第7話 天邪鬼

 ボスッ、バキバキバキ、ドシーン!


 俺は運良く木に落ち、そのまま木が威力を抑えてくれてなんとか再び地面に立つことができた。そのまま墜落していたらと思うと、怖くて想像もしたくない。


 空を飛んでいる時に急に翼が消えたのは、追手の鳥達を全員撃墜し、鳥の群れから逃げる、という戦闘が終了したと見なされたからだろう。


 まあ、無事に逃げ切ることができたからいいが、本当にどうしてくれるんだこのスキルは。どこからどこまでが戦闘なのかも曖昧だし、急に戦闘終了してくるし、ジュース飲んだら翼が生えるし、って、


「そう! 俺、なんでそれで飛べてたんだ!?」


 いや、まあレッドエナジーを飲んだから、っていうのは分かる。どう見てもそれを飲んだ後に生えたし、レドエナの宣伝文句とも合致してるからな。


 ただ、現実世界でレドエナを何本飲もうと翼が生えることはない。まあ、天に召されるという意味の翼ならば生えなくもないだろうが、それも短時間に大量に飲んだ場合に限るだろう。


 つまりだ、俺がこの異世界でレドエナを飲んだことによって、翼が生えたことになる。


「……マジで?」


 考えられるのは、こちら側でしか翼が生えないことを踏まえると、異世界側が勘違いでもしたということだろうか。自分で言ってて意味がさっぱりなのだが、それくらいしか考えられないぞ?


 仮にその妄想のまま進めるとするならば、異世界が俺が元いた世界のものを生成しようとした時に参照した情報を鵜呑みにして生成してしまった、ということだろうか。


 だとするのならば、もし、武器生成で食べ物が出てきた時はチャンスかもしれない。また何か間違えて超能力っぽいものを何か獲得できるかもしれない。これからの生活にも一筋の光明が差した気分だ。


 これでもう一安心だな。鳥たちも俺を追うとしても飛んでいると思っているだろうから、地上まで追って来ることはないだろう。


 グゥうううう


「腹減った……」


 そうだ、そういえば俺は人間が住んでいるであろう街を探そうとしていたんだったな。そしてその出鼻を一瞬で鳥たちに挫かれたというわけか。


 こんなにお腹減るんならジュースの一本でも飲んでおけば良かったな。FUNTAを飲めるのはあの時が最初で最後のチャンスだったのかもしれないな。ま、まあいつかまた出てきてくれることを願おう。それか、それよりも早く元の世界に戻れるかもしれない。


 じゃあ、街を目指して出発しますか!


 ……とはいえ街ってどっちにあるんだろう。そもそも人間てこの世界にいるのか? 異世界転生物ではないが、ゴブリンやオークとかのモンスターばかりが跋扈しているんじゃないよな?


 よし、こうなったら、


「【ランダム武器生成】!」


 街を探す、という異世界との戦闘を開始してやる! 武器じゃないものが出ることには定評があるからなこのスキル、期待しているぞ。


『ランダム武器:鉄パイプを生成しました』


「なんで今でるんだよっ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る