すぐにデレちゃう幼馴染

第59話 裏

【さぁ、続いてはー……えーっと、２年生の部だよー……皆、２年生は私的に見ていた方がいいよ。なんたって皆が羨ましがる顔が見たいからね！】

「お、玲奈。出番だぞ。」

「んー……頑張ろーね。」

「後、渡されたハチマキ、ちゃんと頭につけてな。」

「葵ー付けてー。」

「起きなきゃ付けられないんだが。」

　うとうとしてる中体を起こして葵にハチマキを付けてもらってる。今年は一体どんなハチマキの付け方になってるのかな。

「ほら、出来たぞ。」

「どんな感じ？」

「猫耳風だ、ほら。」

「あ、ほんとだ。可愛い……ありがとぉ。」

　葵がスマホを内カメラにしてハチマキを付けた私を映す。葵がつけた猫耳風ハチマキは凄く可愛くて嬉しかった。

【あーみんな集まった？え、まだ？……まだの人は早く集合してね。主に２組の人が全体的に少ないようだけど。】

「やば……急ぐぞ。」

「あ……急いだら猫耳が崩れちゃう。」

「そう簡単に崩れないようにしてるし崩れても直すから大丈夫だ。」

「分かった……ほら、葵急ごっ！」

　せっかく猫耳風にしてもらったのに走ったらすぐに崩れて見る影もなくなっちゃうと思たんだけど崩れてもまた直してくれるみたい。

　葵に引っ張られながら走っていたけど、眠気が覚めてきていつも通りに走っていったらいつの間にか私が葵の手を引いていた。

「はぁ、はぁ。速すぎだ。」

「でも、時間内には間に合ったよ。」

「そりゃそうだが……二人三脚出来なくなったらどうするんだよ……」

「私たちなら少しくらい遅くなっても大丈夫かもよ？」

「それは……一理あるな。」

　うっかり転んじゃうなんてことがない限り、私と葵の走りには誰にも追いつけないと思ってる。でも、余裕ぶっちゃうと失敗しちゃうから気をつけなきゃ。

【お、見たところ集まったかな？秘書くーん……あ、オッケーみたいだね。じゃあ移動始めてねー。】

「皆、頑張りましょう！」

「「「おー！」」」

「葵、頑張ろうね！」

「団体競技は勝っておきたいな。」

　移動する前に、議長でもある翠ちゃんが皆に声をかける。他のみんなもやる気満々だね。最初は私たちだから、さらに盛り上げなきゃ。

【お、所定地についたね。それじゃ、後はピストルが鳴ったら始まるからねー……先生よろしくねー】

「……第一走者、位置につけ。では始める。よーい……」

　パンッ！！

「っ！」

「ゴー！」

　葵とタイミングを合わせて走っていく。無駄な抵抗の無い走りで他のクラスのペアをどんどん引き離してる。うんうん、良い感じ。

【おお？１組だけ前に出てるね。男女のペアで息もぴったりだ……しかも何あのハチマキのやり方！いいなぁ、秘書君も出来る？あ、ほんと？ありがとう。】

「玲奈、スピード落とそう。」

「そうだね。」

　折り返し地点はスピードを少し落として小っちゃく回れるようにして通過する。やった、後は一気にみんなのところに戻るだけだね。

「……よしっ！」

「このまま一気に！」

【おお！２組の男女ペアスピードを落としてから一気にまたスピードアップ！どんどん他のペアを引き離していく！】

「玲奈ー！頑張って！」

「葵！もう少しだ！」

　次のペアの翠ちゃんと桔梗君、それに他のみんなも私たちを応援してくれてる。後もうちょっと、頑張れ私と葵！

「……任せた！」

「勿論さ。」

　パシンッ

「翠ちゃん！」

「任せて！」

　パンッ

　翠ちゃんにハイタッチをして次を任せた。私たちの後ろで勢いよく駆け出していく足音が聞こえる。その音を聞きながら列の最後日に移動してく。

「はぁ、はぁ……これだけ離したら充分だろ。」

「ふぅ、ふぅ……練習より頑張ったよ。」

【２組、速くも第２走者が走り出した！このペアもさっきのペアに負けず劣らず速い！他のクラス、負けてるぞ！逆転する気持ちで、死ぬくらい頑張れ！】

「凄い、凄いっ！翠ちゃん凄いよっ。」

「頑張ったんだなってわかるよな。」

　移動してから翠ちゃんと桔梗君の走りを見たけど授業で走っていた時よりも凄く速くなってる。翠ちゃんも戻ってくるときに嬉しかったのかな？少し笑ってた。

「あっ……」

「翠っ！」

　バタッ！

【おっと！ここで２組のペアが転倒！これをチャンスに他のペアがどんどん追いついて来る！転倒したペアは大丈夫なのでしょうか！】

　それがいけなかったのかな、翠ちゃんはタイミングがずれて躓いて、転んじゃった。転ぶときには桔梗君が下になったけど2人とも大丈夫かな。

「ア、アキ……ご、ごめ……」

「翠……ま、まだ終わってないよ。それは最後まで走り切ってから。」

「う、うん……」

【ああっと、２組、ここで初めて越されました！しかし、走者は諦めていない！】

　2人はゆっくりだけど確実にこっちに向かってきてる。桔梗君はタオルで結んでない足、右足を引き摺らせてる。

「次、任せたよ。」

「任せとけ！おい、行くぞ！」

【２組の走者、走り切りました！おい、保健委員、早く仕事しろ！こんな時のためにお前ら居るんだろ！ノロノロするな！】

　桔梗君からハイタッチをもらった人は一気に駆けていった。それと一緒に、実況の子に怒られてる保健委員が急いでこっちに向かってきてる。

「担架持ってる奴は？」

「はいっ！持ってきました！」

「よし、じゃあそっと担架に乗せて移動するぞ。」

「ペアの人も一応怪我がないか確認するので歩けるのなら歩いてこちらに来てください。」

「…………分かりました。アキ……」

　桔梗君が担架で運ばれていく横で、翠ちゃんが申し訳なさそうについて行ってる。その後姿を見送っていると、別の方向から笑い声が聞こえてきた。

　今は競技中で笑う所もないし、人が怪我したのに何で大きな声で笑ってるんだろう……