第58話 再びドック

 俺たちがドックに到着すると、ギルドが手配した業者がやって来て、積荷のレアメタルを運んで行く。

 全て下ろすには暫く時間がかかりそうだが、急いでいるわけではないので気長に見守る。

 折角ドックに来たので、一週間位は滞在する予定だ。


 リリスはシャトルポッドのライセンスを取りたいようなので、その間に取れるだろう。

 リリスが行くとなるとアリアは確実だし、聖女も多分、一緒に取りに行くことになるだろう。


 ステファはドックにいる間は別行動するようだ。

 シリウス皇国と帝国の情報収集でもするのだろう。


「セイヤさん」

 荷下ろしの様子を見ていたら声をかけられた。


「あれ、アンジェラさんじゃないですか。わざわざ見に来てくれたんですか」

 誰かと思ったらギルドのアンジェラさんだった。バニーガール姿ではなかったのですぐにはわからなかった。

 流石に外ではバニーガール姿とはいかないのだろう、スーツを着ていた。


「ええ、いきなり大量にレアメタルを持ち込まれたので、品質の確認に」

「そうですか、ご苦労様です」


「しかし、セイヤさん、初っ端からこの大量のレアメタル、どこで手に入れたんですか。よければ、その穴場情報、ギルドで買いますよ」

「そうですね。今はまだ、やめておきます。もう少し自分で稼いでからにしますよ」

 ゲートがある可能性がある以上、ゲートを見つけるまでは情報を売るわけにはいかない。


「そうですか。気が変わったらいつでも言ってくださいね。それとセイヤさんは新人ですから教えておきますが、身の回りには注意してください。情報を狙って襲われるかもしれませんよ」


 アンジェラさんは、チラチラと視線を出入り口の方に向けている。

 そこにはこちらを監視しているような人影があった。

 既に目をつけられているらしい。


「忠告、ありがとうございます。気をつけます」

「そうしてください。それじゃあ私は失礼しますね」

「はい、どうもご苦労様でした」


 アンジェラさんは去って行ったが、そうなると、リリスたちにも武器を用意した方がいいな。

 予定になかったが、急遽、リリスたちを連れて武器屋に行くことにした。

 場所は前回もお世話になった店だ。


「いらっしゃい。あ、お客様また来てくださったのですね。あら、今日は女の人をたくさん連れて、随分とおもてになるようですね」

 前回と同じ、武器屋に似つかわしくない可愛らしい女性の店員が出てきた。


「そんなんじゃないよ。今日はこの子達に武器と身を守る魔道具を用意したいんだ」

「畏まりました。ではまず武器からですね」


 後は店員に任せて、俺は勝手に店の中を見て回る。

 時々、リリスに呼ばれて意見を聞かれる。


 一時間もするとみんなの装備が決まったようだ。


 リリスと聖女がナイフと単発の拳銃、それと、聖女はリリスと同じ腕輪だ。腕輪はアリアも一緒だ。

 二人とも魔法は普通に使えるので拳銃は単発でこと足りる。詠唱が省略できる杖といった使い方になる。魔力は魔導カートリッジでなく、自前だ。

 俺と一緒で剣は扱えないだろうから、接近戦用はナイフで十分だろう。


 問題はアリアだ、腰に刀を挿している。

 メイド服に刀というのはどうだろう?

 刀が目立つので牽制には丁度いいだろうが、なんともアンバランスである。


 太腿にナイフを仕込むのが定番かと思ったが……。いや、別に見たいわけじゃないよ。

 俺の視線の意味を悟ったのか、アリアが睨んできた。あぶない。あぶない。


 刀から魔法を飛ばせるため、銃は選ばなかったようだ。


 アリアの刀が良いお値段がして、負けてもらって全部で二百万Gだった。


 武器屋の次は銀行だ。一応三人のカードを作っておく。支払いは、俺の口座から引き落としだ。


 さて、ここまで済ませるともういい時間だ、今回は船に戻れるので宿を取る必要はないがどうしよう?

 因みに船の中では、リリスが貴賓室を使っていた。勿論アリアは使用人室だ。

 最初リリスは遠慮したが、アリアが続きの使用人室があることから貴賓室がいいと言い、リリスが折れる形となった。


 聖女はステファと同じ七層の船員室を使っている。リリスが同室ではどうかと勧めたが、一人になりたい時もあるとして船室を選んだ。


「今夜泊まる場所はどうしようか、船に戻ってもいいし、宿を取ってもいいんだけど」


「一泊ぐらいは宿に泊まってみたいかしら」

「そうね。少し興味があるわね」

 リリスと聖女は宿に泊まりたいようだ。アリアはリリスが行く所に行くだろう。


「それなら、お勧めの宿がある」

「そうなの、チハルさんのお勧めってどんな所かしら?」


「おい、チハルそれって」

「前に一度キャプテンとも泊まった」

「ちょ、そこは……」

 何もなかったけれど、流石に、チハルとあそこに泊まったことがバレるのはまずい。


「あそこは五人で泊まるのは無理じゃないか?」

「大丈夫、パーティールームがある」

「まあ、何か楽しそうね」

「そうね。そこにしましょうよ」

「いや、でも、そこは……」


「何か問題でも?」

 アリアの視線が突き刺さる。

「いえ、問題ありません」

「ではそこでいいですね」

「はい……」


 結局、チハルのお勧めのパーティールームに泊まることになった。

 結論から言えば、チハルは勿論、リリスも聖女も大喜び、アリアの視線が時々刺さるが、アリアも気に入ったようだ。

 どうやら、セレストにはこんなホテルはないから、本来の使用目的がわからないようだ。助かった。


 何事もなく一泊過ごしてホテルを出ることができたが、ホテルを出る時に通行人から向けられた視線が痛かった。

 あの視線は「四対一とは、お盛んなことで」といっていた。

「いや、やってませんから!」と声を大にして言いたかったが、我慢するしかなかった。


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