記憶のガラス

記憶のガラスを割った

何枚も何枚も割った

怒りにまかせて割った


割った後に寂しくなって

足下に転がった大きな欠片を

布にくるんで、上着のポケットにしまった


奈落の底のような暗闇に

無数に並ぶ 記憶のガラス

そこには風も吹いていて


僕の先には 暗闇だけ

僕の歩く両側に

新しく立つ 記憶のガラス


時々風が 強く吹くと

後ろの方から 記憶のガラスの

一斉に割れる音がする


振り返らず歩く僕に

進め 進め と

記憶のガラスの割れる音


進め 進め と

記憶のガラスの

音が言う


後ろから

記憶のガラスの

割れる音

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