伝令者を助けました!
俺達は闇の森の中間層に辿り着いていた。
「ライルあれ見て!」
「うん?」
アーニャが指差した方向に複数の冒険者と思われる死体が転がっていた。
俺達は思わず苦虫を噛むようなリアクションを取った。
「これは酷いな。残酷だ」
「モンスターの仕業ね。せめて死体だけでも埋めてあげましょう」
「そうだな」
俺達は死体を地中に埋めて弔った。
無事成仏してくれるといいが。
「内臓を喰われてたな。Aランクモンスター以上だ」
「中間層なのに結構危険なのね」
「まあな。だから普通人間は街道を通って隣国へ行くんだ。余程じゃない限り森を抜けようとは思わない」
「でも近道よね」
「街道の方だと遠回りするからな」
アーニャの言う通り闇の森を抜けた方が隣国へ行くには近道である。
しかし危険すぎるので通常は街道を歩いて行く。余程急いでいたのだろうか?
「きゃあああああああああああああああああ!!」
俺達は少し先の方で女性の叫び声が聞こえた。
急いで叫び声の方へ向かう。
「大丈夫か?」
俺達はモンスターに襲われそうになっている女性を助ける。
襲って来ようとした相手はAランクモンスターである魔獣ブラックウルフだ。
「ラプラスの悪魔」
ここで俺が銅の剣+で攻撃すれば――
ここで俺が魔法を使用すれば――
ここでアーニャが剣で攻撃すれば――
「アーニャの剣で勝てる未来が見えた。上空に飛んで攻撃だ」
「オッケー、任せて」
魔獣ブラックウルフはアーニャ目掛けて攻撃する。
アーニャは地面を勢いよく蹴って、攻撃を回避して上空へと飛ぶ。
「はあああああああああああああっ!」
アーニャの一撃が魔獣ブラックウルフに突き刺さり討伐に成功する。
アーニャは華麗に地面へと着地した。
「す、凄い。一体何者ですか!?」
「通りすがりの冒険者だ。それより何故街道を使わない。一人では危険だろ」
「そ、それがアイギス国王から至急隣国のガラパルドに伝書を渡せと命令が」
「伝書? 伝令役なのか?」
「はい王国アイギスの伝令役です」
どうやら彼女は伝令役らしい。
伝令役とは何か大事な情報を他国などに知らせる職業だ。
道理で軍服の恰好をしているわけだ。
「全くあの無能国王が。大した護衛もつけずに行かせやがって」
中間層で死体となっていた冒険者はこの伝令役の女性の護衛で間違いない。
大事な伝令なら護衛ももっと高ランクの冒険者を雇って付けるべきである。
ケチが故に大事な所にお金を掛けない。私腹を肥やしてばかりだ。
「俺達が護衛する。一人では無理だ」
「で、でもそちらの事情もありますよね。私多額のお金なんて持ってなく」
「いや報酬はいらない。それより中間層でこのランクなら深層はもっと危険だ。伝書を届ける前に死ぬぞ」
「そ、そうですよね。お、お願いします」
伝令役の女性は改めて危険を認知したのか、体が震えだす。
俺達は深層の調査のついでに伝令役の護衛も務める事となった。
「ねえその指輪綺麗ね。婚約者?」
アーニャが伝令役の女性の人差し指に嵌めている綺麗な指輪を見て言った。
伝令役の女性は慌てて否定した。
「ち、違います。これはここで偶然拾ったもので。使い方も分からず」
俺はその指輪を見て魔道具の類だと確信した。
魔道具とは魔力が宿ったアイテムである。
多種多様な魔道具が存在する。
「よ、よかったらこ、これ差し上げましょうか?」
「え!? いやいやそんな高価そうな物悪いわよ」
「いえ使い方も分かりませんし、私では宝の持ち腐れなので」
伝令役の女性は綺麗な青色に輝いた指輪を外してアーニャへと半ば強引に渡す。
アーニャは一度は拒否したが、受け取らざるを得なかった。
「ありがとう。大事にするわ」
「そう言ってくれると嬉しいです。護衛宜しくお願いします」
そういや名前まだ名乗ってなかったし聞いてなかったな。
「俺の名前はライル。こっちはアーニャだ宜しくな」
「宜しくね」
「私はサレンです。少しの間ですがお二方宜しくお願いします」
サレンは深々と頭を下げた。
アーニャは綺麗な青色の指輪を人差し指に嵌めて、俺に見せてくる。
「どう似合ってる?」
「ああ凄く似合ってるよ」
「ありがと。どんな効果かしらね」
アーニャはテンション高く指輪を眺めていた。
後で指輪は鑑定してもらうか。
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