第650話 白杖の女

目の前で白杖の女性が転倒した。私は大丈夫ですかと声をかけた。

「ありがとう」

「いえ」

「……あら。あなた。そうなのね。とても純粋で人を信じやすい。だから人から騙されてしまったのね。可哀想に」

「えっ……」

当たっている。私は彼氏の借金の連帯保証人になり、彼は逃亡。私には200万円の借金だけが残った。

「私、目が見えないけど人が見えるの。ねえ、助けてくれたお礼をさせてもらえないかしら」

「お礼ですか?」

彼女に連れていかれたのは、一件のBARだった。

「マスター、いつもの。彼女にも同じ物を」

「えっ、私お酒飲めなくて」

「大丈夫。ただのアイスコーヒーだから」

そう言いながら彼女は笑った。

「マスター、良い依頼ある?報酬200万くらいのやつ」

「旦那の浮気調査」

「ちょっとここで1時間待ってて」

そうして戻って来た彼女は、私に200万円を手渡した。

「これで借金返して」

彼女は微笑んだ。

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