第733話 死に遅れバス

ここは病室じゃないのか?

俺は気が付いたらバスの中にいた。バスには5人の乗客が乗っていた。性別も年齢層もバラバラだ。一体なぜ俺はバスに乗っているんだ?


「当死に遅れバスをご利用頂き誠にありがとうございます。当バスは、死の直前にだけ乗り込む事ができるこの世の最後の旅のバスでございます。この世での最後の旅をごゆっくりご堪能ください」


運転手のアナウンスで説明があった。つまり俺は、もう死ぬらしい。そして死の直前、最後の旅ができる死に遅れバスに乗ったらしい。

俺の人生はどうだった?振り返るが、ろくな事がなかった。不幸な人生を送った。若くして天涯孤独の身になり、体は癌に侵されてしまった。病院で入院し、寝たきりだった。ああ、何も良い事なかったな。


「右側の窓をご覧ください。朝日です」


朝日が昇ってくるのが見えた。この世界は美しい。この世界も悪くないかもな。

最後に良い景色を見る事ができた。

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