第十八話 簡単な世界を願うな

暗い、暗い意識は闇の中。


半覚醒状態である頭に振動が伝わる。そしてそれは音である事に気づく。誰かが俺の名前を呼びそれは聞きなれない声だった。


「病葉くん…病葉くん…」


俺はまだまだ眠い眼をゆっくり開け、光を意識の中に取り入れる。が、そこに飛び込んできた映像を見て俺は飛び起きた。


「あ、やっと起きた。おはようございます」


俺はあまりにも驚き過ぎて言葉が出なかった。あたりを見回し、ここが自宅である事を確認する。が、ここは間違いないく俺の部屋で自分のベッドの上にいる。しかし、目の前にいるのは高瀬妃さんだ。


「え!あの、何してるんですか…?」


「病葉さん、あれから一週間たったのでお話を伺いに来ました。今日は休みですよね?」


「はぁ…そうですか、」


「いや、なんで勝手に入ってきてんですか!鍵開いてました?」


「呼んでも反応なかったのでピッキングして入りましたよ」

高瀬さんは至極当然で当たり前のように語る。異常な行動にもかかわらず、こんなにも落ち着いて話されると、こちらもああそうかという気分になってくる。


「あ、あの次からはもう少し待って下さいね…」


「次があるかどうかはこれから分かるは。では本社でお話したいので行きましょう」


俺はもう一度ベッドに寝ころび掛布団に埋もれて目を瞑った。ぶっ飛んだ人だ。こんな強引な事あるか?男女逆なら即通報事案だ、しかもそんな古い鍵じゃないのにピッキングって、あんたどんだけ技術あるんだよ…


俺は頭の中だけで今起きた事に対して通常の文句を語る、すると勢いよく掛布団をめくられ、俺は上を見上げた。そこには明らかに怒った表情で眼鏡を上げながら「早く準備して下さい」と、彼女の表情からとてつもない圧力を感じた。


