第4話:逃避行の始まり
父上と母上はそれぞれの家臣と使用人にどうしたいかを確認されました。
父上と母上の事ですから何の保証もなく家臣使用人を放り出したりはされません。
次の主人や仕事が見つかるまで暮らしていけるくらいのお金は渡されます。
信頼できる親しい貴族や貴族夫人に紹介状を書くとも言われました。
ですが誰一人辞めるという者はいませんでした。
全員が家族と一緒にキャッスル王国に着いてくるというのです。
「これは困りましたわね。
慕ってくれる者を放り出すわけにはいきませんが、これほど多いとさすがに全員連れて行くのは難しいのではありませんか、セシリア」
慈悲深い母上が家臣使用人と私の板挟みになってしまわれました。
私に経済的負担をかけたくないとお考えなのでしょうね。
「大丈夫でございます、母上。
私が立ち上げました商会が大成功しております。
王都の家臣使用人だけでなく、希望するなら領地の家臣も連れていけます」
「本当なのセシリア、無理はしていない」
心から私の事を心配してくださる母上。
こんなに大きくなって恥ずかしいのですが、思わず胸に飛び込んでしまいます。
前世で母親に甘えられなかった分、つい甘えてしまいます。
「大丈夫ですわ、母上、母上にご心配をかけるような事は絶対にしません。
百人でも千人でも商会で雇うことができます」
つい母上の胸に頬ずりしながら返事してしまいました。
「いつもありがとう、セシリア。
セシリアのお陰で民に無理な税をかけないですむようになったよ。
セシリアが助けてくれるまでは、兄上が無理な借財を申し込んで来るたびに、民に負担をかけてしまっていたからね」
父上が大きな手で私の頭を優しく撫でてくれます。
母上の胸に抱かれながら、父上に頭を撫でてもらえる。
これほどの幸せが他にあるでしょうか。
こんな時に不愉快な事を考えたくはないですが、伯父の借金問題がありましたね。
前世では家族に縁のなかった私ですが、よく聞く金の貸し借り話はありました。
子供や兄弟姉妹に不出来なモノがいると、度々お金の無心をされてしまうと。
貸してくれと言いながら、絶対に返す気はないのだと。
そう言えば友人の場合も借金問題があると聞いた事があります。
家族や友人にお金を貸す場合は、返ってこない覚悟で渡すべきだと。
伯父に行くお金はそのつもりでしたから、すっかり忘れていました。
「大丈夫でございますよ、父上、母上。
ウィルブラハム公爵家に貸したお金は最初から返ってこない覚悟はしていました。
それにあの程度のお金で私の商会はビクとも致しません。
それよりも買えるだけ借りれるだけの馬車と馬を集めましょう。
屋敷にいる家臣使用人を家族も一緒に連れて行くとなると、家にある馬や馬車、荷車だけではとても足りません」
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