第35話 コメツキチョウ


「はぁー」


 まさか、まだ薬草採取をしないといけないなんてな。受付さんがあんなに大胆だとは思わなかったぜ。それに、コメツキチョウチョウってなんだよ全く。あれ、コメツキチョウだっけ? まあどっちでもいいか。


 ……ってか、コメツキバッタだろ。

 

 まあ百歩譲って、薬草の採取はもうお手のものだからいいんだが、蝶々の採取ってどうするんだ? 俺の前世のゲームの知識だと、甘そうな蜜だったり、虫取り網が必要だと思うんだが、この世界の人たちは素手で行くのだろうか?


 ん、ってか今思ったのだが、昆虫採取ってそこら辺の花食ってるガキでもするよな? なのに依頼として出されてるってことは相当貴重な虫ってことか?


 確かに、地球でも高価な虫が存在してたような気がするが、そんな激レア蝶々を虫取り素人の俺がやれっていうのか? 勘弁して欲しいもんだな。


 俺は前世では家に虫が出たら嫌すぎて、かといって触れないから殺虫スプレーを部屋中に撒き散らかして気分悪くなったような奴だぞ? 参ったもんだな。


「……」


 うん、文句ばっかり言ってても仕方ないよな。ちょっと専属契約とか色々あって木が動転してたみたいだ。まず、今できることから始めてみよう。そしたら、薬草採取からだな。


 ❇︎


 はい、ヨユー。マジで鑑定サンがいればチョーヨユーなんですケド。


 ってか、良質な薬草を俺が納品してるせいで俺が採取が上手な人扱いされてるよな、絶対。たまにはあえて品質が悪そうな薬草も入れておくか。


 これで薬草採取はクリアだな。三つもあったのに、蝶々採取の一つよりも早く終わるってやっぱり俺は薬草採取専属冒険者になった方がいいかもしれない。まあ、最悪その選択肢も見据えておこう。


 そして次はいよいよ蝶々か。どんな見た目かも分からないし、道具も揃ってないからな。まずは情報と道具の収集だな。俺の宿代が消えるのは癪だがこれも次なる宿代の為だ、歯を食いしばろう。


「すみませーん」


 俺は花屋に来ていた。ここなら蝶の情報とか、蜜とか手に入れられると思ってな、一度やると決めたらとことんやるまで、だ。


「あの、コメツキチョウって知ってますか?」


「ん、なんだい冷やかしかい? 客じゃないなら帰んな帰んな」


 おいおいおい、マジかよ。花屋の店員は美人のお姉さんって相場が決まってるんじゃないのか? それとも異世界はおばさん縛りなのか?


 まあ、偏見なのは分かるがそれにしても邪険に扱いすぎだろ、もしかしたら客になるかもしれないっていうのにな。


 くそ、ここは交渉を円滑に進めるために買いたくもない花を一本買ってやるか。くそう、俺の宿代が……


「あのーじゃあ、この綺麗な花を一本いただけますか?」


「おー、なんだいお客さんかい! それなら話は変わってくるねぇ、それは一本500Gだよ」


 た、高い。だが、これも次なる宿代の為、俺は渋々払う。


 それにしても態度激変しすぎだろ。手のひら返しすぎて捻れてないか? 大丈夫か?


「あのー、コメツキチョウって知ってますか?」


「あー、ここらじゃ有名な蝶々だね、それは。体が緑で背中に子供の蝶々を乗せてるから一眼でわかると思うよ。なんだい、今から虫取りにでも行くのかい? それならやめといた方がいいよ、確かにコメツキチョウは高く売れるけど、とにかく臭いからねぇ」


 あ、なんで蝶々の採取なんかがギルドで依頼されたか分かったぞ?

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