「じょ、冗談ですよ…」

俺は起き上がり出かける準備をする。その間高瀬さんは部屋の中を観察しているようだった。


「これが炎の男を見つけた時の捜査資料ね」

高瀬さんは地図とノートをペラペラとめくった。


「あなた、前職は警察関係者?」


「いえ、全然関係ありませんよ。あ、いや白バイには昔よく追いかけられたかな」


「そうなの」


高瀬さんは相変わらずのお堅い反応だ。もっと人当たりが柔らかければ話やすいのだが、いや…こういうクール系美女というのもまた一つの需要なのかもしれないな。


「あれ、俺の記憶を読み取ったのにその辺の事は知らないんですか?」


「記憶は一番最近のものから見たから、あなたと炎の男が戦った所までしか読み取ってないは。それに古い記憶になればなるほど見つけにくいし時間もかかるのよ」


後で思い返して解る事なのだが、俺はこの時のこの言葉で少し高瀬さんの印象が変わっていたのだった。


「へぇー、パソコンみたいで便利ですね」

高瀬さんからの返答はなかった。


「それで何故、警察関係でもないのにこんな捜査が出来たの?」


「あー、昔からそいう類の本を読んでたからですかね…読書好きなんで」


「そうだ、高瀬さんお腹すいてません?奢るんで朝食食べてから行きましょう!」

俺はネクタイも適当に結び、急かすように家を出ようとする。


「あ、私はべつ…」


「良いから早く!お腹すきましたよね!ここの直ぐ下で美味しいサンドイッチが食べれるので是非どうぞ!」

高瀬さんを家から出し一階に向かう。


俺はいつも通りに扉を開けて中に入る。


「あ、亮さん!と、いらっしゃいませ?」

南が不思議そうな目で見ている。


「ああ、この人は仕事の取引先?みたいな人で、だから今日は二人」


「あ、そうですか。こちらのテーブルへどうぞ」

南に案内されいつものカウンター席ではなく奥のテーブル席にかけた。


「高瀬さんもサンドイッチセットで良いですか?」


「いえ、私はコーヒーだけで良いです」


「そうですか、じゃあセットとコーヒーお願いします」


「かしこまりました」

南は笑顔でほほ笑み、注文を聞いてカウンターへと向かった。


「ここが別世界なんて今でも信じられません。どうやって僕たちはこの世界に来たんでしょうか?」


「それは、まだ分かってないは。それに異世界というのも一つの仮説だし、厳密に言えば元の世界とは何かルールが変わった世界と言うべきかもしれないわね」


「確かにルールや法則が変わってないと説明がつかないですよね」


俺は松澤で真実を知った後いろいろな事を調べた。元号の例のように俺の過去に書いた書類や資料は全てこの世界の言葉に改編されており、その事から俺がこの世界に転移したのはごく最近だという事が分かった。


この世界はほとんど元の世界と変わりなく、歴史を振り返って調べても歴史書に書かかれるような重大な出来事に違いは見られなかったのだ。特殊能力者という存在があればこれら歴史も大きく変わっていると思ったのだが、そうではなかったのだ。これは特殊能力が表には表れてないだけなのか、それとも特殊能力者が現れたのは近年代なのか…考えれば考えるほど疑問は増えるだけだった。


「おまたせしました」

南が注文の品をテーブルに置く。


俺はコーヒーを飲みながら今までの考えを整理しどう伝えるか考えた。


「あの子、高校生?」


「そうですが、何か?」


「あなた高校生の子に手を出すなんて犯罪ですよ」

その言葉を聞いて俺はコーヒーを吹き出しそうになった。


「な、なに言ってるんですか!」


「あの子の胸の中で泣いてたから、特別な関係なのは理解しましたが、まさか高校生とは…」


「え、その記憶まで見たんですか!」

俺は恥ずかしさでいっぱいだった。


「見たくて見たわけではないわ、時系列的に見えただけよ」


確かに過去に遡って見たならそうなるのか。

「あ、あの時は特別で…南とは、その、男女の仲じゃありませんよ!」


「あらそうなの?」


「ええ、俺の中で南はそういう目では見てなくて・・・何というか、特別の存在なんです」


「そう」


そうだ南は特別な存在だ。南を見ていると自分も何かしなければ、自分にも人を幸せに導く事が出来るのでは?という自分の中に眠っていた正義の心が目覚めてゆくような気分になるのだ。


そして今の俺に出来る事…

俺にしか出来ない事とは…


コーヒーを飲みながら高瀬さんは南を見つめている。そして俺は考え事をしながらコーヒーを飲んでサンドイッチを食べた。


「じゃあ、そろそろいきましょうか」

俺はある程度考えをまとめ、今後についてどう語るか決めた。


「病葉さん、ちょっと待って下さい」

高瀬さんはそういうと、俺の首元に手を伸ばした。


「だらしない恰好をされては一緒に歩く私が困ります」


「あ、すみません」

まさか女性にネクタイを直されるとは思ってもおらず、俺ははにかみながら恥ずかしい思いでいっぱいだった。


「これでオッケーです。さあ行きましょう」


空腹を満たした事でしっかり思考を巡らせられそうだ。頭の中がすっきりしたような感覚だ、それに南の笑顔を見て決断する事ができたこれを植木さんに伝えよう。そして俺は高瀬さんの運転する車に乗り松澤本社に向かった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「やあ、病葉君答えは出たかね?」


「はい、考えてきたんですが幾つか質問しても良いですか」


「うん、話してみて」

植木さんと高瀬さんは真剣な表情で向き合ってくれている、俺はソファー掛け考えている事を一つずつ確かめるように質問し始めた。


「まず、国は特殊能力者に関して管理や研究、取り締まりはしていないのですか?」


「ふむ」

植木さんは頷くと少しの間をとり、話始めた。


「特殊能力者自体、認知されたのは近年になってからでね、この事は国のごく一部の者しか知らない。その一部とは我々民間の者を除けば二つの組織だけでね、一つ目は警察庁の組織の中で特殊能力者を管轄している組織が実は作られていて、そこの数人の捜査官とそれを指揮している局長のみでその組織には能力者は居ない」


