が大き過ぎて、あのまま放つと壁が壊れるから止められたんだ」


「えっ?どういう事よ?」


「多分シーラが放った魔力弾の10倍位の魔力だった筈だよ」


「えっ!嘘!そんなの有り得ない!」


「多分俺は普通の人よりも魔力が強いんだ」


「そ、そんな!私だって10年に一人の才能の持ち主だなんて言われてたのよ。あいつなんか100年よ。あんたはそれより上だっていう事なのよ」


「才能はどうか分からないけど、魔力量はかなり多い筈だよ」


 あいつと言う言葉を聞き逃していたが、シーラが納得しない感じだったので


「じゃあちょっと魔力量を実感してみようか。じゃあシーラ、手を貸してごらん」


 何?と言いつつも手を差し出す。フォルクスはその可憐な手を握る。


「ちょっと、あんた何を勝手に私の手を握っているのよ!」


 抗議をするがフォルクスはお構いなしにシーラの手に少量の魔力を流す。彼女は一瞬ビクッとなり、それをフォルクスは確認し


「シーラの方からも俺の方に少しで良いから魔力を流してくれるかな?」


 フォルクスの真面目な態度に頷き、素直に従いそして魔力を流すと、フォルクスも一瞬ピクッと体が動いた。


「ふむふむ。もういいよ。ありがとう」


「ちょっと何よ?何が分かったのよ?それに今の感覚は何よ?」


「うん。シーラの手が滑らかで心地良い手だという事が分かったかな!」


 フォルクスの冗談を真に受けたシーラがワナワナと震えながら握りしめていた右手の拳を開き、平手打ちをしようと身構えたのであった。


 

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