第52話 兵器

 ハルクとカリストのドッキングは問題なく行われ、ハルクからカリストに魔力の充填が行われる。

 当然、ハルクの魔力が減るので、その分を俺が充填する。


 ハルクのブリッジならキャプテンシートで寛ぎながら充填できるので楽だ。


 と、思っていたが、ステファがなぜ黙っていたのかとガミガミうるさい。

 充填中はシートから動けないので、逃げたくても逃げられない。


 おまけに、聖女が俺に対して傅いて祈りを捧げている。


 アリアが俺を見る目が痛いのだが……。

 別に、俺がやらせてるわけではないのですよ。


「セイヤ様、結局あのカリストは何なのですか? 乗り物ではないようですが……」

 そんな中、リリスだけが今まで通りに話しかけてくる。


「カリストは兵器だな」

「兵器なのですか? あれで、世界征服とかするのですか?」

「いや、そんな気はないよ。護身用だな。他の星から攻められた時の備えだ」

「他の星から攻められることがあるのですか……」


「私の星は帝国から侵攻されているわ」

「ステファさんの星がですか! そうですか……」

 リリスは考え込んでしまった。


「それは神々の戦い。ハルマゲドンなのでは?」

 聖女にとっては、まだ宇宙は神々の世界なんだな。

「そんな大層なものじゃないから。嫌がらせ程度の小競り合いよ」


 シリウス皇国が帝国に侵攻されていると聞いていたが、戦況はその程度なのか。

 もっとも、帝国とシリウス皇国は直接接していなかったはずだが、どうやって侵攻しているのだろう?

 後でステファに詳しく聞いてみよう。


「つまり、可能性はゼロではないんだ。自衛のための戦力は整えておかないとね」

「そうですか。確かにそれは必要かもしれませんね。ところで、あれは、どういった兵器なのでしょうか?」


「カリストはオメガユニットの一つ。

 個別での運用も可能だが、最大の武器は、カリストと同じ四基が、一対となり使用する次元魔導砲オメガ。

 これを使えば、数百隻の艦隊でも無力化できる」


「殲滅でなく無力化なのですか?」

「次元魔導砲オメガなら、殲滅でなく無力化できる」


「そうですか。それならいいのですが」

 チハルの説明を聞いて、リリスはやっと納得したようだ。


「あれと同じのにが後三つあるわけなんだがな……」

 俺の呟きに聖女が反応する。


「それでしたら心当たりがあります」

「聖女に心当たりがあるのか?」


「はい、御神体はカリストだけではありません。一般には知らされていませんが、同じような御神体が他にもあります」

「そうなのか? それでどこにある!」

「エウロパ湖とイオ火山に」


「チハル、オメガユニットの名前は?」

「残りは、エウロパ、イオ、ガニメデ」


「それは間違いなさそうだな」

「お役に立てたようで嬉しゅうございます!」

 聖女が両膝を付いて、両手を組み、俺を拝む。


「聖女には感謝するから、その傅くのをやめてくれ」

「神に感謝されるなど勿体ない。無論、傅くのを止めるわけにもいきません」

 先程から聖女が鬱陶しくて仕方がない。


「リリス、聖女をどうにかならないかな?」

「今は、好きにさせるしかないでしょう。そのうち、落ち着くと思いますよ」

「そうか……」

 落ち着いてくれればいいけど。


「それじゃあ明日はエウロパ湖に行くか」

「そうですね。お弁当を作って行きましょう」


「リリス、ピクニックに行くわけじゃないんだぞ」

「そうでした。ごめんなさい。湖と聞いてはしゃいでしまいました」


「いや、でもお弁当は持って行こう。久しぶりにリリスの手作り弁当が食べたくなった」

「はい、では明日は頑張っちゃいますね!」

「期待しているよ」


 明日は、リリスの手作り弁当を持って、エウロパ湖に行くことになった。


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