「しかし組織されていると言っても能力者を探したり、研究したりといった積極的関与はされていないのが現状で少ない情報を集め整理しているのが実態かな・・・」


「それだけですか?」


「それだけだよ、何故こんなにも小規模なのかは賢い病葉君なら解るんじゃないかな?」

俺はそう言われしばらく考え答えた。


「やはり今の政治的事情ですかね?今の与党に対して何の役にも立たない野党の存在、海外からの勢力の傀儡かいらいと化してしまった国会、地方議員など、通常の社会的案件でさえまともに審議、議論すら出来ていないのが何年も続いています。そして何よりそれら国家の在り方を任せられたはずのもの達らが、自らの利権や保身を優先し過ぎている」


「なので超能力者の管理や法整備なんて出来るわけがない、手に負えず滅茶苦茶な扱いになるのは目に見えています、そんな現状だと表にする事は出来ない、もし組織を作るなら警察庁以外にないでしょう。しかし能力者に積極的に関われば対応しなければならなくなる、対応すれば責任が生まれる。それは現状望ましくないので傍観する事しか出来ない、俺はそう思います」


「やはり君は賢い、だいたい当たりだよ。その能力者担当組織とは私達も情報共有はしている、そして話し合った結果、今病葉君が言ったような事や無用な混乱を避ける為に能力者の情報は秘匿される事になっているんだよ」


「そうでうすか…」

俺は現実の狭さのようなモノを痛感した。別に社会に不満があるわけでもないが、特殊能力者という異例な事について考えると、対応するのに日本は一体何十年かかるだろうか…


「それでこれから病葉くんはどうしたいかね?」

しばらくの間を置いて思い返した。


“能力の使い方が分からないなら俺が一緒に考えてやる!お願いだ、だから人を傷つけるのはもう止めてくれ!”


過去の自分の言葉を思い出し、そして俺は話始めた。


「俺は能力者達の居場所を作りたいです。それは管理するという意味でもあり、能力の正しい使い方を導いてあげて、本人に一番幸せな選択肢を選ぶ事が出来るようにしてあげたいからです」


「ですので、お二人にその協力をしてもらえないでしょうか!」

俺は深く頭を下げた。


「それは能力者を探しだして、集めるという事かね?」


「はい、それもありますが炎の男のような件もありますので警察が捜査出来ないのなら今は代わりになるような存在が必要だと思います。もし能力者が能力を悪用するとしたらそれに俺が対応したいと考えます」


「それは危険だよ」


「それは承知しています。しかし犯罪に対して100%の出来る事を目指して努力している者を俺は知っています。そのような表で必死に闘う者の為に俺も、俺にしかできない事があるなら、俺はその者が目指す100%の答えに少しでも役立ちたいんです!」


「どうか力を貸してくれないでしょうか。危険かもしれませんが同じ能力者、いや転移者であれば信用されやすい、混乱している相手でも仲間にしやすいというのは自分が感じた事です!」

俺は再び深く頭を下げた。


植木さんは高瀬さんと見つめ合い、そして植木さんは目を瞑り話を始めた。


「もう10年ほど前だ。私の妻は難病にかかってしまってね…余命宣告された」

そう植木さんが話だし俺は顔を上げた。


「どの医者にも手の施しようがないと言われた。そこで当時私は大学の研究室で持てる力を全部使いありとあらゆる研究を行い、その難病の治療法を研究した」


「しかし、妻は救えなかった…」


「そしてその後、この世界に転移し能力に覚醒した。これは運命の悪戯なのか、皮肉にもその能力で妻の病気の治療方法を見つける事ができ、同じ病で苦しむ人を助ける事が出来た…しかし何故もっと早くこの世界に転移出来なかったのか?私は自分の運命を心底憎んだ事もあった…」


