第13話 ジジイの策略


 ま、まあ何はともあれやっと最初の目標である街に到着することができてよかった。あのジジイが言ってたAランク、っていうのになるには街に来ない限り絶対に達成不可だからな。


 ただ、Aランクって言ってもなんのランクなのだろうか、シンプルに冒険者のAランク、だったら良いんだが、これがもし、料理ギルドの、とか錬金ギルドの、とかだったら、かなり面倒臭くなるぞ?


 まあ、今のギルドの例は憶測でしかないが、もし仮に変なマイナーギルドのAランクとか言われても困るぞ? 頼むから、冒険者ギルドであってくれ、それでもキツいのだから。


 ってか、それの答え合わせできなくね? ってことはもう信じて突き進むか、これでいいのか、って疑いながら進むかの二択しか無いじゃないか! なんだよこのクソゲー、ほんと性格悪いよな。俺をどこまでおちょくりたいんだ。


 もういいや、冒険者ギルドのAランクってことでいいや。これで違かったらもう諦めるし、悩んで何もしないよりかはマシだろ。それに、冒険者ギルドでもなれると決まった訳じゃないしな。


 取り敢えず、行くかー、もう文句いう気力もない。とにかく今日の宿を確保する為になんでも良いから依頼を受けなければ……


 ❇︎


 ここが冒険者ギルドかー、わっかりやすいなー。デカデカと看板に書かれているよ、しかも筆でだ。何かの道場みたいだ。


「ん?」


 ここって字は日本語を採用しているのか? それとも俺が不思議な力で日本語に見えるだけか? ま、まあどっちでも良いや、結局あの性格クソ悪ジジイが絡んでるんだろうし、もういい。ジジイのことなんか考えたくもない。


 入ってみると、意外と思ったよりも狭かった。ここは支部か何かなのだろうか。受付も少なく、あまり人もいない。まあ、俺からすれば並んでいるよりかは好都合だな。


「すみません、冒険者になりたいのですが……」


「はい、冒険者登録ですねー。ではこちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」


 受付は、おばさんだ。前世でいうと銀行員でもしてそう。まあ、事務系の一般的な像だな。


 俺はそんなことを考えながら適当に用紙を埋めようとしたところ、衝撃の事実に気がついた。


 あれ、俺、名前なんだっけ?


 全く思い出せない。頭の片隅にも残っていない。苗字や名前があったことは覚えているのだが、それがなんだったのか、検討すらつかない。これも、あのジジイの仕業か?


 くそ、こうなったら、カッコいい苗字とか名前にしてやろうか? んー西園寺とか、一条とか、かっこいいか? 名前はどうしようか、蓮、とか良いかもしれない。将暉とかも良いな。


 んー悩むな、これは大事な場面だ、しっかり吟味しなければならない。


「お、お客様? いかがなさいました?


「あっ、えっ」


 俺が熟考していると、受付の人が心配してきた。いや、もしかして、不審に思っているかもしれない。急がねば、急がねば、どうしよう、どうしよう……


「タロウ・ヤマダ様ですね、かしこまりました。では次に得意武器欄と、その他の……」


 ど、ドウシテコウナッタ。

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