第120話<急落>

突然空から落ちてきた何かに、塔入り口前に居た全員が驚き状況を確認する。


落ちてきたのは、綺麗に切断された巨大な触手。


立ち止まって居た場所から逸れていたので、運良く怪我した者はいなかった。


互いに顔を見合わし、ほっと一息吐く。


「……姉さん!? 」


其れと同時に一体のコボルトがネズを見て驚き、正気を取り戻す。


其れに呼応する様に他のコボルト達も正気に返ったが、まだネズはヨダレを垂らして俺を見ている。


「!?…… 」


今ネズを見て、姉さんって言わなかったか?


俺と同じ様に、他のコボルト達も驚いた表情のまま固まっていた。


まあ俺の顔を見て固まっていた、さっきの状況に比べれば気にならないが。


「あらっギズ!大きくなったわね」


そうネズは言葉を返しながらも、視線は俺を見たままだ。


ちなみに触手が落下してきた時もだったが。


ダメだこりゃ、根っからの骸骨好きらしい。


久しぶりの再会らしいが、感動の欠片も無い。


そんな事を考えていると、兄弟の再会を押し退けガオンが突入を始める。


まだ驚いたままの一同を気にもせず、ニヤついたガオンの表情は喜びに満ちている。


「ガハハ!そんな事より修行だ、ゴブド今から全員倒すぞ。 どうやら強者が上に居るぞ、ガハハ~!!」


ガオンの大きな笑い声と皆殺し宣言が、空高く響く。


こうしてコボルト達と分かれた俺達五人は、塔内に入り頂上を目指すのだった。


勿論エミリを探す俺とガオンの目的は違うが、まあ問題無いだろう。


怪しい場所なだけに、寧ろありがたい。


やる気満々に大斧を振り回しているから、それっぽい事を言って強敵が居ればガオンに倒してもらおう。



数分後。

そんな俺の狙いとは裏腹に、ガオンのやる気は急落。


今は喋る事すら無く、もうアクビしかしていない。


そう塔内には、一匹も魔物が居ないのだった。

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