第35話真〜琴くん?遊びましょ!からの、ごめん

さて、俺が部屋に入った瞬間…奴が目の前にいた。


「何してんだ、清水…」


そう、「俺は寝る」とか言って先に部屋に戻っていた清水だ。


「ふふふ…さぁ!楽しい楽しい女子会ならぬ男子会やろうぜ!」


「お前な〜…学生ノリ好きだなぁ…」


「だってよ!楽しいじゃん!」


「まぁ、分からんでもないが…」


「まぁまぁ、まずはお座りくださいよ。怪我人なんだから」


「…なぜ知ってる」


「ふっ…俺とお前、何年の付き合いだと思ってんだよ?」


「1年だよ!なんで昔馴染みみたいな感じで話すかなぁ…!」


「ははっ!元気が良いじゃないか!」


「誰のせいだよ!…ったく」


そしてお互いのベットに座り、男子会が始まった。


「さてさて、真琴よ」


「なんだい?清水よ」


「お前って…ぶっちゃけ水瀬さんの事好きなの?」


清水…お前もか!


「はぁ…なんでそうなるかな〜」


と、俺はため息まじりに呟く。


「え?違うの?じゃあ、陽菜ちゃん狙い?」


「俺はチャラ男か?そんな手当たり次第で狙わねーよ」


「えぇ…じゃあ、まさか…俺!?」


「なんでだよ!どうしてそうなった!?」


「だってよ〜、あんなに可愛い2人なのにどっちも違うとか…な?そう思うのが普通だろ?」


「それも違うわ!…はぁ、色々あるんだよ。俺にもさ…」


「ほーん。じゃ、聞かせろよ、その色々をさ」


「…あまり楽しくないぞ?」


「いいよ、それ含めての男子会だ」


「はぁ…分かったよ。あれは高校生の時だった…」


高校生の頃、俺は付き合っていた彼女が居た。

名前は園崎香織そのざきかおり。彼女とは幼い頃からの付き合いでまぁ、幼なじみって奴だった。

歳を重ねる毎にお互いが段々と好きになって付き合ったのだ。

最初の頃はお互いぎこちなかったが…まぁ、そのうち慣れ始めて中々に楽しい時間を過ごせていたと思う。


けど…それはあまり長くは続かなかった。

途中からおかしいとは思ってはいた。

だって、デートに誘っても予定が合わずに断られ始めたのだ。

それでも俺は香織が好きだったから何とか時間を合わせてデートしていたのだが…事件は起こった。


ある日、香織のお母さんから連絡が来て少し遠くに出かけるから香織のことを頼まれたのだ。

だから、俺は香織が好きだって言っていた映画をお店で借りて一緒に見ようと思って香織の家に向かうと…


『待ってたよ!虎太郎くん!親いないから入って入って!』


『おう、邪魔するぜ』


俺はその光景を眺めていた。眺める事しか出来なかった。だって、嘘だと思ったから。


俺はスマホを取り出し香織にメールを送った。


『これから行ってもいい?』


と。でも、返事は…


『無理、私は大丈夫だから。あ、親には話し合わせて欲しいな!』


俺は何が何だか分からず、ただ一言、『分かった』と返事を送り自分の家に帰った。


それから1週間程が経ち、ある噂が学校に流れた。

2組の花園さんと三組の石岡虎太郎が付き合い始めた…と。

しかも、石岡虎太郎はかなりの不良らしく悪い噂が絶えないのだ。


俺は香織が脅されてるのかと思い石岡くんを呼び出したが…そこには香織も居た。

俺は香織に必死に『脅されてるのか』と尋ねたが…結果は俺が石岡くんにボコボコにされ、挙句の果てには…


『私、やっぱり真琴の事好きじゃないわ』


と、吐き捨てるように香織に言われた。


その時の痛みは今でも忘れられない。

体の痛みより、心の痛みの方が酷く感じられるあの痛みは…。


その時からだろうか…俺が人のことを苗字でしか呼ばなくなったのは…

怖いのだ、またあんな思いを、人に裏切れる思いをするのは…


俺は語り終わり清水の方を向いた。


「って、つまんない話だったんだけど…何してるんだ、清水よ」


清水はどっからか持ってきたツルハシと安全第一と書かれたヘルメットを装備していた。


「何って、そのアバズレと石岡って言うヤンキーをシバいてやろうと思って」


「やめい!気持ちは分かるけどそれは犯罪だぞ!」


「へへっ!大丈夫さ、僕最強だから」


そういい清水は領域展開しそうな勢いで扉に向かっていった。


「大丈夫だから!俺、平気!清水、辞める!動くな!!」


「はーなーせーよー!犯罪はバレなきゃ犯罪じゃ無いんだぞ!」


「いや、犯罪は犯罪だから!日本の警察舐めんなよ!」


5分程清水と言い合い何とか犯罪を未然に防いだ。


「はぁ…ま、話は分かったよ」


「ふぅ…それは何よりだ」


「なるほどな…そりゃ怖くもなるよな。すまん、真琴」


「いいんだよ、昔のことさ。それに…それを今でも引きずってる俺も俺だからさ…」


俺がそう言うと清水はベットに倒れ込んだ。


「はぁ〜!胸糞悪いな!こうなったら呑むしかねぇな!付き合え!真琴!」


そういいこれまたどったからか取り出した酒瓶を俺に見せてきた。


「ははっ…こりゃ悪酔いしそうだな」


「違いねぇな!盛大に悪酔いしてやらァ!」


「だな!酒の貯蔵は充分か社畜王!」


「ふっ…思い上がったな社畜!」


そう言い俺と清水は酒を飲み交わした。


清水は何も聞かずただただ俺に酒を飲ませてきた。

それがとても嬉しく…清水なりの優しさなのだろう。


そして何故だろうか…この時呑んだ酒は気の所為かもしれないが、普段より美味しく感じられた。

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