第18話:歌聖女
(ヘルメス、この責任を取ってくれるのでしょうね)
(当然だよ、我が愛しの聖女よ。
ジェイムズ王国の守護神として……)
(黙りなさい!
ジェイムズ王国の事などもう私には関係ないわ。
私と、私の大切な家族、それに民に対する責任を取りなさい。
私はそう言っているのよ。
へ、ル、メ、ス!)
(……わかった、分かったからもうそんなに怒らないでくれよ。
加護を与えた聖女に本気で憎まれるのは辛過ぎるよ。
わかったよ、盗人や博徒に聖女だと伝えたのが嫌なら、他の者達にも聖女だと伝えて印象をよくするよ)
(わたしは、私が聖女だという事を広めるなと言っているのよ!)
(申し訳ないけれど、それはもう無理だよ。
犯罪者ギルドを中心に、ジェイムズ王国中に広まっているよ。
何といっても僕は能弁と雄弁と計略の神でもあるからね)
(殺す)
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
謝るから、なかった事にはできないけれど、イメージだけでも変えるから)
(どうせこれもヘルメスが最初から考えていた計略なんでしょ。
もういいからさっさと全部話しなさい)
(我は音楽の楽器の神でもあるから、ここで歌を披露しようじゃないか。
大陸中の吟遊詩人や音楽家を集めて、大陸最大の音楽会を開くんだ。
そして吟遊詩人達にセシリアが歌の聖女であることを大陸中に広めさせれば、盗みや博打の聖女であることを忘れさせられるよ。
それにキャッスル王国もジェイムズ王国も、吟遊詩人が大陸中で褒め称えたブートル副伯家には手出しができなくなる。
そして竪琴や笛なんかを作る職人を集めれば、領地がとても栄えるよ)
(それがヘルメスが最初から企んでいた事なのね。
本当にろくな事を考えないわね)
(ヘッヘッヘっへ、そんなに褒めるなよ)
(褒めてないわよ、この詐欺師!
でも、やるからには徹底的にやってもらうわよ。
私を歌の聖女にするだけでは許さないからね。
母上の事も慈母聖女だと大陸中に広めなさい)
(わかったよ、それくらいの事は愛おしい我が聖女のためにやってやるよ)
(それだけでは駄目よ。
犯罪者ギルドの連中の夢にでて洗脳したと言ったでしょ。
大陸中の人間の夢に出て広めなさい)
(むり、むり、むり、むり、絶対に無理。
信者でない者の夢にでるには途方もない神通力が必要になるんだ。
大陸中の人間の夢に出るなんて絶対に無理)
(でも、大陸中の信者の夢のかなには出られるのよね。
だって、大陸中の吟遊詩人や音楽家を集めると言っていたものね。
ヘルメス、貴男は何の神だったかしら、嘘もごまかしもなく話しなさい。
いまここで詐術や計略で騙そうとしたら、他の神に聖女にしてくださいと祈るけど、それでいいのね、ヘルメス)
(……わかったよ、我は能弁、境界、体育、発明、策略、夢、眠り、音楽、楽器、幸運、富、計略、牧畜、盗人、賭博、商人、交易、交通、道路、市場、競技の神だよ)
(だったらその全てに係わる人に夢を見せられるのよね)
(……はい)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます