すぐにデレちゃう幼馴染

第24話 表

　放課後になった。玲奈のテストの点数を上げるために今日から早速勉強会を開かなければ行けない。そのため、さっさと帰る準備を終える。

「玲奈、帰るぞ。」

「……うぇ！？葵！？」

「ああ、俺だ。そんなに驚いてどうした。」

　玲奈が何故か驚いている。周りもいつもより騒がしい気がするのだが一体どうしたんだろうか。

「その、葵から声をかけてくれたから……」

「……確かに俺からすることは無かったな。」

　そういえばそうだった。帰る時も玲奈が俺に声を掛けて、俺がそれに反応するのがいつもの流れだった。

「でも、嬉しいな………あっ、もう大丈夫だよ。」

「そうか。じゃあ帰るか。」

　俺達は少し早めに昇降口へ向かう。この後の勉強の時間のために少し急がなきゃな。そのことに玲奈がどう思っているかは分からないが。

「ねぇ。」

「どうした？」

「今日の葵、いつもしないことばっかしてるよね。」

　そう玲奈に言われた。そこまでだったか？うーん……確かに自分からは進んでしようとは思わなかったな。

「確かにな。」

「理由とかあったら聞いても良い？」

　理由か……少し考えてみよう。朝のことに関しては俺がしたかったからだ。今に関しては少しだけ他の男に対する牽制もあるかもな。

「他の男どもを勘違いさせるためかもな。」

「どういうこと？」

「そこは自分で考えろ。」

　好きな人（玲奈）に俺以外の虫がつくのが嫌だとか言えるわけ無いだろ。しかし、何故か玲奈はにやっとしてから、

「ふふーん、そんなことしたら私彼氏作れなくなっちゃうじゃん。」

　そんなことを言ってきた。何か既視感を感じる、というか俺が言った言葉に似てるし。しかし、玲奈を好きだと自覚した俺にはそんなの通用しない。

「そうだな。作れなかったら俺が彼氏になってやるよ。」

「……ふぇ？」

　玲奈がぽかんとした顔で俺を見てくる。さては自分が何を言われたか自覚していないな？それなら、もう一度言うまでなんだが。

「今、何て言ったの？」

「だから、玲奈が彼氏作れなかったら俺がなる。なんなら旦那になっても良いかもな。」

「葵が彼氏？旦那？…………っっっ！」

　ボンッ、ぷしゅぅぅぅ

　何を言われたか分かったのだろう、思い切り顔を赤くして頭から湯気らしきものが出ていた。そして、そんな顔を見られたくないかのように俯いていた。

「どうだ？問題ないだろ？」

「…………」

　コクコク

　玲奈はただただコクコクと頷いていた。これで一応言質(仮)は取れたので学校でも好きになって貰うために少し攻めていこうと思う。

「さて、勉強もあるし帰るか。」

「そ、しょうだね！……ぁぅ。」

　そうだね、と言いたかったのだろうが噛んだらしい。それでまた顔を赤くする玲奈。そんな玲奈に俺は笑いながら手の繋ぎ方を変えた。

　玲奈はそれに気づいたと思うが何も言わなかった。俺達はその繋ぎ方で家に帰った。

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「ねぇ、何でcosの120°が－（マイナス）2分の1になるの？ただの2分の1じゃだめなの？」

「それはな、cosはグラフの横軸と一緒なんだ。横軸は左側が－（マイナス）になるからcosもグラフの左側になると－（マイナス）の値になるんだ。」

「そうなんだ！じゃあsinは縦軸と一緒？下側が－（マイナス）になるの？」

「そうなるな。良くできてるじゃないか。」

　俺は今、玲奈に数学を教えていた。内容は三角関数だ。1年生の頃に習った三角比とほぼ一緒なのだが玲奈は忘れているらしい。

「えへへ、葵の教え方が良いからだよぉ。」

「いや、普通だろ。玲奈がすぐに理解できるからだと思うがな。」

　俺の教え方が上手いと言うがそんなことはないので玲奈が凄いと誉める。こんな説明で理解できるのが凄すぎるんだが。

「私ってやればできる子だからね！えっへん。」

「良くできたな、偉い偉い。」

　なでなで、なでなで

「んふぅ、善きにはからえ～。なでなできもちー……」

　やればできるなら最初からして貰いたいものだ。理解が早い玲奈を撫でるとふにゃふにゃになった………ちょっとしたご褒美ってことで。俺が撫でたかった訳じゃない。

「葵エネルギー満タン。この調子で頑張る。」

「お、おう。頑張ってくれ。」

　何か不思議なエネルギーが聞こえたな。何だよ葵エネルギーって。俺いつの間にか栄養になってたの？

「あ、葵。何でここのsinが－（マイナス）5分の３になるの？」

「ああ、そこは第4象限でsinが－（マイナス）になる。そこから公式を使って1からcosの2乗を引いて……」

　玲奈がどんどん理解していくため今日は数学ばかりを教えることになった。

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「ふぅ～、疲れたぁー。」

「お疲れ様。もう充分すぎるほど良くできてるじゃないか。」

　そこから休憩で夕飯を食べて、少ししてまた勉強し７時になったことで勉強は終わった。今日で玲奈は数学をどんどん覚えた。今テストをしたら8割近くは固いと思う。

「数学はバッチリだね。」

「ああ、数学はな。明日は別の教科を勉強するからな。」

「……そうだったぁ。」

　玲奈がまだあるのかとがっかりする。がっかりしても教えてと言ってきたのは玲奈なのでいっさいがっさい遠慮をしない。それに……

「ご褒美……」

　ピクッ

「が、頑張るぞぉ！」

　こうして呟くだけでやる気を出してくれるのはありがたい。まぁ、餌で釣っているので多少罪悪感はあるが。

「じゃあね葵、明日の朝行くから！」

「じゃあな。俺が起きてるときにきてくれよ。」

　勉強も終わったので玲奈は家に帰っていった。明日はどの教科を勉強させようか。苦手なものから先で良いか。

　明日も玲奈が勉強を良くできたら、何かしら小さなご褒美を上げよう。大事なのは飴と鞭だ。上手く使い分けなければ。

　それはそうと、俺も勉強しなきゃな。