エロゲのモブには荷が重い ~覚醒したスキルがオレにエロゲの美少女を救わせようとするけど、原作知識と固有スキルでみんなの笑顔を守りつつ自由に生きようと思います~
第34話 第1回、ちきちきメアリと帰るのはオレだ!じゃんけん大会
第34話 第1回、ちきちきメアリと帰るのはオレだ!じゃんけん大会
『ぱんどら☆ばーすと』における西洋陣営『凱旋門』の主要人物の話だ。
銀糸でできた艶やかな髪。
海を飲み込んだような蒼玉の瞳。
自身が傀儡使いでありながら、その人並外れた容姿とゴシックな衣装からどこか近寄りがたい雰囲気をまとうはずの彼女は。
「想矢さん。一緒に帰りませんか?」
想像以上に、オレになついてしまった。
クラスの全員が目に鮮血をほとばしらせてオレを睨んでいる。
「あ、えと」
「申し訳ございません。ご迷惑でしたか?」
「いやいや! そういうわけじゃないんですよ? ただ、他にもメアリ……牌羽さんと一緒に帰りたいって人がいるみたいだし」
メアリが悲しそうな顔をして、またクラス中の殺気が濃度を増した。
くそが。
断っても受け入れても非難の目を向けられるって、どうしろっていうんだよ!
頭を悩ませていると、教室の扉がガラガラと引かれた。
ひょっこりと顔をのぞかせたのは、天真爛漫な笑顔が似合う笹島ちなつ。
「想矢ー! 一緒に帰ろー! ……想矢がメリーさんを泣かせてる!?」
「ばっ、ち、違うぞ!?」
「そ、そうですわ。想矢さんは悪くないのです。悪いのは、わたくしのわがままですわ」
「……ねえ想矢。どうしたの?」
え、それオレに聞くの?
オレの口から現状を説明するの?
メアリに一緒に帰ろうと誘われたけど、メアリと一緒に帰りたい人がほかにもいるから断ろうとしていたってオレが言うの?
「ははーん。さてはメリーさんと誰が一緒に帰るかでもめてたんだね?」
「めっちゃ洞察鋭いな」
「ふっふっふ。笹島家秘伝の観察眼なのです」
そんなの初めて聞いたけど。
『岩戸』ルート以外で神藤ちなつのイベント進めたらその辺も分かるのかな?
「ね! わたし、いい考えがあるよ!」
「ちなつに? いい考え?」
「どうして聞き直したのかな!? そんなにおかしかった!?」
ごめん。
それで、考えってのは?
「じゃんけんで決めよう!!」
*
第1回、ちきちき。
メアリと帰るのはオレだ!
じゃんけん大会~。
「実況はわたし笹島ちなつ。解説はメリーさんにお願いしております。メリーさん! ずばり本日の見どころは?」
「え? え?」
なぞにノリノリのちなつと、その勢いについていけずに困惑しているメアリ。
(ゲームのちなつは神藤姓を名乗ってたし、ここまではっちゃけてなかったから、こういう組み合わせって新鮮だな)
ゲームの世界では見れない一面。
オレが救いたいとあがいて、つかんだ世界。
その現在に、ちょっぴり感傷に浸る。
「そ、そうですわね。やっぱり、想矢さんに優勝していただきたいと思います」
「なるほど! さぁただいまよりじゃんけん大会予選が始まります。予選ルールは簡単。わたしの『じゃんけんぽん』の掛け声に合わせて、メリーさんと参加者の皆さんには一斉にじゃんけんをしていただきます。そして、メリーさんと同じ手を出せた人だけが生き残りです!」
長い。
要するにメアリとあいこになれってことな。
ぶっちゃけ、敗退してもいいんだけど。
ちらとクラスを見渡すと、祈るように指を組んでいるメアリと目が合った。
……そんな不安な顔をさせたいわけじゃないのに。
「楪灰ー! お前の悪行もここまでだ! 参加者20名! お前が最後に残る確率は5パーセント! 数の力を思い知れ!」
「あー、いるよな。確率論持ち出して『俺頭いい』ってやりたがるやつ。悪いけど、その理屈は間違ってるぞ」
「ぷっ、楪灰! お前頭悪いのか! 20人の頂点は20分の1だろ!」
「確率ってのはな、同様に確からしいときだけ有効なんだよ」
って、バーストさんが言ってた。
要するにだ。
(……【ラプラス】!!)
知覚領域を拡張し、脳の処理速度を加速させ、この場のすべての情報を取得する。
それは例えば、メアリの筋肉の収縮さえ含まれる。
それさえ見切れば。
「じゃん、けん、ぽん!!」
メアリが出した手はグー。
オレが出した手も、当然グー。
「はぁい! メリーさんはグーを出しました! グー以外を出した方はまたの機会に挑戦してくださいね」
「ぐっ、楪灰ぁ!! これで終わりだと思うなよ! 第二第三の俺が必ずお前をつぶす!!」
「悪いけど、オレ、じゃんけんで負けないから」
【ラプラス】はすべてを見抜いている。
神は賽を振らない。
現在のすべての情報を正確に得られれば、そこから導き出される結論は未来予知の領域に到達する。
「じゃん、けん、ぽん!!」
メアリが出した手はパー。
オレが出した手もパー。
「おおおお! さっすが想矢! メリーさん。期待通りここまで勝ち残っておりますが、なにか感想は?」
「えと、えと、このまま最後まで勝ち抜いていただきたいですわ」
まかせろ。
「さあ、残り3人ということで、ここで決勝戦といたしましょう!! 勝ち残った3名の選手はどうぞ前に!」
最初は20人いたのに、たった2回で3人になったのか。
やれやれ、女心のわかってない奴らだぜ。
「決勝戦! じゃん、けん、ぽん!!」
ちなつの掛け声で、オレを含めた三人が手を出す。
一人はチョキ、もう一人もチョキ。
――It's Time To Take a Top!!
「ふっ、オレの、勝ちだぁ!!」
そのまま拳を天にかざす。
勝利のガッツポーズ。
「イ、イカサマだぁ!!」
「あ? どんなイカサマだよ」
イカサマだけど。
「そ、それはわかんないけど」
「負け犬の遠吠えってのは恥ずかしいぞ?」
「くっ、覚えてろ!!」
お前らは1回ごとに、3分の1でしか勝ち残れなかった。
オレは100パーセント勝ち残れた。
その結果の勝利は必然であり、決して5パーセントの細い勝ち筋ではない。
「じゃ、帰ろっか」
「うん!」
「は、はいっ! ぜひ!」
うーん。
どうしてオレ、こんな美少女二人も引き連れてるんだっけ。
ま、いっか。
なんか清々しいし。
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