AI刑事《デカ》✨😜✨💕 阿井《アイ》アイ✨💕御愁傷様です❗ アナタが真犯人に決定✨😜✨💕 透明の密室殺人事件を暴け❗❗

オズ研究所 《《#横須賀ストーリー紅白

第1話 御愁傷様です! アナタに、【真犯人は決定】❗❗

「ご愁傷様です!!」

 美少女刑事、阿井アイアイは容疑者の岬 優真の背後から丁寧に頭を下げて微笑んだ。



 まるでステージにアイドルが降臨したみたいだ。

 阿井アイアイは満面のアイドルスマイルを浮かべている。




「な、なんだ……? いきなり、そんなコスチュームでェ! ふざけてるのかァッ!!」

 容疑者の岬 優真も振り返って、ワケもわからず怒鳴りつけた。

 

 隣りにいるオレにも彼の気持ちは痛いほどわかる。

 どう考えても、場所柄をわきまえないチャラチャラとしたド派手な衣裳だ。



 ここは都心から2時間あまりの美浦市にある『美浦霊園』だ。

 ズラッと墓石が並んでいる。


 かすかに潮の香りが漂ってきた。

 この霊園は高台にあるので見下ろすと東京湾が一望できた。


 遥か遠くには、薄っすらと房総半島も見えている。



 青く澄んだ空が広がり、海と山に囲まれた風光明媚な墓地に来ていた。



 本城カレンの眠る墓石の前に、オレと阿井アイアイ、そして容疑者の岬 優真が立っていた。



 容赦なく真夏の陽光が照りつける。ジッとしているだけで汗が滲んでくるほど真夏の日差しは強い。



『ミーン ミーン……』

 辺りを取り囲むようにセミの声が耳をわずらわせる。




 ピンクのツインテールをした阿井アイアイは、およそ霊園には不釣り合いなアイドル風のコスチュームを身にまとっていた。 

 


 鮮やかなショッキングイエローの衣裳が墓地では異様な感じだ。



 ミニスカートから覗いて見えるむき出しの太腿が妖しいほど白く眩しい。


 このままステージでライブパフォーマンスをしても可笑しくない恰好だ。



 さらに阿井アイアイはクルクルとダンスを舞うようにポーズを付け、岬 優真を指差した。




「アナタに!!」

 まるでアイドルの新曲発表のイベントみたいだ。


 どこかのドラマで見た名探偵気取りで容疑者を指を差した。

 



「な……!!」

 岬 優真も眉をひそめ、返す言葉もない。




「さァ、おわかりになったら、アキラ!!

 とっとと彼を逮捕しちゃいなさい」

 後輩の美少女刑事 阿井アイアイはオレに顎で命じた。



「あのなァ! 直観ヤマかんだけで捜査してるのか。逮捕状もないのに逮捕なんか出来るか!!」

 なんで俺が後輩の阿井アイアイに命令されなきゃならないんだ。



「あァら、そんな面倒な事は、アキラに任せたわ!!」

 細かい事はオレに丸投げのようだ。



「おまえなァ! オレはお前のパシリか!!

 だいたいオレは、アイアイおまえの彼氏じゃないんだ。

 言っておくが、オレの方が上司で歳上なんだぞ!!

 呼ぶならちゃんとアキラさんッて呼べよォォ!!」

 オレの名前は大河タイガ アキラ だ。



 今年25歳になる刑事だ。



 現在、オレはワケ有って、AI課サイバー犯罪対策室に島流しにあっていた。


 上級国民のドラ息子を逮捕したのだが、違法捜査だったため、懲戒処分を食ったのだ。


 悪いのは完全に向こうだが、敏腕弁護士がクレームをつけ、挙げ句の果てにはAI課へ左遷されたと言うわけだ。



 そこで面倒をみているのが、通称、AI刑事デカ アイアイだ。



 本名は、阿井アイ愛衣アイと言うジョークみたいな名前だ。


 まだ女子高生の現役アイドルらしい。

 当然、俺よりも十歳近く年下だ。




 オレたちは、元ヤンキーの阿久堂あくどう ガイの不審死を捜査していた。




 阿久堂 ガイは、いわゆる上級国民のドラ息子で数々の悪事を働き怨みを買っていた。

 だが、上級国民親族の権力でその悪事を揉み消してきた経緯がある。



 中でも、ここにいる岬 優真は恋人の本城カレンを自殺に追い込まれ、怨み骨髄と言ったトコロだろう。






 今から遡ること3年前の夏、本城カレンは阿久堂 ガイたちヤンキーらに拉致され暴行を受けた。

 挙げ句の果てに彼女は自殺をしてしまったのだ。



 しかし上級国民のドラ息子の阿久堂は罪に問われる事なくノウノウと暮らしていた。



 恋人を喪った岬優真は上級国民の阿久堂家から示談金を貰い、和解したと思われていた。




 だが、虎視眈々と阿久堂凱カレの殺害のチャンスをうかがっていたようだ。



 カレンが亡くなって3年後、阿久堂 ガイは自宅マンションの部屋で亡くなっていた。

 

