居酒屋


 その日の夕方、お義兄さん久し振りに飲みませんか、と隆が、それなら佐藤女史も誘おうと、駅前の居酒屋で落ち合うことにした。

 待っていると、佐藤女史はもう一人女性を連れてきた。歳の頃は30ぐらいか、清楚なワンピースが美貌を引き立てている。佐藤女史も束ねていた黒髪をほどき、眼鏡は掛けていない。あらためて見ると、美紀に負けぬ美人だ

 72歳の自見にとって若い二人の女性はまぶしいほどだが、こんな機会でもなければ一緒に飲むこともないので、これも役得かもしれない。


「自見さん、ご紹介します。こちらは嵯峨美智子さんで総合ターミナル物流センター警備隊に勤めています。私の従妹です。」

「自見です」

「楚辺です」

「え、楚辺先生ですか。郡上高校で数学を教えていた楚辺先生ですか」 

「そうですけど」

「私、郡上高校の卒業生です」

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