第52話 表

「ふぅ……そろそろやめるか。」


「そうだね。あ、もうこんな時間なんだ。」


 早速ツイクラで牛乳瓶のコンビニを作り始めたんだがさすがにゲームのし過ぎだろうか。


 時間を確認するともう6時になりかけていた。昼からしていたと考えると結構していたことになる。


「そろそろご飯の準備もしなきゃね。」


「え?作ってくれるのか?」


「今日も泊まろうと思ったんだけど……だめ?」


「ダメというわけじゃないが……おばさんは何て……」


「あ、それならもう連絡したよ。泊まっても大丈夫だって。でも、明日学校だから1回荷物取りに戻るけど。」


 どうやら今日も泊まるらしい。しかも事前におばさんに連絡していたらしい。いつの間に連絡していたのだろうか。


「まぁそれなら良いが……」


「じゃあ、材料買いに行こ?そのついでに荷物も取りに行ってもいい?」


「よし、行くか。荷物はその時に取ってきた方が楽だしな。」


 買い物に行くということでツイクラを終了し電源を落とす。服装は……別にこのままでもいいだろう。近くのスーパーに行くだけだしな。


「今日は何にしようかなぁ。」


「正直玲奈が作った料理だとなんでも美味いと思うんだけどな。」


 弁当もカレーも美味かったし、作り方さえわかればどんな料理でもうまくなると思う。


「むぅ……何でもが一番困るの!」


「そうか……といっても、今これが食べたいというのはないな。」


「そうなんだ……じゃあ、スーパーで材料見て決めよ?」


「そうだな。」


 それまでに作ってもらいたい料理見つかるといいんだがな。できるだけ安くて玲奈が簡単に作れるような料理がいいのだろうか。


 ……やっぱりスーパーに行ってからじゃないと思いつかないな。














「あ、鶏もも肉が安いね。」


「もも肉……照り焼きチキンとかおいしそうだな。」


 スーパーについていろいろと回っているがそれほど安くて良さそうなものがいつからなかった。


 しかし、鶏もも肉が安いのが見えたのでもも肉と言ったら照り焼きだなと思いついた。


「照り焼きチキン美味しいよね。今日のご飯はこれにする?」


「そうするか。玲奈の作った照り焼きチキン、食べてみたいしな。」


「そ、そう?じゃあ、美味しくなるように頑張るね!」


 ということで夜ご飯の主役は決まった。きっと……いや絶対美味いだろうからご飯が進みそうだ。


「あとは、みそ汁とかか?」


「みそ汁の具材は何にする?」


「豆腐かワカメくらいか?」


 いやもっと沢山具材はあるが、作りやすいのはこの2つだろうか。どちらも美味しくて決めづらいな。


「どうせならワカメと豆腐の味噌汁にする?」


「その手があったな。」


 どっちも食べたいなら両方入れたらいいじゃないか。そうすればこっちにすれば良かったとかならないだろ。


「じゃあ今日の料理はこれで決まりね。美味しく作るから!」


「あぁ、今日も楽しみにしてるな。」


「あ、あれ?玲奈?」


「あ、葵もいるじゃないか。」


 今日の献立が決まったので後は会計をするだけ……という所で後ろから声が聞こえてきた。男女2人の声で男の方は学校でよく聞いている。


「翠ちゃんに桔梗君。奇遇だね。」


「2人も買い物か?」


「そうだよ。ちょうど翠がご飯作ってくれるってことだから。」


「ちょっ、それは言わない約束でしょ!」


「あはは、そうだったね。ごめんごめん。」


 石晶のカミングアウトに納泉さんは顔を赤くしている。どうやら俺たちと同じ感じでスーパーに来たらしい。


「翠ちゃん何作ってあげるの?」


「それは……これからこいつと決める。」


「今回は焦がさないようにね。」


「あんたは!全く、一言多いの!私、先に行って選んでるから。」


 そういって納泉さんは1人で食材を選びに行ってしまった。怒っている感じがするが石晶は笑っている。大丈夫なのだろうか。


「あはは、少し虐めすぎちゃったかな?後で言うこと聞いたら許してくれるかな……」


「早くついていった方がいいんじゃないか?」


「おっと、それもそうだね。それじゃあ、後はお2人でごゆっくりー。」


 そういって石晶は納泉さんの方へ向かっていった。たしか2人も幼馴染って言ってたよな。慣れ親しんだ関係だからあんなに遠慮なくできるのだろう。


「翠ちゃん可愛かったなぁ。」


「怒ってなかったか?」


「違うと思う、あれは多分照れ隠しじゃないかな。ほら、まだ2人見えるよ。」


 玲奈が指さした方向を見てみると納泉さんと石晶が笑いあっていた。玲奈の言う通り怒っていなかったらしい。


「本当だな。」


「さっきの翠ちゃんは珍しいからきっと桔梗君がいるからなんだね。」


「あれで付き合ってないとか変だよな。」


 周りから見させてもらうともう付き合っちまえよと思ってしまう。石晶は恋人はいないと言っていたから誰とも付き合ってないだろうし……


「ほんとにねー。桔梗君他に好きな人とかいるのかな。」


「いや、いないはずだぞ。本人がそう言っていたからな。」


「そうなの?……ふふっ。」


 石晶に好きな人がいないと聞いたら小さく笑った。玲奈の方を見るとその顔は少し嬉しそうだった。


「どうしたんだ、そんなに嬉しそうにして。」


「何でもないよ。翠ちゃん頑張れって思ってね。」


 納泉さんに頑張れって……あぁ、そういうことか。それなら納泉さんにぜひ頑張ってほしいな。


「いつまでもここにいないで早く帰るか。」


「そうだね、すっかり遅くなっちゃった。」


 遅くなったがいいものが見れてよかった気がする。これで石晶も……とかだったら良いんだけどな。

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