 死因は本城カレンが亡くなったのと同じく硫化水素によるものだ。


 その第一発見者のひとりが岬 優真だった。



 当然、第一発見者は重要な容疑者のひとりだ。しかも彼は恋人を自殺に追い込まれ動機も充分ある。

 疑われるのは仕方がない事だろう。



 岬優真は、少し哀しげな面持ちで恋人の眠る本城家の墓石に手を合わせた。

 墓石には、あまり似つかわしくない白いマーガレットが供えてあった。


 おそらく岬優真が供えた花だろう。

 阿井アイアイとオレも隣りで静かに冥福を祈った。




「ここは少し暑いですから……、向こうの木陰の方へ場所を移しましょう」

 アイアイの提案に岬 優真も不満げな顔で見つめた。

「向こう……!!」


「ええ、愛する方にお聞かせするような話しでもないでしょう……」

 優しい笑顔で阿井アイアイは彼を見つめた。


「……!!」堪らず、岬優真は顔を強張らせ視線を逸らした。


 アイアイもすぐに、眉をひそめ哀しそうに視線を墓石に向けた。



「ふぅ……、わかったよ」

 岬優真も渋々、納得したように大きくため息をついて頷いた。



 墓石にそなえられたマーガレットが、ひと際目立っている。






 ☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚






 駐車場近くの木陰へ入ると多少は涼しい。

 相変わらず、周辺からセミの声が響いてきた。



 オレたちはベンチへ座って岬優真から事情聴取をした。





「あのお花はアナタが御供おそなえしたお花ですね」

 まるで美少女刑事、阿井アイアイは女子トークでもするような感じだ。



「え……!! 花?」

 岬優真は不思議そうな顔で聞き返した。


「マーガレットですよ……」

「あァ……、そうだけど」

 思い出したように頷いた。


「お墓にそなえるには、少し派手なお花ですね」


「ン……、まぁな」

 そっぽを向いて気のない返事をした。



「彼女の好きだったお花のようですね」

 スマホで本城カレンのフェイスノートを見せた。

 彼女がマーガレットの花束を抱いた姿が映っていた。



「……」かすかに岬優真は頷いたモノのあまりオレたちと視線を合わせない。

 かすかに見える東京湾を眺めているみたいだ。



「ここに『好きな彼氏からマーガレットを貰って嬉しいッ……꒰⑅ᵕ༚ᵕ꒱˖♡』と書いてあります」


「そうか……」つまらなそうに応えた。



「好きな彼氏と言うのは……。もちろん、岬 優真アナタですね!!」


「ンうゥ……、そうだろうな」



「阿久堂たちは、アナタのアカウントを使い本城カレンさんをラ○ンで呼び出し拉致監禁し暴行を働いた」


「……」


「でも阿久堂には敏腕弁護士がついていて、結局事件は不起訴になり、有耶無耶になってしまった」


「忘れたな……。そんなコトは」


「そうでしょうか。その結果、カレンさんは硫化水素を使って自ら命を絶ってしまった」



「混ぜるな。危険か……」オレは小さく呟いた。



「チッ……」岬優真はかすかに舌打ちをし、視線を逸らした。



「当初、怒り狂っていたあなたは阿久堂の親族から多額の慰謝料を貰い示談に応じた」



「……」



「表向きは、和解したと見せかけ、阿久堂の命を狙っていたのですね」


「何を言っているんだ。それは直観だろう。

 証拠もなしに」

 彼はアイアイを睨みつけた。


「やはり3年経っても阿久堂カレを許せなかったのですか」


「え……、知らないね。

 阿久堂アイツは自殺したンだろう」



「そうですか。出来れば自首して貰いたいのですが」


「なんでオレが……」

 また彼女を睨んだ。



「だって、アナタが阿久堂を殺害したのでしょ」

「!!」一層、彼の眼差しが険しくなった。



「おい、そっちの元ヤン刑事さんよ。

 しっかり、このアイドルの面倒をみてやれよ」

 岬優真はオレを睨みつけ顎で差し示した。



「わかってますよ。お嬢ちゃんコイツの直観に、これ以上付き合ってられるか!!

