第758話 愛殺

嫁は俺の命を狙っている。彼女は殺し屋だから人を殺す事には慣れている。朝、俺を殺そうとするのは、朝の挨拶ならぬ朝の愛殺らしい。


「いい加減、俺の命を狙うのはやめてくれないか?」

「あら、私はあなたを愛してるの。愛してるから殺したいの」

「愛されてるのは嬉しいよ。でもさ、他にも愛情を示す方法はいくらでもあるだろう?」

「私があなたを愛した事を伝えるには、殺すのが一番なの。綺麗に一瞬で殺してあげるわ」

「殺す事が愛なの?なら他の人を殺すのも愛なの?……嫉妬しちゃうな」

「まあ可愛い。すぐにでも殺したい」

「おいおい、俺はまだ生きたいんだ。殺すのは勘弁してくれよ」

「ふふっ、冗談よ。でも本気で殺したいくらい愛してるの」

「ありがとう、嬉しいよ」


俺の感覚は麻痺してしまったのだろう。こんな嫁の事を愛している。殺したいほどに。そして俺は、殺される前に彼女が寝ている隙に彼女の心臓に向かってナイフを。

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