第1218話 渋柿

柿の美味しい季節になって来た。スーパーに行くと美味しそうな柿が沢山並んでいる。その中の一つを手に取り、籠の中に入れようとしたら、隣にいる渋いおじさんに声をかけられた。

「お嬢ちゃん。そいつはやめといたほうがいい。それは渋柿だ」

「えっ!?渋柿なんですか?」

「ああ、俺には分かる。これは渋柿だ」

「どうして?見た目は普通の柿と何も変わらないのに」

「俺のような渋い男はな、渋柿を見分ける能力があるんだ」

確かに渋いおじさんだとは思ったけど、渋い人に渋柿を見分ける能力があるのだろうか。

「なんで渋いって分かるんですか?」

「この渋柿はな、まず煙草を吸っている」

「ええっ!?」

「それからウイスキーのロックを静かなバーで一人飲んでいる」

「それは渋いですね」

「後、女に惚れられるが、さらっとかわすんだ」

「渋くて良い男」

果たして本当に渋柿か?興味を持った私はあえて買った。……本当に渋柿だった。

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