第870話 結婚指輪ネットワーク

「ご結婚おめでとうございます」


婚約して結婚指輪を買いに行った私達に店の店員は、祝福の言葉をかけてくれた。


「今はやっているネット付き結婚指輪なんていかがでしょう?とても評判なんですよ」

「ネット付きとは?」

「この指輪を持っている人同士が繋がれる新婚さんSNSみたいなものです」


私は指輪のデザインも素敵だった事もあり、この指輪に決めた。早速指輪を付けてみると、新婚さん達の声が聞こえてきた。


「うちはね。休みの日は旦那が料理作ってくれるの」

「いいわねー。私の所は料理は全部私がするけど、失敗してもいつも美味しいって食べてくれるの」


新婚さん達の惚気話が聞こえてきた。これは幸せな指輪だ。良い物を買った。私も幸せな気持ちになった。そして自分も結婚指輪ネットワークで幸せを発信した。


それから十年後。


「うちの旦那マジで最悪」


結婚指輪ネットワークは、愚痴のたまり場になっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る