株式会社魔物ナビ

うみとそら

営業マン・デビ川

はあ、300年間1件も契約取れてないのは同期で僕だけだよー。

暗い表情で養豚事業を行う会社に向かっていた。


よし!今日こそ契約とるぞ!

トントントン。

「株式会社魔物ナビのデビ川です!」

「どうぞー」

「失礼します」

ドアを開けるとメガネをかけたオークのオー野さんがソファーの横に立っていた。

「おー!デビ川くん、久しぶりだねー。なんか羽の色が黒くなった?」

「オー野さん、ご無沙汰しております!いやいや、もとからですよ!」

もちろん、僕はデビルなので羽が黒くてツノが生えているのが当たり前だ。

ただ、何回もここに来ているので、こんな冗談を言える仲になった。

「すまんすまん!座ってくれ」

「失礼します!」

「今日もあれかね?うちの求人状況を聞きにきてくれたのかね?」

「はい!あれから人員のご状況はいかがかなと思いまして」

「どうせ足りないって言ったら、あの手この手で高いサービスを売りつけて来るんだろ?」

オー野さんがメガネを少し下にズラしてニヤリと見てきた。

「いえいえ!弊社は“win-win-win”を目指しています!なので、プロである私たちがより良い人材を獲得するために、募集から採用までを一括して代行することで、御社、求人者様、私たちがより良い関係になるように」

「長い長い!」

せっかく300年前の研修で覚えたセリフを全て言おうとしたのに遮られた。

「デビ川くん、薄々気づいていたけど」

「はい」

「君、営業下手だね?ブハハハハハ」

痛いところをつかれた、、、

「ま、まあ、上手くはないですね、、、」

「いや!それは良いことだよ」

「え?」

「まあ、私もこの会社で社長を2000年近くやってるんだから、そりゃいろんな営業マンを見てきたわけさ」

「そうですよね」

「でな、その中には言葉巧みに騙そうとしてくる輩もいるからねー」

「それは大変ですね」

うちは業界大手なので、詐欺まがいなことはできないが、会社によってはそんなこともあるようだ。

「だからこそ、デビ川くんみたいに思ってることが顔にでたり、駆け引きが苦手そうなところや、トークが下手なところが逆に良いんだよ」

「な、なるほど。ありがとうございます」

まあまあディスられたが許そう。

「でだ。実はそんな可愛いデビルのデビ川くんに求人募集の仕事を頼みたい」

「gjなdgじあ:保tリハ9」

「なんだなんだ?オークの私にもわかるように話してくれ!」

やばいやばい。嬉しすぎて僕も知らない言葉がでてしまった。

「し、失礼しましたあ!あ、ではなく!ありがとうございます」

ビシッと立ってお辞儀をしたと同時に羽も広げてしまった。

「おいおい、デビ川くんの羽は大きいんだから広げないでくれ」

「失礼しました!」

「で、デビ川くんを非常に信用してるんだ。少しは安くしてくれるよね?」

さすが社長、抜け目がないな。

「そこは上長との相談になりますが頑張ります!」

「よしよし、じゃあ商談を始めるか」

「はい!」


商談が終わって帰り道。

「やったーーーーーーーーーー!」

羽を大きく広げてスキップしていた。

色んな視線を感じるが気にしない。

「だって、1000万の大型契約ができたんだもん!」

もん!

「社歴300年の若手がこんな大型契約するのは初めてだろ!ヤッホーい!」

初めての契約の上に大型契約となって有頂天になっている。


帰社後に課長に報告したところ、めちゃくちゃ褒められた上に、ちょうど近くに通りかかった部長の耳にも入り、今度ご飯を奢ってもらえることになった。


「諦めなければ良いこともあるな!」

と学んだ営業マンのデビ川だった。

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