第25話 表
「じゃあ次の問題で今日は最後だ。」
「よしっ!頑張るっ!」
放課後に勉強を始めて早くも5日。今日は科学の勉強だ。やっぱり玲奈は覚えが良いのかあっという間に覚えていった。
後俺が教えられることはないので実はもう終わりだ。じゃあさっき玲奈に言ったことは何なのかというと……
「この前のお願いは土曜日と日曜日、どちらが良いか答えよ。なお、その日は勉強をしないものとする。」
「……え?」
「………1分で答えよ。」
ぶっちゃけると休憩日だ。俺もなんだが毎日勉強なんてほとんどの人がやってられないと思う。適度な休みも必要だ。
なので問題ということで聞いてみたのだが、玲奈が不思議そうにしてきた。なんだかこっちが恥ずかしくなってきたので制限時間をつける。
「え、えっとぉ……。」
「後10秒だ。」
「じゃ、じゃあ、土曜日にするっ。」
いつまでも悩んでいそうだったので後10秒と嘘をついて急かしてみた。そうしたら慌てていたがしっかり答えてくれた。
「では次の質問。それは今日の夜からか明日からかどちらが良いか答えよ。」
「……今日の夜から。」
「……これで問題は終わりだ。」
だいたいすることは決まったので茶番劇のようなものを終わらせる。さて、今日の夜からということだから、早速支度しなくちゃな。
「ん?そんなに俺を見てどうしたんだ?」
「結局どういうこと?」
「問題通りこの前のお願いの続きをするんだが。」
「そうじゃなくて!」
ポカーン、とした感じで俺を見ているのでどうしたのか聞いてみたらまだ理解ができていないらしい。ちゃんと説明したらそれも違うとのこと。
「じゃあ何を聞きたいんだ?」
「その……明日も勉強するんじゃないの?」
「ああ、それか。」
俺は玲奈に明日は勉強しないことを伝える。何に対しても適度な休憩は大切だ。それに1日やってなくて忘れるとかは無いだろう。
「と言うわけで全く気にしなくて良い。」
「そうなんだぁ。」
「そういうわけだから安心してゆっくりしてろ。」
俺の説明を聞いて納得した玲奈。見ていると口元が少しニヤついているのが分かる。なんだかんだ嬉しく思ってるのな。
「じゃあ、早速準備してきてくれ。」
「あ、それなんだけどさ……私の家じゃ駄目?」
「………は?」
急に何を言ってきたのかと思った。いくら幼馴染といっても俺達は異性なのに。男の部屋に女が来るのは良いとしてその逆は不味いだろう。
「たまにはどうかなって……駄目?」
「せめておばさんに許可とってからにしろ。」
「分かった。じゃあ、今から聞くね。」
そういうと玲奈はおばさんに電話を掛けた。俺はおばさんが駄目と言ってくれることを祈るしかない。
嫌という訳じゃないんだが、玲奈の部屋で寝ることになるかもしれない。そうなると俺が眠れなくなるからだ。
「あ、お母さん?」
『どうしたの?』
「えっとね……」
玲奈は今日家に俺が泊まってもいいかを細かく説明していた。そのお陰でお願いのこともおばさんに筒抜けになった。
『ふふっ、そんなことをしていたのね。お泊まりは全然大丈夫よ。』
「やったぁ、ありがとうお母さん。」
『あ、でも葵君に変わってくれる?ちょっとは話したいことがあるから。』
「うん。葵、変わってだって。」
やったぁ、と言ったことから泊まることは決定したことが分かったので少しがっかりする。俺は一体どうやって寝れば良いんだ。
おばさんが変わって欲しいらしく、俺は玲奈からスマホを受けとる。どんなことを言われるのだろうか、少し怖い。
「もしもし。」
『あ、葵君。話すのも久しぶりね。後から久しぶりに会うことになるのだけど。』
「そうですね。いつも玲奈がこっちに来るのでおばさんと話す機会がなかなか……」
とりあえず世間話みたいなものから始める。少しでも聞きたい内容を忘れさせようとするがそんなことをしても無駄だろう。
『あ、とりあえず言っとくわね。お泊まりは良いけど、狼さんにはならないでね?』
「何てこと言ってるんですか。勿論なりませんよ。」
『するとしても合意の上よ?それと娘の情事なんて聞きたくないからあまり音を出さないでね?』
「だからしないですって。」
何てことを言ってくれるのだろうか。男女の泊まりが絶対にそうなるわけ無いだろ。それに玲奈には好きな人がいるからもし俺が耐えきれなくて誘ったとしても拒否するだろ。
『じゃ、言いたいことはそれだけだから。また後でね。』
ブチッ
「あ、ちょっと……もう切れてるし。」
自分が言いたいことを喋ってあっという間に切ってしまった。というかもっと他に言うべきこととか無かったのかよ。
「あ、終わった?何て言われたの?」
「特になにもだな。やんわり変なことするなって言ってきたことぐらいだよ。」
「ふーん……」
玲奈がじっと見つめてくる。さすがに情事について言われたなんて言えないので誤魔化してみる。
「嘘だ。他に何か言われたでしょ。」
「どうしてそんなこと思ったんだ?」
「何となくっ。女の勘?ってやつ。」
そんな不思議そうに言われてもなぁ。実際間違ってないからなんとも言えない。まぁ、別に言わなきゃいいか。
「さ、玲奈の家に持っていく荷物でも準備しなきゃな。」
「あ、話しそらすつもりだ。教えるまで聞き続けるんだからっ。」
荷物準備ということで逃げる俺。あからさまな態度にも玲奈は諦めずに聞いてくる。早く忘れてくれないだろうか。
さすがにこれから泊まるというのに気まずい雰囲気は嫌だからな。
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