獣人街防衛戦
元勇者と獣人街防衛戦 上
手を伸ばして枕元の時計を確認。早朝すぎか
花白はーー
「おは…よぅ…」
「おはよう、早起きだな」
さすがに昨日の夜一人にさせてしまったから、俺は起きて鍛練するのにまだ寝てろとは言いづらいしな……ふむ
「顔洗って宿の内庭で軽く鍛練するんだが、花白はどうーー」
「一緒に…する…!」
食いぎみに返事をして眠そうな目を擦って起き上がった白髪狐を抱き上げ洗面台へとつれていき二人で顔を洗い、寝間着から動きやすい服装へと着替えさせて内庭へ行く。
準備体操を軽くして杖は持たずに軽く右手を振って試製していた結界を展開しては打ち消し属性を変えて何回も繰り返す。
花白は、膨大な魔力を慣らすために少しずつ中級魔法から初級魔法へと全属性できるようにするのが今のところの目標。
強い魔法は魔力に物を言わせて発動できるようだが、慣れない魔法の発動は身を滅ぼす。そう説明したら分かってくれた。
あとは最後の魔法だ。
「花白。補助するからやってみ」
「はいっ!いきますっ!!」
聖女の長杖を両手で持ち前傾姿勢で石畳に杖の石突をつく。
少しずつ氷と雷、風の繊細な魔法をゆっくりと紡いでいくのを花白の肩に手をおき静謐性を高める補助をして…発動!
この魔法は簡単に言えば広範囲を探知するための魔法。今回は獣人街全域の建物を魔法で浮かび上がらせて、動いているものを把握することができるというものだ。
「さすがに朝早すぎて鳥さんぐらいしかいな………へ?」
「っ、おいおいおいっ!?」
花白の手から杖を借り横凪ぎに振って手遅れになる前に魔法生物を生み出し全速力で街の人たちに避難誘導へ行かせる。
「なんで王族の軍隊が攻め込んできてんだよっ!!」
炎魔法で街を燃やそうとしてるのを見て敵意ーーいや、殺意があると判断。
花白の手を引きできるだけ多くの獣人を助けるため飛翔魔法を展開しようとしーー気配を感じて中断。光属性応用式の光線を放つ
(ちっ、魔法障壁で防いだか)
禍々しい羽根で浮いている外套をきた魔法士が四人と後ろ、屋根の上にもいるってことは囲まれたか。ここで花白を逃がすのは悪手だな
「お前が獣人街を管理していた老人をそそのかした自称英雄か!」
「んーー?ちょっとなにいってるかわかんないっすね、退いてくれ。獣人達を助けにーーおい、花白っ!」
「こんな私に優しくしてくれた人たちを悪く言うなっ!!『月氷静狐』ー!!」
全力で放った氷属性高等魔法の狐氷でできた翼を大きく広げ、大咆哮し魔法士達を呑み込んでいく。殺してはいない気絶させてから興味を失ったようにぺっ、と狐が魔法士達を吐き出す。
(お前なぁ……)
少しずつ成長していく教え子に呆れながらも狼の魔法生物を片手で作りながら手紙を書く。
「前には女、子供見境なく獣人を殺そうとする狂信者ばかりだ。そんな奴らを見て尻尾巻いて逃げようとは思えんしな…来てくれると、いいんだが。」
『さすがに驚いているであろう有栖へ
突然すまない。獣人街に王族の軍隊が攻めて来てるから手短に行く。
魔力が完全に回復しているなら、こっちの助太刀にこれないか?せめてお前の剣ーー「白鏡片鱗」をこの狼に貸して持ってきて欲しい。いくら元英雄だとしても片翼の俺だけじゃ全員を守れそうにないんだ。
待っている。
弄月 彩支』
乱暴な字で書かれた手紙を狼の首輪に差して有栖の魔力を覚えさせ走らせる。これであとは戦うだけだ。
「先生。」
「花白、ここは戦場だ。子供だろうが女だろうが、獣人というだけで攻撃魔法を放たれる。今すぐ逃げろと俺は大切な教え子であるお前に言いたくてたまらない」
「その気持ちは痛いほど、分かります。先生は優しいですから······でも私だって、先生の足を引っ張らないぐらいのことはしてみせます。お役に立ちたいです!」
「……ったく。信じるからな」
「っ…!はいっ!!」
嬉しそうに動く獣耳を軽く撫でて前を見る。
「二人とも無事で、が最優先だ。無理だと思ったら全力で逃げろ。それだけは絶対に約束だ、いいな?」
「はい!」
「いい返事だ。」
右手に愛剣「虹鏡片鱗」を持ち魔法を紡ぐ。義妹がくるのを待って…ただ全力で、挑むだけだ。
目標は敵、味方共に死人ゼロで敵を全滅させること。
遠くから送り出した狼の咆哮が聞こえた気がした
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