 とっとと帰るぞ。わざわざ、こんな田舎トコまで連れてきやがって」

 オレは華奢な阿井アイアイの腕を引っ張った。



 都心からここまで車で2時間近く掛かった。ドライブにしても、かなりの遠出だ。



「いいえ……、残念ながら!!」

 阿井アイアイはオレの手を振り払った。



「アナタに!!」

 またダンスを舞うように岬優真を指差した。派手なパフォーマンスだ。

 


「チッ、どうやってだよ。阿久堂アイツは密室の中、自殺して発見されたんだろ」

 まだようだ。


「フッフフ……、違いますよ。カレの部屋は密室でも、なんでもありません」


「な……」

 容疑者は怪訝な顔で阿井アイアイを睨んだ。



阿井アイアイ!! あの部屋は管理人もサッシの開かない事を確かめたんだぞ」

 オレも何度も現場の部屋へ訪れ確認した。



「ええ、ですが、あの部屋は厳密に言えば、!!」



……?

 なんだよッ!! それは!! じゃァ、なんでサッシは開かなかったんだ!!」

 オレは眉をひそめて聞き返した。 



「ンうゥ……、そうですね。あのサッシには単にが掛かっていただけなんです!!」



だってェ……!!

 なんだッ!! それは」

 すぐに容疑者が反論した。



「もう一度、状況を詳しく説明しましょう。

 アナタは阿久堂から呼び出され部屋へ行ったが、何度、インターフォンを鳴らしても、ドアを叩いても反応がなかった。

 そうですね」



「あァ」岬優真は面倒くさそうに頷いた。



「そこで不審に思いドアノブを開けると、かすかに開いたモノの室内からシリンダーチェーンが施錠されていた」


「あァ……、そうだよ」

 岬 優真は仏頂面だ。



「そこで管理人に頼み、隣室の住人のベランダから回り込んで、サッシ越しに部屋を覗き込んだ」

「あァ」また彼が頷いた。


「すると室内に阿久堂が倒れていた」



「そうだ。そのことは管理人も見ている」



「ええ、サッシを開けようとしたが開かなかった。管理人も、ビクともしなかったと証言していますね」


「そうだ。中から錠が掛かっていたんだろ」

 


「ええ、そうですね。、サッシが開かないと掛かっていると考えてしまいます」

 ヤケに阿井アイアイは『普通』と言う言葉を強調した。


「……」岬優真は眉をひそめ聞いている。


「でもサッシにが掛かっていたとしたら?!」


「透明のカギ……?」疑問に思ったオレも聞き返した。



「ぬゥ、なんだ。さっきから、そのッて言うのは!!」

 少しキレ気味に岬優真が聞き返した。



岬優真アナタは、わざわざ無関係な管理人にサッシが開けさせ、カギが掛かっている事を証明させたンです」



「な……ッ!!」



「その後、アナタはサッシを破るためかがみ込んでレンガを掴んだ。

 その時、同時にサッシにクサビとして挟んであった『ガラスの破片』を取り除いたンですよ!!」


「ぬうゥ……!!」


「そ、そうか。ガラスの破片をクサビに。

 それがなのか」

 思わずオレも声を上げた。


 やっと彼女アイアイの言っていた『透明なカギ』の正体が解った。



「ええェ、その後、サッシをレンガで叩き割りそこから手を突っ込んでサッシの内錠カギを開ける振りをしたんです……」



「なるほど。もともとサッシには内錠カギは掛かっていなかった。

 カギの掛かっている振りをしていただけなのか」


「そうです。そしてクサビとして使ったカギはサッシを叩き割った破片にまぎれてわからなくしたんです」



「……」



「木の葉を隠すなら森へ……。

 ガラスの破片を隠すなら、叩き割った破片の中へ。

 これが密室トリックのカラクリです。

 いかがですか。岬 優真さん!!」


「くうゥ……」

 彼は観念したように無言で顔を伏せた。




「アナタに、!!」

 再度、真正面から阿井アイアイは指差した。



「ッたく、直観カンだけで……」

 オレは、ひとりごとのように小さく呟いた。



「スゥ……」岬 優真は大きく深呼吸をし、青く澄んだ空を見上げた。


 セミの声がヤケに煩わしい。


「オレなんかと付き合わなければ、阿久堂たちに監禁されることも……。

 死ぬこともなかったのに」

 岬優真は悔しそうに唇を噛んだ。




「本城カレンさんの好きだったマーガレットの花言葉をご存知ですか……」

 アイアイは呟くように訊いた。


「え……」



だそうです!!」



「フフ、そうか」

 また岬優真は青く澄んだ空を見上げた。

 彼の目には、うっすらと涙が滲んでいた。



「行きましょうか!!」

 阿井アイアイは手を差し伸べ岬優真を促した。





「真実の愛か……」岬優真カレも小さく呟いた。





 本城カレンの墓石に供えられた白いマーガレットがそよ風に揺れていた。











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