第830話 布団に吸い込まれる

春は眠い。何をするにも眠い。

私は布団の誘惑に負け、今日も布団に吸い込まれて眠る。


それだけならまだいい。

いつからか布団が私を吸い寄せるようになったのだ。布団の近くに行くと、布団が物凄い吸引力で私を吸いつける。

抵抗するも私は、布団に吸い寄せられていく。

「ああああーーー」

そして布団は、私を夢の世界へと誘う。そう、眠ればいい。眠ればいいんだ。永遠に。何も抵抗する事なんてないんだ。抵抗しなければ楽になれる。全て流されるままに受け入れればいいんだ。

こうして私は、社会と隔離された。

家の中で布団の中だけで過ごす毎日になった。食事と風呂とトイレ以外は、布団の中で過ごしていた。

そして私は、どんどん太っていった。

ある日の事だった。

急に布団に吸い込まれる事はなくなった。それどころか布団から押し出されるようになった。

「一体どうして?」

布団に問いかけると返ってきた言葉。それは……

「重い」

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