第930話 不器用デーモン

デーモン。それは人々が恐れ、怖がる存在だ。人々の恐怖を餌とし、それを食って生きている。今日もデーモンは、人々を怖がらせるために動いていた。

「お前に悪魔の子供を宿らせてやる」

妊娠中の女性に、お腹の中の子供を悪魔に変えてやると言い放った。女性は恐怖し、恐怖の感情を集める事ができた。

「……ごめんね。怖かったろ?もう大丈夫。悪魔の子供なんて宿らせたりしないから」

デーモンは女性に謝った。このデーモン、実は心優しくて真のデーモンになりきれない、不器用な奴なのである。

そんな事を繰り返している結果、デーモンは誰からも怖がられる事がなくなった。恐怖の感情を集めなければ空腹で倒れてしまうというのに。


「自分はもう間もなく死ぬだろう。でもいい。人を怖がらせる存在として生きるくらいなら、自分は死を選ぼう」


こんな不器用な生き方しかできないが、己を貫く生き方ができて、不器用デーモンは本望だと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る