「病葉くん、君は答えのないモノに答えを決めた。それはとても勇気が必要で覚悟も必要な事だと私は思う」


「そんな君の勇気ある決断を断るなんて私には出来ないな。是非協力させてもらうよ」

そう植木さんは語ると、俺の手を握り笑顔を見せてくれた。こうして俺の新しい世界が幕を開け、その時の手の温かさは忘れられないモノとなった。


「それでまず炎の男、名前は須藤翼すどうたすくの事なんですが…」


「うむ。それに関しては私も調べさせて貰ったよ、妃ちゃん資料を」

高瀬さんが資料を渡す。


「今は尼宮市管轄の警察署で拘留中のようだね。どうやら能力については一切話さず犯行の実行のみを認めているようだ」


「警察の情報も手に入るんですか?」


「さっき言った警察組織とは情報交換をしているからね。さてここからが問題だ」


「病葉君は彼をどうしたいのかな?」


「出来れば…」


「出来れば彼も仲間にしたいと考えています」


「彼は犯罪者よ?」

高瀬さんが割って入る。


「凶悪犯罪ではないにしろ能力を使って、一歩間違えばあなたを殺していたかもしれない」


「ええ。確かにそうですね…それに関しては本人も考える時間が欲しいと話していました」


「うむ、妃ちゃんや病葉君から聞くにこの須藤君というのは、かなり心を病んでいるようだ。それに攻撃的な一面があるのも確かだろう」


「はい!だから間違った方向に進ませない為に俺は出来る事をしたいんです!」


「わかった。病葉君の考えはわかったよ」


「先生!彼もここに呼ぶんですか?」


「いや、もう一つの組織に任せてみようか…この須藤君が取り調べで能力の事を話していないのは正解だが、このままだと起訴され裁判にかけられる事になる…そうなってからだと遅いかもしれない。拘留は23日だったか、急がないとね」


「もう一つの組織とは何ですか?」


「もう一つの組織とは自衛隊だよ。そこに転移や能力者といったモノを管理する組織があるんだ」


「先生あそこはアーティクルだけの担当では?」

知らない単語が高瀬さんから発せられ、俺は疑問を感じている表情を見せる。


「よしでは、順を追って説明していこうじゃないか」


「私は転移と特殊能力に気づいた時慎重に事を進めた。まずは二人の旧友に打ち明けた。その一人が松澤の重役、そしてもう一人が警察庁の幹部だ。この三人で情報収集をしている時、妃ちゃんが転移し私の前に現れたんだ。そうした事から今後も転移者は増えると予測され、管理する組織は必ず必要だと三人の意見は一致した」


「なるほど、そこで作られたのがこの松澤の研究部署と警察庁の中の一、組織なんですね」


「ああ、その通りだよ。本来はそのどちらかで転移者を受け入れる予定だったが思わぬ事態が起きてしまった。アーティクルの存在だ」


「人知を超えた異常性を有した物質、事象それらを私達はアーティクルと呼んでいるの」


「異常性?ですか?」


「病葉君には後でその資料を見てもらう事にして、この異常性を備えたモノは時に人間にとってとても危険なものでもあるんだ。そしてそれらは他の転移者によって作られているのではないかと我々は考えている」


「なんせ私の能力の例があるんだ、常識を超える異常なモノを作り出せる人間が居てもおかしくはないだろう?」


「それを自衛隊が管理していると?」


「そう、発端はとあるアーティクルが見つかった時、何も知らない地元住民や警察官に死者が出てしまう事故が起きてしまったんだ…そこで我々は気づいた、使い方によっては殺人兵器にでも成りえるそのモノの存在を」


「そこで、それらから人々を守る為、または悪用されない為に、厳重に警備された場所と、そこを守る為に武装し訓練された組織が管理するべきだと結論に至ったわけだ」


「なるほどだから自衛隊なんですね」


「そこからは信用出来る人物を頼りに、防衛庁情報本部のトップの人物と出会い転移の事を話、秘密裏に組織を作ってもらい回収されたアーティクルを自衛隊駐屯基地に厳重に保管してもらっているんだ。秘匿性の高いモノだから駐屯地ではアーティクルという事は伏せられて管理されているがね」


