第101話<死の行進>

復讐するべき人間達。


足跡や血の跡を追うのに、深夜では限界が在る。


だが兵士の夜営を見付けるのに、それほどの時間は掛からなかった。


其の理由は、テントの見張りが上げた恐怖の言葉で解る事となる。


「お前さっき殺した獣人……」


兵士達を探す道すがら。

襲われ殺されたであろう、獣人の遺体に能力を使ったからだ。


同じように拾った遺体は、人間の兵士も居た。


獣人の抵抗にあって、命を落とした者達。


グレンにとっては、能力で操れる骸骨兵と違いは無い。


だが攻め込まれた人間達は、そんな能力知らないのだから恐怖しかない。


動揺する見張り兵士に、死んだはずの獣人が剣を降り下ろす。


見張り兵士の人数は十人。

ゾロゾロと後に続く骸骨兵に恐怖は伝播していく。


迫ってくる異常の中には、死んだ仲間迄居るのだから当然だった。


次々と混乱のまま、倒れていく見張り兵士達。


次第に、テント内に居る兵士達が戦闘に気付き。


乱戦となるのだが、人間達兵士側の混乱は続いていた。


人数差では有利なのにも拘わらず、戦況は簡単には覆らない。


其の理由は二つ在った。


第一に、グレンが操るゾンビ兵士の殺し方が解らないのだ。


実際には骸骨兵と同様で、壊す系統の攻撃が有効なのだが。


人間達兵士は刺したり斬ったりと、有効では無い戦闘方法で凌いでおり。


死んだはずの者達が動いているのだから、既に人間達の理解を越えていたのだ。


第二に人間達兵士を殺した事に依る、グレンのレベルアップである。


其れにより増えた魔力の全てを使い、殺した兵士をゾンビ兵士に変えていく。


倒し方の解らない敵に、倒れた味方が変わっていく恐怖。


まるで呪いにでも掛かったかの様に。


自分達が全員死ぬ迄、終わりそうにもない地獄絵図。


阿鼻叫喚の戦場となった夜営地が、ゾンビ兵で染まっていく。


「何なんだこいつらは……」


「いったい、どうしたらいいんだ……」


「悪夢か。いや、これは天罰だ……」


次第に小さく消えていく、人間達の声。


いつの間にか、静まり返った夜営地。

立っているのは、二百十のゾンビ兵とグレンだけ。


距離的に考えれば、サラを襲った者は此の中の一部が起こしたのは間違いなく。


復讐は達成されたはずだったが、グレンの悲しみは止まらず。


死の行進は、怒りのまま進み続け。


本陣で夜営していた、人間側の兵士約六千を恐怖で飲み込み。


皆殺しにする事で、戦争を終結させたのだった。


命からがら逃げ延びた人間側兵士の目撃者から、死者を操る魔王が居る。


其の噂が広まる頃には、グレンの住居は廃城となり。


獅獣王国と人間側王国の間に存在する事で、第三勢力として抑止力となっていたのだった。

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