すぐにデレちゃう幼馴染

第39話 裏

「……」

　ドンドン

「……どうやったら機嫌直してくれる？」

　ふんっ、今の私はすごく怒ってるんだから。今日1日で凄く恥ずかしい思いしちゃったし。

　ぐりぐり

「頭……撫でろとか？」

　ドンッ、ぐりぐり

「それ以外に何かして欲しいことはないのか？」

　葵だって悪気がなかったのは分かってるけど、女の子的にはもうちょっと気を使って欲しかった。

　トイレとか実は嬉しかったのとか全部心の中に閉まっておいてそっとしてくれても良かったのに。

　なでなで、ピコンッ！

「ん？」

【自分で考えて】

　だから私は葵がちゃんと反省してくれるまで話さないことにした。連絡もSignを使えば出来るんだし。

「うーん……」

　ピコンッ！

【でも、どうしてもって言うなら許してあげる。】

　どうしてもって言うなら今回のことは水に流そうかななんて上から目線で思ってる。多分またお願い聞いてもらうけどね。

　ギュッ

「……っ！」

「玲奈が可愛かったからつい弄りすぎた。これからは気を付けるから許してください。」

「んんっ。」

　耳元で喋るのはずるいっ。ゾクゾクッてしちゃった。でも、まだ反省が足りないと思うの。耳元で喋るなんてずる使っちゃうし。

【あざとい、もうちょっと何か無いの？】

「そう言われてもな……」

　本当のことじゃん。さっきのは反省は足りないけど無かったていう訳じゃないから少しだけヒントだしてあげる。

【じゃあヒントあげる。私がこの前の休日に言われて嬉しかったこと。】

　葵は私が言われて嬉しかったこと分かるかなぁ？たまに変に鈍感なところがあるから分からない可能性もありそう。

「怒ってる玲奈も可愛くて好きだけど、いつもの玲奈の方が俺は大好きだな。」

「……っ！」

「だから機嫌直してくれないか？何でも聞くからいつもの可愛い玲奈になって欲しいな。」

　葵は嬉しかったことに気づいてくれた。それにいつもの私が可愛いなんてお世辞かもしれないことも添えちゃってさ。

　あ、でも何でも聞くって言ったから1つお願いして、それをしてくれたら機嫌直そうかな。

「何でも聞くの？」

「え？あ、ああ。俺に出来る範囲なら。」

「じゃあ………たら許してあげる。」

「え？」

　自分でははっきり言ったつもりだったのに葵は聞こえなかったらしい。思ってたより声が小さくなってたのかな？

「……キス、したら許してあげなくも、ない。」

「………え？」

　さすがに恋人がする行為を2回も言うのは恥ずかしい。今度ははっきり聞こえたらしくて葵は固まってた。

「ふーん、やっぱ無理なんだ。」

「それは……」

　暫くして何もしてこないし言ってこないからついそう言っちゃった。もとからあまり期待してないんだけどね。

　してくれたら良いなって感じかな。でも、葵のことだから恋人同士でやるものだから云々（うんぬん）って考えてる気がする。

「葵のばか。もうい……んっ。」

　さすがにもうしてくれないって分かったから諦めようとしたんだけど、その時に唇になにか当たる感触があった。

　一瞬だったけどそれはとても長く感じて、そして突然のことだったから何をされたか分からなかった。

「これで、ファースト（俺の初めて）で良いか？」

「……うん。」

　葵に言われて気づいた。そっか、私、キスしちゃたんだ。人生初めてのキスは不意打ちに決まっちゃった。

「葵ー、お昼ご飯出来たけわよー。」

　ビクッ

　もっと余韻とか楽しみたかったけどお昼ご飯の時間になってた。結構時間が過ぎてたんだね。

「……私先に行くね。」

「あ、ああ。」

「それと……」

　葵は少し考えたそうだったから私が先に行くことにした。ぎこちない空気も無くなるよね。部屋から出る前に私は1つだけ葵に伝えることにした。

「私も初めてだったから。」

「……え？」

「じゃ、じゃあ先行くから。」

　えへへ、葵はどんな反応してくれるのかな？

　____________________________________________

「結局お昼ごはん食べちゃったじゃん。」

「そうだな。」

　葵は私がご飯を食べ初めてからかなり間を開けてから来た。呼んだのに来なかったからおばさんに怒られてた。

「朝に聞こうと思ったのに……」

「それは、まぁ、俺が悪かったです。」

　む、別に葵に罪悪感とか植え付けるために言った訳じゃないのに。このままじゃ自分が悪いって思っちゃうよね。

「でも、嬉しいこともあったから許してあげる。」

「……」

　んふふ、葵はコメントしづらいよね。でも実際に私の中だったら1番になるくらい嬉しいことだった。

　それくらい葵（好きな人）にしてもらうキスが嬉しかったし、またして欲しいって思っちゃった。

「ねぇ、葵。」

「なんだ。」

「プレゼントありがとね。私の誕生日のぬいぐるみと花のストラップ。葵が私のこと考えてくれたってことが分かったから。」

　ここから話したかったことかな。まずはプレゼントを貰って嬉しかったことを伝える。

「でもね、1つだけ聞きたいの。」

「想像はつくが一応聞こう。」

「なんであの花を渡したの？」

　だって、あの花の花言葉は普通の幼馴染とかの関係を壊すみたいなものだから。それこそ恋人になりたい時に渡すものだよね。

「なんでってそのままだよ。」

「そのまま？」

「俺が玲奈を花言葉の通りにしたいってことだよ。」

　それって私をずっと離さないで側にいてくれるってこと？だってそうじゃなきゃあんな花言葉の花になんかしないで別のにするよね。

「そっか、じゃあ一生離さないでね。」

「玲奈が離れない限りずっと側にいるよ。」

　これで死ぬまで一緒ってことを約束してくれた。私から離れることなんて絶対にないんだから！

　私は葵の気持ちを聞いた後、葵に体重を預けて頭を撫でて貰ったりして少し素直になった。葵は何も言わずにして欲しいことを分かってくれた。

　葵、ずっとずーっと大好きだよっ。