第60話 裏

「あはははっ!見たか、あれ。最後の最後で転んで良い様だな。」


「しかも『頑張りましょう!』とか言っていたやつが最初にやらかしたしな!」


「2組の奴ら転んだ奴のせいで最下位なんじゃね?」


 大きな声がした方を見ると、見覚えのある男の人達が翠ちゃん達のことを話して笑ってた。前もこんなこと言っていた人いた気がする。確か、体育の授業の……


「……この前のか。」


「体育の授業で馬鹿にしてきた人?」


「多分な。」


「面倒な奴らは失速したし、俺たちのクラスが1位だしで二人三脚は優勝だな!」


「よっしゃー!」


 やっぱりそうだったみたい。男の人達はもう自分たちが1位だって思ってるそうで勝手に喜んでる。まだ競技中なのに、しかも翠ちゃん達を馬鹿にして……


「玲奈。」


「……ふふふ……葵。」


「ぬか喜びしているあいつらにやり返そうぜ。」


「人のことを馬鹿にすることしかできない人たちを懲らしめよう!」


 勝手に喜んでいる人たちの目の前で1位を取ってさ。その人たちが悔しがっている前で鼻で笑ってやるんだ!


「玲奈、皆に声をかけてくれるか。」


「良いよ。皆ー!少し良いかな!」


「なんだ?」  「どうしたの?」


「さっきの大きな声聞こえてたよね?翠ちゃんと桔梗君を馬鹿にしてた声。」


 今走ってるペア以外の皆がこっちを向いてる。いかにも私たちに聞こえるように話している感じだったから皆も大きな声は聞こえていたはず。


「2人は足を引っ張らないように練習もいっぱいしてたんだよ。それを馬鹿にするなんて許せないと思わない?」


「……確かにな。」  「最低だね。」


「だからさ、あの人たち……ついでに他のクラスの人達も驚かせようよ、1位を取ってさ!」


 他のクラスの人達も可哀そうなものを見る目だったり、お疲れ様みたいな感じの空気を私たちの出していたし、どうせなら驚かせちゃおう!


「……こうしてみるか。」


「でも、1位を取るにしてもどうするんだ?」


「それは葵が今考えてるよ。」


「ん……あぁ、悪い。今から説明する。」


 葵は、私が話している間に色々考えていたみたい。タイミングを掛け声とかで合わせればより速く走れるって言うけど皆やってた気がする。


「でも、俺たちも皆掛け声はしているぞ?」


「もっと簡単なものにしたらどうだ?見たところ、タイミングを取りずらい掛け声だったりする。もっと単純に1,2とかでも十分なんだ。」


「確かに……俺も変な掛け声をしていたかもしれない。次、俺たちだからやってみるわ。」


「皆もそうしてみてくれ。そうすれば最悪1位は取れなくても奴らのクラスよりもいい順位になれそうだ。」


「皆、頑張ろー!」


「「「おー!」」」


 私も、アンカーだから最後に頑張らなくちゃ!












【2年生の部の二人三脚も終盤に入ってきました!ここで、予想外のハプニングが発生!なんと失速したと思われた2組がまた、順位を上げてきました!】


「次、任せた!」


「任せて!」


「みんな頑張れー!」


 皆、掛け声を凄く簡単なものに変えたら、見てわかるくらいに変わったペアもいた。こんなに上手くいくなんてね。


「幸い、最下位以外は順位争いが激しいからそこまで差があるわけじゃない。」


「この調子なら大丈夫そうだね。」


【凄い、凄いぞ2組!どんどん順位を上げてきている!この調子なら1位奪還も夢じゃないぞ!】


 さっきまでは最下位だったのに、1位取るの本当にできるかもしれないね。観客席の方からも頑張れって声が聞こえてきたりする。


「もうすぐ、アンカーだな。」


「最後も頑張ろうね。」


「2人は喜んでくれると思うか?」


「うーん……翠ちゃんは責任感を感じてそうかな。」


 きっと、桔梗君を怪我させたことと、転んじゃったせいで順位が下がったこととか根に持ってそうかな。


 でも、順位に関しては私たちがまた上げたから。翠ちゃんは全然気にしなくても良いんだよって後から言いたい。


【ついに!2組の次の走者がアンカーになりました!アンカーは最初に走ったあの2人だー!】


「よしっ、準備は良いか?」


「ふふん、勿論だよ。」


「負ける気は?」


「しないに決まってるじゃん。」


 皆が他のクラスとの距離を縮めてくれたから1位をとれそうな距離になってきてるんだよね。だから、後は私たちが頑張るの!


「後は、頑張って!」


「分かってる。玲奈。」


「ゴー!」


 私たちは、アンカー専用のコースを走ってく。少しだけ距離が長くなってるからその分疲れやすくなってるのかな?


「スピード落とすぞ。」


「うんっ。」


【2組、やはり1位に迫ってきました!このままだと越されるが大丈夫でしょうか?】


 でも、タイミングを合わせて普通に走っているような感じになっていたら疲れるかな?徒競走よりも走る距離は短いんだし。


「葵っ、行くよ!」


「ああ!」


 三角コーンを一回回ってそのまま一気にスピードを上げて走り抜けていく。前を走っているペアにどんどん追いついていく。


「うっそだろ!」


「なんでこんなに速っ……」


「あと少し!」


 前を走っている人たちが横に並んできた私たちを見て、驚いてる。驚いているところ悪いけど、1位は私たちがとるんだから!


【ゴール!1、2位が一気にゴールしました!ここからじゃどっちが1位なのか分かりませんが現場の秘書君が教えてくれるでしょう!】


「はぁ、はぁ、ふぅ……」


「ふぅ、ふぅー、どうだったのかな?」


 最後はほとんど同時にゴールしたから結局1位かどうか分からなかった。うーん……これで2位だったら少し残念だな。


【お、signで連絡来た!どれどれ?……結果は、2組が1位だぁー!】

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