第23話
「野郎!」
「待て、デッド!」
俺は肩に手を載せ、デッドを引き留めた。
「俺たちが攻撃態勢に入った瞬間、奴が結界を解除したらどうなる? あの身体はキリアのものだ。キリアを殺すことになっちまう!」
「ご明察、マスター」
『シャドウ』に乗っ取られたキリアに『マスター』呼ばわりされるのは不快極まりなかったが、事実なのだから仕方がない。
「まあ、上手いこと考えてみなよ。どうすれば『僕』からキリアの身体と『魂』を分離できるか。それじゃ」
軽く手を掲げると、キリアの姿は黒煙に呑まれた。次いで、黒い粉塵をまき散らしながら暴風が巻き起こる。
俺はリンエルを胸に抱え、しゃがみ込んでこれをやり過ごした。デッドも同様だ。
顔を上げた時には、キリアの姿は、粉塵諸共消え去っていた。
「これがワープポインターの力、か」
「おい、なにぼさっとしてんだ、おっさん! あの野郎、先生のいた泉に移動したに違いねえ! あたいらも急いで向かわねえと!」
「分かってる。だが、あれだけ隙が大きければ、実際戦闘になった時にワープを使うのは難しそうだな」
「あん? あたいにも分かるように言ってくれ!」
「となると、どうやってキリアの身体から、ワープポインターを引き剥がすか。あのキリアが言っていた通りのことが問題になるわけだ」
「だーかーらー、もっとハッキリ喋れよ! 俺には何が何だか……」
デッドと反対に、俺の呟きを聞いてくれていたのはリンエルだった。
「狙いははっきりしたね、ドン」
「ああ。リンエル、何かヒントはないか? どうしてキリアが心の隙に付け込まれる羽目になったのか、それを知りたい。それさえ取り除けば、キリアを引き戻すヒントが得られるかも」
「そう、だね……」
「ん? リンエル?」
突然歯切れの悪くなったリンエルに、俺は顔を顰めて見せた。
「そこから話すとなると、あたしも『精霊の里』にはもういられなくなっちゃうな。いや、でも今は世界の危機だもんね。うん、話すよ」
それはキリアの出生にまつわる、とある悲劇の物語だった。
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