第12話 詐称の罰

チリエージャでは、慌ただしく製作が行われている。加工担当の佐々木が急ぎ飛び込んでくる。

「あ、先生。アメジストのイヤリングの金具緩んでたの直しておきましたよ」

「えっ?」

「ダンボールの子が拾って、金具が壊れてますって言うんで、じゃあ、急いで直しておきますって。やだなあ、みほさん、あの時いたじゃないですか。先生に言っときまーすって言ってましたよ。」

「・・あらあ・・そうでしたっけ?」

一同

「みほちゃん!」


「ごめん下さい!!」

森キャストに珍しく女性の客が訪れていた。

「はい、あらまあ」

外にでると、みほと山本さゆりがたっている。慌ててお茶を出すオバちゃん。


「ダンボちゃん、ゴメンなさい!!私、佐々木さんが先生のアメジストのイヤリングを持っていったのをすっかり忘れていて・・イヤリングが無いって大騒ぎになっちゃったの。あ、もちろん、ダンボちゃんが取ったと思ったわけじゃないのよ。だけど、もしかして、ごみと一緒に捨てちゃったとか・・・」


「ルビちゃんを疑ってたのかい」

 とおじちゃんがおどおどしながら言った。

「この子は、曲がったことが大嫌いなんだよ!だいちルビちゃんは物を大切にするから、ゴミ箱だっていつもチェックして、必要なものをうっかり捨てるような子じゃないんだ!」

 とおばちゃんが、おじちゃんと3倍くらいの大声で怒鳴った。食って掛かる2人を制して、ルビが割ってはいた。

「ちがうの、みんなごめんなさい!わたしが悪いんです。私、履歴書に中学校まで施設にいたことを判らないように書いたの。」


その言葉に、みんな、一瞬シーンと口を閉ざした。

「今までに,何回か就職試験をうけたことがあったんです。だけど学歴を書くと、敬遠されて。だから、それとなく学校の名前をわからないように書いたんです。だから、皆さんに信頼されないのは当たり前なんです。さゆり先輩こめんなさい。おじさん、ごめんなさい!ごめんなさい!」

頭を深く下げるルビに、おじちゃんが言った。

「うちなんざ、そんなこと関係ないさ。こんな仕事、ふつうだったら、ルビちゃんみたいな若くて頭のいい子は、来やしなしなんだから。」

「そうさね、年とったおばちゃんしかきやしないのさ・・・そりゃ、どういう意味さ!」

「言葉のハルミってもんだよ。」

「ハルミじゃなく、カスミだろ!」

もめるおじちゃんとおばちゃんを制してさゆりが割って入った。

「みほの勘違いも悪いけど、まったく履歴書査証なんて政治家じゃあるまいし、絶対許されないことだわね。罰として明日からダンボールの発送4個増やすからね。私の命令を聞かないと怖いわよ!」

とさゆり。

「え?・・じゃあ・・」


「・・・だって、ダンボちゃんがいないと、私が発送やらなきゃならないし・・」

すりすりとみほが手を合わせる。ルビはにっこりと笑った。

「先輩、有難うございます。・・私でよかったら又、お願いします!アルバイトの私のためにこんなきったないところまで来てくれて・・」

「きったないは言い過ぎだしょ。」

「じゃあ、どんなとこさ」

町工場は、どっと笑いに包まれた。



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