VS魔族──②
コルさんの魔術による援護攻撃が魔族を襲う。
炎、水、風、雷、土、氷。様々な魔術が息付く暇もなく放たれる。
だが魔族は涼しい顔をし、ことごとくを漆黒のオーラで弾いた。
その一瞬にできた隙。
レオンさんがクリスタルの槍を手に奴に肉薄し。
「霊槍レブナント──
目にも止まらぬ速さで四肢と心臓部射抜く──!
「むっ。俺の体を穿つとは……よい槍だ」
「ッ!」
……嘘……四肢と心臓に穴が空いてるのに、死んでない!?
それどころか瞬く間に再生し、反撃してきた……!
『チッ──!』
間一髪、スフィアの防御シールドが魔族の攻撃を阻んだ。
どういうことだ。何故死なない? そもそも、あの異様な回復力はなんだ?
「スフィア、魔族って全部ああなの?」
『いえ。魔族といえど不死身ではありません。ですがこれは……少々お待ちください』
スフィアの目が光、モーター音が響く。
『……出ました。魔族は捧げられた魂の量により、力を増す種族のようです』
「なんだって……!?」
『3年前より捧げられて来た魂は、全部で58……それにより、身体能力、自己回復力が跳ね上がっているものと思われます』
魔族ってのはつくづく化け物じみてるな!
「弱点はないの?」
『あります。基本的に魔族も他の種族と同じで首を跳ねたり心臓を貫けば死にます』
「でも今……」
『恐らく、人間の魂を捧げられた影響かと』
だからって、まさか死なないなんて……!
リッチは不死の王なんて言われていたけど、確かに頭が弱点だった。
でもあんなの、本当の不死じゃないか……!
『大丈夫よ、コハク。奴は間違いなく弱っているわ』
「え?」
『魔族は捧げられた魂の分だけ強くなる。代わりに、捧げられた魂の分殺せば魔族は死ぬのよ』
『クレアの言う通りです。あと57回……本体と合わせて、58回殺さねばなりません』
即死の炎を防ぎ、まだ見たことのない未知の攻撃を避けつつ、58回も殺すのか……。
でもそれ以外に方法がないなら……やってやる!
「皆! 奴は捧げられた魂の分だけ殺せば死ぬ! 合計58回!」
俺の言葉にアシュアさんが真っ先に反応した。
「反撃させないうちに殺し尽くす!」
「やってみるがいい、
《剣聖の加護》を付与したアシュアさんの剣撃を、魔族は爪を使って迎撃する。
あの剣捌きに追いつくなんて……なんつー馬鹿げた反応速度だ。
「潰すぞ」
「ッ!」
アシュアさんが瞬時に奴から離れる。
直後、アシュアさんがいた位置に暗黒の球体が落下。
ミシィッ──! 嘘っ、防御シールドにヒビが入った……!?
魔族が更に腕を振るう。
暗黒の球体が蠢き、無数の槍となってアシュアさんへ投擲された。
「フェン!」
「ノワール、ネロ!」
『『『ガルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!』』』
フェンリル、ノワール、ネロの咆哮。
その圧により、暗黒の槍は左右に分散した。
「む……?
『ハアァンッ? 匹? 匹ですってぇ!?』
「落ち着けクレア!」
今ここで本気を出したら全員巻き込むことになるから!
ギリギリでクレアを抑え込む。
と、魔族がゆらりと動いて俺の方を向いた。
「……そこの男。何故俺達のことを知っている? 捧げられた魂から察するにここは3000年後……我らのことは世に知られていないはずだが」
「…………」
「……沈黙、か。貴様からは危険な匂いがする。近い将来、我ら魔族の天敵になりかねん。……ここで殺す」
来るッ!
一瞬で目の前から消える魔族。
だけど……俺には皆がいる。
背後で、防御シールドにより何かが阻まれたような甲高い音が響く。
直ぐに振り返ると、魔族は僅かに目を見開いて硬直していた。
「魔法剣フラガラッハ──【切断】!」
「ぐぉっ……!?」
内からの攻撃は通し、外からの攻撃は防ぐ。
それを利用し、抵抗なく魔族の首を跳ね飛ばした。
だがそれも一瞬で再生された。
「なんだ……なんだその武器は……!」
「誰が教えるかよ! フェン!」
『うん!』
フェンリルのオリハルコン鉱石すら切り裂く爪が、魔族の体を一瞬で砕いた。
「おごっ!?」
あと56回!
「トワさん!」
「はぁ〜い。クルシュちゃ〜ん」
「ガアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
クルシュのブレスが、再生しかかった魔族の体を焼き払う。
「ぐぬぅっ……ハアアァッッッ!」
っ! ブレスを吹き飛ばした!?
皆に着弾する前に、クレアがブレスを掻き消す。
「……うむ、うむ。なるほど……貴様らはこの時代でも最高峰にいるらしいな」
チッ。こうまでしても、まだ55回も殺さないといけないなんて……!
即死の炎、質量が狂ってる暗黒物質。
それにまだ見ぬ能力。
だけどこっちは、今の攻防だけでかなり消耗してる。
これは……本格的にヤバいかも。
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