第1475話 夢桜

あの日交わしたのは、夢を叶えるという大切な人との約束だった。大きな桜の木の下で交わしたその約束を、僕は叶えるために必死になって努力してきた。必ず飛行機のパイロットになる。

そして僕はパイロットになった。夢は叶ったんだ。初フライトの日、僕は大きな桜の木の下で君に報告した。

「僕ね、パイロットになったんだよ。今から初フライトだ。どうか見守っていて欲しい」

そして僕は、初フライトへと旅立った。

この大きな空の下、桜の木よりも高い世界から君を見下ろしている。

「君も見ていてくれたかな?僕の初フライト。これで少しは、君に近づけた気がするんだけど」

君の返事はない。当たり前だ。なぜなら君は、もうこの世にはいないのだから。


私が死んだら――

この桜の木のところで、必ず待ってるから。

君はそう言った。だからその言葉を信じて、僕は報告を続けた。背中を押されたような気がした。

君はやっぱり待っていてくれた。

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