国王の暗殺!

 翌日俺は宿屋のベッドの上で目を覚ますと、勢いよく扉を開けたアーニャが声を大にして俺の耳を虐めた。



 「ライル起きてる!」

 「起きてる。朝から俺の耳を傷つけるのは止めてくれ」

 「そんな事より大変なニュースよ」



 そんな事ではないだろう。

 俺の耳は大事だろうが。



 「それで何だ明朝から声を大にして」

 「国王が暗殺されたわ」

 「は!?」

 


 俺は一瞬言葉の意味を理解できなかった。

 そしてすぐに冷静さを取り戻す。



 「国王が暗殺されただと!? 誰にだ?」

 「犯人は不明よ。ただ剣で一刺しで殺された形跡があるわ」

 「アレイグル同様に国民から恨みを買ってたからな。その線か?」

 「分からないけど、面倒ごとはまだ続きそうよ」



 アーニャは楽しそうにそう言った。

 何でこいつ楽しそうなんだろう。

 俺はそんな疑問を抱きながら朝支度を済ませ、宿屋を出る。



          ◇

 昨夜――


 国王はアレイグルが地下牢に収監された事で焦っていた。



 「ま、不味い。儂がアレイグルに多額の賄賂を渡したことが国民にばれてしまった」

 


 国王が豪華な自室で焦り歩き回る。

 既にその事実を知った国民たちは国王へと怒りの矛先を向けていた。



 「ど、どうすれば。弁解するか、それとも身を隠すか」



 国王が焦りながら考える。

 そんな時だった――



 「あれを教えろ」

 「だ、誰だお前は! ど、どうやってここに入った!?」

 


 黒髪の短髪の青年がいきなり黒いコートを身に纏い国王の目の前に現れた。



 「あれとは何だ!?」

 「とぼけるな。アイギス家代々に伝わるこの国の魔導兵器の在処だ」

 「貴様何処でそれを知って!?」

 「ちょっとした情報網からな。まあそんな事はどうでもいい、さっさと吐け。でないとお前を殺す」



 青年は高価そうな特殊な漆黒の色の剣で国王を脅した。

 


 「うわあっ!? ま、待て。儂を殺せばこの国は」

 「そんな事はどうだっていい。早く吐け」

 「あ、あれだけは言えぬ。その代わり我が財産の三分の二をくれてやる。どうだ地位も与えよう」

 「そうかなら死体に聞くとしよう。死ね」



 青年は躊躇なく漆黒の剣で国王の心臓を貫いた。

 そして国王が大量の吐血をして床へと崩れ落ちる。



 「ごぼっ! き、貴様!」

 「素直に吐けば生かしてやったものを」

 「わ、儂はま、まだ死にたくない」



 そう最後に呟いて国王は暗殺された。

 


 「おいいるんだろ。記憶を抜き出せ」

 「命令するなんて酷いわね。私とランクは同じなのに」

 「いいから早くしろ」

 「はいはい」



 謎の紫色の綺麗な髪を腰まで伸ばした女性は、そう笑いながら文句を言って国王の額に手を当てる。


 

 「ブレインアブソーブ」



 そう詠唱すると突如手が光りだす。

 そして数分後、光が消えた。



 「終わったわ。あれの場所は地下よ」

 「そうかじゃあ早速向かうぞ」

 「はいはい」



 二人は国王の死体を放置して地下へと向かった。



           ◇

 

 そして現在――



 「うわあ酷い傷だな。容赦が無いな」

 「そうね。犯人は誰かしら」

 「さあな。何の目的で暗殺したかが重要だな」

 


 国の乗っ取りか?

 それとも別の。



 「取り敢えず俺達は警察じゃないし、経過を見守ろうぜ」

 「ええー。犯人捜しするべきでしょ」

 「駄々をこねるな」



 俺がアーニャの駄々をこねる姿を見ていると、背後から声が掛かった。



 「ライル、アーニャ。もう来てたんですね」

 


 相変わらずの容姿端麗。

 綺麗な赤髪が風に靡いて絵になる。



 「この件どう思う? 元信者の復讐だと思うか?」

 「いえ、一般市民が厳重なセキュリティの王室に侵入できるとは思えません。これは第三勢力かと」

 「だよな。取り敢えず冒険者ギルドで話し合うか」

 「はい」



 俺は犯人捜しをする気満々のアーニャを強引に連れてリーファと共に冒険者ギルドへと向かった。


 そして国王の暗殺の裏で色々な計画が動き出す。

 

 ライルに復讐を目論むディオスの姿もそこにはあった。

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