「それが、二つ目の公的な組織なんですね」


「ああ、そこで私はその自衛隊の組織に須藤君を任せようと思うんだ」


「そうですか…」

一通り話を聞いていた俺だが、ここで野生の感覚というか何かを感じ取る。それは疑念という感情である。もし一連の話が嘘であったら?俺を利用し二人の転移者をコントロールしたいだけなのでは?これら幾つかのネガティブな可能性を頭でシミュレートし考え始める。


「その、質問なんですがその組織は須藤をどうしますか?」

ここはストレートに質問してみる。


「そうだね…」

植木さんは手を顔の前で合わせ考えている様子だ。


「病葉君、君とは知り合って間もないが私を信じてもらいたい」

植木さんは真剣な目つきになった。


「はい」


「炎が出せる能力、あらゆるモノを燃やす事が出来る能力。君はこの能力をどう考えるかな?」

植木さんはこう質問し、俺は深く考えながら言葉に出していった。


「モノが燃えるという事は、分子の化学反応であり現象にすぎない。火とはその現象の際に発せられる熱や光を網膜に取り入れ視覚として把握する…」


「本質はモノの破壊、ですか…?」


「論理的に考えればそうなるね。そう火とはと熱エネルギーによる物質の化学変化であるわけだ。しかしだ、例えば木を燃やし炭を作る。破壊といえば破壊だし、かと言って炭という新な便利な物質の創生でもあるわけだ」


「はい、確かに」


「ではここでもう一度病葉君に問う。あらゆるモノを破壊する能力の正しい使い方とは何かね?」

この問いに俺はハッとさせられた。


俺は奴に、須藤に能力の正しい使い方を教えてやるなんて言っていたが、モノを燃やす能力の使い道なんて破壊以外に他に何があるというのか?たしかに植木さんの言う通り燃やすという事で違う性質を持つモノを作り出す事も可能だが、じゃあ須藤に永遠に木を燃やす仕事をしろとでも言うのか?それがダメならなんだ?ゴミの焼却か?それとも火力発電でもどうだと言う気だったのか?


そう、火を操る能力なんて人間に必要ないのだ。何故なら燃やすという行為は既に高度に機械化され誰でも出来る行為なのである。


「何かを燃やし、破壊しかありません…」


「そう、そこでアーティクルの話だ。アーティクルは滅多に見つかるモノではないが発見される数は増える一方なんだ。迂闊に詳しく研究出来ないし、それに存在しているだけで常に危険なモノもあるんだ。今現在回収されたもので出来るだけ早期に破壊したいアーティクルが存在する」


「それを須藤に燃やして破壊してもらうと」


「ああ、だが出来るかどうかは分からない。なんせそのアーティクルはどんな手段でも破壊不能なモノでね、実は須藤君の事を妃ちゃんから聞いた時からこの事は考えていたんだ。特殊な存在、アーティクルは特殊能力なら破壊可能なのでは?とね」


「なるほど、それで人々の安全が確保できるなら適任かもしれませんね」


「ただ、彼が了承するかどうか…」


「その辺は多分大丈夫だと思うよ。その組織、防衛庁情報本部の人は私も十分信頼しているし、何よりかなりの人格者だ。きっと彼なら、少々乱暴な性格の須藤君を正しい道に導いてもくれると思う」


「そうですか…」

俺は一旦視線を下げ考える、考え込む内に過去のあるセリフを思い出した。


”ダメですよそんなの!そんな経験、活かしちゃダメです!”


そうか南の言葉だ。あの時は驚いたな、知っていたつもりだったがホントあいつは人の本質をよく見ているもんだ…


俺は決断する。


「植木さんがそこまで言う方なら、そうですね。それしかないのかもしれません。須藤の事、どうかお願いします」


「よし、じゃあ早速連絡しよう」


こうして俺と須藤の二人の新しい居場所が決まったのだ。



次回 第二章 「カプリース」 川島詩子編 【第十九話 始まり】

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