5話 闇桜。

 ――試合が始まってから数分が経った今、両者の戦いに終止符が打たれようとしていた。


「――能力解放。特殊能力発動、すり抜け」


 俺が特殊能力を発動した瞬間、相手の攻撃が俺をすり抜けた。


「は!?お前、今何をしたんだ!」


 あまりの出来事に彼は、驚きを隠せずにいた。


「俺はお前の攻撃をすり抜けた……。ただ、それだけだ」


「攻撃がすり抜けるってことは、そっちの攻撃もすり抜けちまうってことだよな」


 彼は、変なところで頭がよく回るようだ。


「はあ……。お前、よくわかったな。正直驚いたよ」


「ははっ!俺だって馬鹿じゃねぇ、そのくらいは気づく」


 彼の言う通り、この特殊能力を使うと相手だけでなく、自分の攻撃もすり抜けてしまう。しかし、そんなことは初めからわかっていたことだ。だからこそ、対策はしてあるに決まっている。


「まあ、そんなことに気づかれたところで、俺の勝ちに変わりはない。――特殊能力発動、転移」


 俺がそう言うと、目の前に一本の刀が現れた。


「おいおい、なんだよその刀!お前、今どっから出した!」


「こことは別の空間だ。この刀は普通じゃなくてな、異空間にでも封じておかないと危なくてしょうがないんだ」


「なんだよ、それ。まあ、その刀を使ったところで、今のお前じゃ俺に攻撃してもすり抜けちまうだろ?そんなんで、どうするっていうんだよ」


 彼がそう聞いた時、俺はニヤリと笑う。


「こうするんだよ。――咲け、闇桜やみざくら


 俺はそう言って、刀を鞘に収めたまま構える。


「はあ?お前、鞘に収めたままでどう戦うんだよ。なめてんのか?」


「そんなことはない。『闇桜』はこの刀の本当の名前ではないから、鞘から抜くことができないだけだ。でも、お前相手ならこれで十分だ。――闇桜、黒衣こくい粉砕ふんさい


 ――――スンッ!


 俺は、刀を振り下ろす。そして彼の背中からは、血が噴き出した。

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